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異世界に転移したらハーレムが出来た、ちょっと俺大丈夫かな?  作者: 乙賛


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第17話 宰相

「それではすぐには王宮の勇者たちは動かないということなのね?」

ファティマは、報告に上がった侍女に問いかける。


「はい、ご当主様。どうやら国王派、特にサミュエル宰相が勇者たちに肩入れをしているらしく、

 貴族派、軍部ともに勇者に直接の接触はまだできておりません。

 そして、勇者たちも貴族達や軍部の下に付くことを避けるために、協力の回答を引き延ばしているようです」


「ふぅん、それじゃあダンジョンからそろそろ魔物が溢れ始めるんじゃない?」

「はい、ご当主様。既に2カ月近く放置されているダンジョンもございます。

 これまでのダンジョンの動きから考えればそろそろ溢れ出す頃かと思われます」


「あっちの勇者がもたもたしてくれているなら、こっちの勇者が使えるかもね。

 じゃあ、この近くで、そろそろ溢れ出しそうなダンジョンを持つ貴族をリストアップなさい。

 無能なのは放置でいいけど、使えそうな貴族なら恩を売って手駒にしちゃいましょう」

「はい、ご当主様。すぐにリストアップしてまいります」



「シンシア!」

「はい、ご当主様。シンシアはここに。」


「シンヤちゃんの成長具合はどうなっているのかしら?」

「今日も訓練させておりますわ。ご当主様のためにと必死で頑張っているようで、もうその辺の騎士では相手にならない程度には育ってきております。

 あとはスキルをうまく使いこなせるようになれば、ひとまず勇者として使い物になるようになるかと思います」


「そう、シンヤちゃんも頑張ってくれてるのね。

 近いうちにダンジョンを攻略させるから、その準備を進めておいて。

 シンヤちゃんにも、私が期待していることをよぉく伝えておいてあげてね

「はい、わかりました。その様に進めておきます」



既に聖はシンシアによって完全にファティマの奴隷として調教され、ファティマの為ならどのような事でも喜んでするように教え込まれている。

さらに、ファティマは聖のその精神的な脆さを巧みに操り、母のような振る舞いと女としての淫らさで完全に聖を掌握している。

恐らく"隷属の首輪"が外れることがあったとしても、聖はファティマの元からはもう離れる事はできないであろう。



「ふふふ、ダンジョンが攻略できたならまた私の寝室にでも呼んであげようかしら」

「あぁ、ご当主様。その時はこのシンシアも是非一緒にお呼びくださいませ」

「あらあら、シンシアったら何を期待してるのかしら?

 シンヤちゃんが使い物になっていたら、ご褒美に一緒に呼んであげるわ」

「あぁ、ありがとうございます、ご当主様ぁ…」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「グレアムの筋肉馬鹿め、報告をどれだけ放置していたのだ!

 しかもダンジョンの監視報告を手付かずで放置していたなど職務怠慢も甚だしい!

 やはりトップには事務処理能力は必要なのだ、それを有事の指揮統率能力だけで判断するからこのようになるのだ。

 あの馬鹿は首にするか降格するかしないと、宰相府の仕事が破綻するぞ」

サミュエルは、自身の執務室に運び込まれた報告書の山を見て呆れとも苛立ちともつかない声を上げる。

すでに運び込まれて数日経つが、あまりの量に減っているように思えないのがさらにやる気をそいでいる。

既に宰相配下の文官たちが手分けをして処理を進めているが、その結果を取りまとめるのが何時になる事やら予想もつかない。


先日勇者の攻撃魔法での報告もこの山の中に紛れ込んでおり、たまたま文官が発見したのを慌ててサミュエルが王女経由で報告を上げたのであった。

軍部が情報収集を行った報告書なので、本来であれば軍部内の機密情報も含まれ宰相といえども簡単に閲覧は不可能なのだが、

グレアムのおかげで、そのすべてを徴収し整理することになっている。


まず最優先で全てのダンジョンの最新の状況を取りまとめる必要があるため、サミュエルの気になっているそれ以外の情報については、ほとんど確認が進んでいない。

(いずれにせよ喫緊の課題はダンジョンであるのは間違いない。出来る限り急いで対応させるしかないか…

 それにしても軍部はあの馬鹿がトップでよく組織が機能しているな。

 優秀な副官もいたはずなんだが、ダンジョンの監視に回されているのか?

