実行開始
オバケお殿様、登場。
おばちゃんのお茶屋さんから東へまっすぐ伸びた一本道の突き当たりに夕霧の旅籠がある。だんだん近づいていくと鎌ちゃんはあぁ、帰ってきた。となんだかホッとする。
中へ入ると新しく中居になったお里が出迎えてくれた。そして、夕霧を呼びに行ってくれる。
夕霧はすぐ出てきて、みんなを部屋へと案内してくれた。
鎌ちゃんはこの部屋ね。この時季はお梅雨時でちょうど客さんが少ないのよ。
そうなんですか。
鎌ちゃんの通された部屋はこの旅籠で1番庭が綺麗に見える部屋だった。そこはお雪がここへ来た時も泊まった部屋で、鎌ちゃんのお気に入りの部屋だった。
この庭を見ると湯本家の庭を思い出す。
外を見渡して、部屋を見ると、白い着物に身を包んだ父が座っていた。
え?
鎌ちゃんの驚いたような声に夕霧はどしたの?鎌ちゃん。と聞いた。
あ、いえ、なんでもないです。
父は鎌ちゃんを見てにこにこしている。
それを鎌ちゃんは黙ってジーっとみていた。
聡太郎、元気か?
はい。
ワシが見えるか?
はい。
そうかそうか。見えるのか。
はい。父上ですか?
そうじゃ。ワシはそなたの父。じゃが、そなたも知っているように、ワシは死んだんじゃ。
なぜここへ?
ワシな、聡太郎に会いたくてな。会いたい会いたいと思ってたらここに居た。
にこにこして鎌ちゃんを見ているこの白い着物を着た人は、夕霧には見えないらしい。と鎌ちゃんは気がついた。
父上に毎日話しかけていたのですが、聞こえておりましたか?
聡太郎、そなたはオバケと話したことがあるのか?
いや、ありませんよ。
ワシのこと、怖くない?
いや、そんなににこにこした優しい顔してたら怖くないですよ。父上、会えて良かった。
本当に?ワシに会えて良かった?
鎌ちゃん、私そろそろ行くわね。
あ、夕霧さん!ちょっと待って!
どうしたの?
ここに父上が来てるんです。
湯本のお殿様が?
はい。死んでいて、オバケなんですけどね。
オバケなの?
はい。父上は1年前に斬られて亡くなりました。でも私に会いにきてくれたんだそうです。なので今日は父上の分の御膳も用意してください。
できれば布団も2人分。それがいま私に出来る父上への感謝の気持ちなんです。わがまま言ってすみません。
わかったわ。じゃあ鎌ちゃん、お殿様、ごゆっくりしてくださいね。何かあったら呼んでね。
ありがとうございます。
夕霧が部屋をあとにするのを見送って父のほうを見ると、父が泣いていた。
父上どうしたのですか?
ワシの分の御膳やら布団まで。ワシ、オバケなのに、そなたは本当に優しい良い子じゃ。ワシの自慢の息子じゃ。
と言って鎌ちゃんの両手をしっかりと握った。
父の手はとても暖かく、感触もちゃんとある。まるで生きている人のようだと鎌ちゃんは思ったが、それを父に言うのはなんだか可哀想な気がして黙っていた。
父はここぞとばかりに今度は聡太郎ー。と鎌ちゃんに抱きついた。
やっぱり生きているみたいに暖かく、ちゃんと感触もある。世の中のオバケとは本当は違うんだなぁと抱きつかれながら鎌ちゃんは思った。
父は聡太郎と会えてこうして我が腕に抱くことができてこの上なく満足していた。
聡太郎、あの時はすまなかった。許してくれ。
父上、足あるんですね。
あぁ、あるよ?
あったかいし、もしかして!脈もあるんじゃないですか?
知らぬ。ワシはそんなことは知らぬ。だってワシ、オバケだもん。
鎌ちゃんは父を見てワハハと笑った。
父も鎌ちゃんと同じようにワハハと笑った。
そうじゃ!聡太郎!一緒に風呂へ入らぬか?
父上、では風呂へ参りましょう。
鎌ちゃんと父は風呂に行く事になった。
みんなには見えないお殿様が宴会に参加り




