別れの朝
鎌ちゃんはこの旅籠を後にする
楽しいひと時はあっという間に過ぎて、朝方お殿様は鎌ちゃんに別れの挨拶をした。
鎌ちゃんは、父が自分に合うためにここまで来てくれたことを感謝した。あのまま会えずにいたらきっと心にシコリが残っていた。
父は、アオに乗って山を駆け抜けていった。
帰る前に父は言った。ワシは墓の中にはおらぬゆえ、もう手を合わせなくてもよい。また会おう!
父上はオバケになってあの世に帰るクセにまた会おうと言った。そういえば、あの馬、確かお寺にいた灰色の馬だった。父上の馬だったのか。てことはあの寺に父上は居たのか。
心が綺麗な人には見えるというから、和尚にも父上が見えていたのかもしれない。
帰ったら和尚に聞いてみよう。
鎌ちゃんは、父の姿が見えなくなるまで見送ると、旅支度を始めた。鏡山親方と女将さんも付いてきてくれると言う。太郎はもちろん付いてくる。
夕霧さん、道蔵さん今回はたった1日だったけれど、お世話になりました。また来年、来ますね。
本当、短かったわね。鎌ちゃん、来年はもうちょっと長く居てね。
道蔵がそう言いながらずーっとくっついて鎌ちゃんのカラダを撫で回している。
道蔵、いつにも増して触りすぎ。と夕霧が鎌ちゃんの代わりに代弁してくれる。
だって、ものすごく良いカラダになってるんだよ?触っておかなきゃ!
道蔵、私にはよくわからないわ。それ。
わからなくていいの!じゃあ鎌ちゃん、気をつけてね。女将さん、親方、鎌ちゃんのこと、これからもよろしくお願い致します。
女将さんと親方は深々と頭を下げて、わかりました。と言ってくれた。それに女将は、夕霧に、
夕霧さん、この旅籠、私も気に入ったからまた皆んなで来るわね。
と言ってくれる。親方はその横でバツが悪そうな顔をして苦笑いしている。
唯一、この旅籠で、鎌ちゃん以外にお殿様を見てしまった太郎は、いつの間にかお里と仲良く話している。
それを見た夕霧は、鎌ちゃんに、
鎌ちゃん、彼女はいるの?
鎌ちゃんは首を横に振って、私はまだ幕下の身分です。お嫁さんをもらうのは私が日本一の相撲取りになってから。それまで相撲が私の彼女です。
、、、。鎌ちゃん、それは違う。相撲は彼女じゃないよ。彼女が居なくてもいいの。鎌ちゃんには私が居るわ。ね、鎌ちゃん?
道蔵さん。。。そうですね。私には道蔵さんが居ます!
、、、鎌ちゃん、それも違う。
、、、夕霧さん、大丈夫!わかってます。
そうね、鎌ちゃんだもんね。年頃になれば黙ってても出来るわよ。太郎になんか負けちゃだめよ。
はい!
鎌ちゃんたちは夕霧たちに見送られ、お雪の屋敷へと向かったのだった。
鎌ちゃんは出発した。




