兄からの手紙
兄から手紙が届いた
真っ白な雪が少しずつ溶けて、日の入りもだんだんと遅くなり、夜が明けるのも早くなりつつある。
小さなツバキの木には、ひとまわり大きくなり白い綺麗なはなを咲かせた。
チチチチ、チチチチと、小さな若葉色の小鳥がその花の蜜を吸うために飛んでくる。
もうすぐ、春が来る。
伊助は朝早くからラクのエサをやり、小屋を掃除する。それが終わるとラクを連れて庭に出てしばしの間、日向ぼっこをする。
ちょうどお雪が庭に出てくる時間とそれは重なるのだった。
ラクちゃんおはよう。
ラクはいつものように返事をする。
伊助はそれを見て笑っている。
この穏やかな時間がこれからもずっと続いていけばいいのにと、お雪も伊助も思うのだった。
お雪、変わったことはないですか?
はい。伊助の方はどうですか?
私も大丈夫ですよ。ラクは?
ラクは伊助の質問に、聞いたことのない大きな声で返事をした。
今日も皆、元気ですね。
ホッとした気持ちと一緒に、張りつめた緊張感も同時に襲ってくる。
それを察したかのように、ラクはクッサいゲップをしてみせる。
2人はあまりの臭さに、鼻をつまんで笑ってる。
ラクはラクダだけど、2人の笑っているのを見ていることが好きなようだった。
そこへ、お雪様、手紙を持って参りました。と役人がやってきた。
それは久しぶりに来た兄からの手紙だった。
詳しくはそこに書いてあるのではと思いますが、実はいま、聡太郎様が夕霧さんの旅籠にいるのです。
そうなの?
はい。そうなんですよ。今日も一日、私が見回りますから、お2人とも、ご安心なさっていてください。
お役人、いつもありがとうございます。と2人はお礼を言って見送った。
ではそろそろラクを小屋へ戻してきますね。
ラクちゃん、またね。
ラクは機嫌よく伊助に連れられ、小屋へと戻っていった。
お雪は兄の部屋に入って、母の絵の前に座ると手紙を開いて読み始めた。
お雪、お元気ですか?兄はいま、夕霧さんの旅籠にいます。ここで初めてお雪からの手紙を読んだことを懐かしく思い出します。
お雪と会えたのもこの旅籠でしたね。夕霧さんから聞いたよ。春になったら祝言を挙げるそうですね。兄も嬉しく思います。
また、お役人から伊助さんがお民に命を狙われていることも聞いたよ。お雪、兄も何か出来れば良いのだけど、兄はもう湯本家に帰ることはないでしょう。その代わり、お役人にちゃんとお願いしたからね。
湯本家に帰らずとも、兄はお雪の兄に変わりはないから。またこうして手紙を書くよ。伊助さんと2人、幸せにね。
お雪、おめでとう。
追伸、
春場所は大阪だから伊助さんと2人で顔を見せに来てくださいね。兄はもしかしたら初土俵を踏むかもしれません。わからないけど。
お雪は兄からの手紙を読み終えると、母の絵を見つめていた。
母の絵を見つめてお雪は一つ決断をする