 いつまでも宰相府で軍部の書類を処理するのも問題であるし、グレアムに書類仕事をさせるのはさらに大問題だ。

 軍部の人事に口を出したくはないし、今はまさにグレアムの得意とする有事である。

 当面はグレアムに書類仕事のできる部下を呼び戻すように伝えておくか)


そもそも、宰相府は王国内の重要な判断を行う部署である。

通常でも忙しく多くの文官が働いているのだが、軍部の書類整理が優先されるため、実質宰相府の業務は止まってしまっている。

サミュエルはこの書類だけでなく、その後の溜まった業務の処理を考えると頭が痛くなるのだった。


しかしダンジョンの状況確認は何を置いても優先させる事項であるため、サミュエルは部下に仕事を急がせるほかなかった。

(一段落したら、こいつ等にボーナスでも弾んでやらないとな…その請求はグレアムにでもまわすか…)





サミュエルが書類の山を相手に奮闘している頃、軍部省の奥の一室でほくそ笑む男がいた。

「ふふふ、いまごろ宰相の奴あの書類のせいで、仕事が止まって焦っているんだろうな。

 あのグレアムに書類仕事なんかできるわけがない、予想通り溜めるだけ溜めて宰相府に丸投げと、想像通りに事が進み過ぎて笑えてくる。」


筋肉質ではあるがグレアムのような質量のある筋肉ではなく、引き締まった身体である。

ダークグレーの髪をオールバックに奇麗に整え、アイスブルーの鋭い眼光を持つこの男は、クラレンス・ディスモア、グレアムの副官であり

事務処理のできない上司に替わり、実質軍部を掌握している男である。

そして、この男にオズボーン女侯爵の息がかかっていることは軍部の誰も知らない。


本来ならグレアムの部屋に溜まっていた書類はクレランスが処理していたものだった。

しかし、ダンジョンへの監視の派遣などのごたごたの期間、クレランスは書類整理ではなく派遣する組織編制やその糧食といった輜重関係の管理という名目で、

グレアムの副官の仕事を一旦外れることに成功していた。

副官が外れることにより書類が溜まるというようなことはグレアムは解っておらず、面倒な人員計算などを副官に押し付けたことで満足していた。

そしてクレランスの予想通り、ダンジョンの報告は全く処理されず、宰相府の業務も大きく遅延させることに成功した。


ダンジョンの現状が把握できていない状況では、当然その攻略順の決定など出来るわけがない。

緊急性の高い決定がグレアムの責任で遅延していくことに、クレランスは暗い喜びを覚えていた。



オズボーン女侯爵の考えていることは、クレランスにも全てを把握出来ているわけではない。

ただ、この国に混乱を呼ぶことでオズボーン女侯爵が動きやすくなるということは理解している。

今回のクレランスの働きにより、王宮内の事務処理方は大きく混乱を引き起こしているのだ。

この結果はオズボーン女侯爵にも喜んでもらえるだろうし、褒めてもらえるならば望外の喜びである。

この男も侍女のシンシアと同じく、オズボーン女侯爵に傾倒しきっているのである。


そして自分のやった事が何を引き起こすのかも理解せず、ただただ己の欲望とオズボーン女侯爵の為だけに動くのであった。





サミュエルは自身の忙しさがクレランスによる作為的なものとは気付かず、執務室にこもりきりで多忙を極めている。

