お雪との再会
鎌ちゃん帰宅
ザーッと雨が降るなかを伊助とイトが傘を持って寺子屋まで迎えに来てくれた。
まあまあ、ご立派な姿になられて。聡太郎様、元気そうでなによりです。さあさ、この傘をどうぞ。
すまないね、イト。
皆は揃って、湯本家の屋敷へ向かって歩き出した。懐かしい自慢の庭がみえてきた。
花が散り、若葉が芽吹き、やがて青々とした立派な葉をつけた植木の群れに鎌ちゃんは目を奪われた。
ここの庭は自慢の立派な庭だったけれど、3年も帰っていなかったせいか、幹が太く存在感を増している。
兄上様ー!
今か今かと待ちわびたお雪は、少し大きくなったお腹をして縁側で立っている。
白に水色の線が入った涼しげなそれが、お雪に似合って、綺麗だった。
お雪、また綺麗になったね。
ザーザー降る雨の音より大きな声なものだからお雪は下を向いて少し恥ずかしそうに笑った。
お雪様!はやく中へお戻りになってください。皆さまがもうすぐ中へ参られますからね。
イトはこのところ、お雪の行動が心配でならない。イトもまた、お腹に子を宿したことがあったが、自分の不注意で子が流れてしまった。
ただ転んだだけで、命を失ってしまった。後悔ししきれない。そんな悲しい思いを、お雪にさせたくはなかった。
お雪はそのことを知らないで、あちらこちらと歩き回る。
お雪さま、危のうございますは、耳にタコが出来るくらい毎日聞いてるわよ。イトは心配性ね。
縁側からうちの中へ入ったお雪は、表にまわり、皆を出迎えた。
伊助がお雪のもとへ行き、こちらが鏡山親方で、こちらがその女将さん、そして聡太郎さまの弟弟子の太郎さんだよ。
と、お雪はかしこまり、言った。
皆さま、兄がいつもお世話になっております。兄上の妹のお雪と申します。私の為に遠くから足をお運びくださり、ありがとうございます。
お雪、イトはお雪の事がとても心配なんだよ。私もお雪から手紙をもらって心配で飛んできたくらいだよ。元気そうで安心したよ。イト、いつもお雪を大切に思ってくれてありがとう。
あいも変わらずお優しいお言葉をくださいますね。聡太郎様は変わりませんね。
そう言って涙ぐむイトを見てなぜか女将さんが涙ぐむ。
そうこうしていると、何故だか太郎も涙ぐみ、それみた鏡山親方まで涙ぐんでいた。
何故だか知らないけれど、零れ落ちる涙の訳を、説明することもできずにただみんな、涙ぐんでいた。
鎌ちゃん涙ぐむ。