本来の業務が手付かずなだけでなく、本来軍部により取りまとめられているはずのダンジョンの状況報告を早急に整理する必要があるためだ。

残業や人員増加でもまだ手が足らず、終わりの見えない作業に宰相府の面々は疲労困憊していたのだった。


「宰相閣下、面会希望の方が来られています」

その忙しい最中に面会の依頼が告げられる。

「勇者様か?」

「いえ、ボイト子爵様です」

「この忙しいときに何の用だ、わかった通せ」


デリク・ボイト子爵、今回発生したダンジョンを自領に持つ貴族の一人だ。

ダンジョンを持つ貴族の中でも、特に勇者による攻略を急がせる急先鋒の一人でもある。


「宰相閣下、ご多忙のところお時間を頂き感謝します」

「ダリク子爵、ご覧の通りの状況だ。申し訳ないが要件を教えてもらえるかな」


「もちろん、勇者様によるダンジョン攻略の件です。

 勇者様はそもそもダンジョン攻略のために召喚されたはず、しかし既に二月近く経つというのにいまだ攻略に着手すらできていない

 聞けば、ダンジョン攻略の順番どころかその情報すらいまだ整理されていないとのこと

 我々の領地ではダンジョンによる魔力低下で、すでに民衆への影響が目立ってきております

 このままずるずると攻略が長引けば、ダンジョンを攻略できた時には魔力が奪いつくされた不毛の土地が残るばかりかと

 宰相閣下にお伺いしたいのは、このあたりについてどのようにお考えなのか、今後の動きについてどこまで決まっているのかという点です」


「どのようにと言えば、早急な解決を望んでいるとなるな。

 今後の動きは現在調整中となる」


「ふざけないでいただきたい!この二月一体何をされてきたのですか!

 早く対応しなければ、王国の衰退を招きますぞ!」


「では子爵はどうしろと?情報もないままむやみにダンジョンを攻略しろと?」


「その様な事は言っておりません!ただ急いで攻略が必要だと言っているのです!」


「ふむ、我々が暢気にさぼって何もしていないと言われるのですかな?

 それともこの状況を一気に挽回するような秘策が子爵におありなのかな?」


「くっ、宰相府の方々が対応に忙殺されているのは把握しています。

 ただの一子爵い過ぎない私に、この国難をどうこうできるような策があるわけがないでしょう」


「つまり子爵は、特にご自身の意見も新たな提案もなく、ダンジョン攻略に向け忙殺されている我々の貴重な時間を奪ってまで、

 ご自身の不満を述べに来たということですかな?」


「いや…そういうつもりでは…」


「ではどういうつもりなのだ?わざわざわかりきった現状を説明し、こちらが今後の方策を決めるために忙殺されている時間を無駄にさせ、

 決まり次第発表する内容をわざわざ尋ねに来る。しかも自身の考えも策もなく私の所に訪ねてくるなど、貴族派に対するアピールですかな?

 自身で宰相を動かしたとでも派閥内に喧伝するおつもりか?

 はっきり言おう、このような無駄な時間こそが、ダンジョン攻略を遅らせているのだ。

 本当に自領の民が大事ならば、くだらない権力争いなど止めて自領に戻り民衆のために腕を振るうべきではないか。

 そもそも、これだけ予定が遅れているのは貴様らのような自身の権力のことしか考えていない貴族派が余計な口をはさむからではないのか?

 勇者様のことは陛下のもと判断する事柄、それをくだらない意見でひっかきまわしておきながら、攻略を急げだと?

 貴様らからだけはその言葉は聞きたくはないわ!」


「…宰相閣下…決して私はそのようなつもりで伺った訳では…」


「ではどのような訳なのかね?くだらない言い訳なら時間の無駄だ、さっさとお引き取り頂こう!」

「今回は大変失礼しました、お忙しいようですので失礼いたします」


ボイト子爵は入ってきたときとは別人のように卑屈な姿で執務室を追い払われた。


「ふぅ、無能な貴族どもが…」

サミュエルはボイト子爵というよりも貴族派に対してため息を一つつくと、気を取り直してまだ終わりの見えない作業に集中するのであった。





そのようなサミュエルの受難には気づくこともなく、俺達はフィアからの報告を聞いていた。

「魔法省が保持しているコアの提供ですが、マシューが提供を渋っており未だ入手出来ていませんわ。

 勇者様の依頼は命令に等しいもの、それを出し渋るなど許されることではありません。

 現在近衛に手配をかけ、魔法省へのコアの提供と出し渋るのであればコアの捜索と確保を行うように進めております。


 軍部については、ダンジョン最深部でコアを見たものという条件ですと、ほとんどのものが各地の調査に出向いており未だ確保が出来ておりません。

 ただ、グレアムであれば何度かコアの破壊の実績もあるため、そちらに確認しようとしているところですわ」


「ここでもマシューの名が出てくるのか…この手の話だと追い詰めるとろくなことはしないパターンが多いんだよなぁ」

「そうね、マッドサイエンティスト枠ならとんでもない爆弾を隠し持っていそうね」

「じゃぁさぁ、まだ今なら追い詰めたって程じゃぁないし、こっそり眠らせるとかして捕まえちゃえばいいんじゃない?」

「あえてお約束を無視するってわけね」

「お約束って変身中とか、攻撃のポーズ中には手を出さずおとなしく見てましょうってやつ?」

「そうそう、世奈ちゃんもわかってるじゃない。

 この手の黒幕は追い詰めても逃げ出して、最後まで生き残って碌なことをしないってのがセオリーじゃない?」

「そうだよね、だからあえてってことなのか」

「ええ、今ならストーリーの序盤みたいな状況だと思うからそんなに警戒してないだろうし、めんどくさそうな奴にはさっさと退場してもらうってこと」


「あのぉ?皆さんのおっしゃられていることがよくわからないんですけれども…」

「そうねフィアにはちょっと伝わらないよね、ごめんごめん。

 端的に言えば、このタイミングでそのマシューって奴を捕まえちゃおうってこと」

「しかし捕らえるとなると、何らかの理由が必要となりますわ。さすがに疑わしいというだけで捕縛するというのは…」


「そんなの、コアを出し渋ったってぇことで、王国に対して翻意があるとか言っちゃえばいいんじゃないのぉ?」

「なるほど、そうですわね。勇者様の指示に逆らっているんですもの翻意ありとしても問題ありませんわ」


「できれば、捕らえた後に一度話せる機会を設けてくれないかな?」

「ジン様?その程度であれば問題ございませんが、処刑せずに捕らえるだけでよろしいのですか?」

「いやいや、そんな直ぐ殺せなんて言うつもりはないよ。

 できればそのマシューってやつが何をしようとしていたのかが知りたい。

 それから穂乃華の黒い首輪の解除法は絶対に聞きだす必要があるしな」


「そうでしたわね、ホノカ様に対してその様な事をしたのですから、その事実を認めれば極刑は免れませんわ」

「なんで、フィアはそんなに処刑したがるの?」


「だって、ジン様にご迷惑をかけたのですから。その様な輩は生かしておく理由がございませんわ」

「フィアって結構過激だったんだねぇ」

「さすがに命を奪うって言うのは抵抗あるよね」

「だよね、仁君の為なら処刑も厭わないフィアってどうなんだろ?」


「まあまあ、別にフィアが直接手を下すわけじゃないし、俺達のことを思ってのことだろ?

 それに俺達とフィアじゃ育った環境が違うんだから、考え方も違ってて当たり前だと思うよ」

「あぁ、さすがジン様ですわ。私のことをよく理解いただいてとてもうれしいですわ。

 ですのでもっと理解を深めるためにも、あちらの寝室でゆっくりとお話いたしましょう」


「「「フィア!それはダメ!」」」



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