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旅立ちの時  作者: 美藤蓮花
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計画

夕霧の旅籠まであとひと山!

鎌ちゃん達が旅に出て、5日が経った。


その時にふと鎌ちゃんは気づく。


親方、旅に出ると嫌でも歩かなくちゃいけないから体力付きますね。


そうだなぁ。


ねえ、夕霧さんの旅籠まであとどのくらいなの?


あの山超えたらすぐです。


鎌ちゃんは嬉しそうに、高くそびえる山を指差して言った。


女将さんはその指先に目をやると、付いてきたことを少し後悔したのだった。


太郎はにこにこしながらみんなの1番後ろに付いて歩いている。何がそんなに楽しいのかわからないけれど、楽しいのだろう。


みんな太郎のにこにこした顔をみると自然と顔がほころぶ。


太郎、あんたずっと笑ってるね。楽しいのかい?


いえ、吐きそうなくらいにキツいです。


え?


僕、笑ってるように見えてます?


3人は振り返って太郎の顔をもう一度、よく見てみた。


うん。笑ってるね。


笑ってる。


笑ってるよ。やっぱり太郎あんた笑ってるよ。


辛い顔が笑っている顔に見えてしまう。太郎の小さな頃からのクセだった。辛い時は笑いなさい。


もう、それを誰が言ったのかも思い出せないほど小さな頃の記憶の片隅にいつもある。それは唯一残っている母に教えられたような。そんな曖昧な記憶だけど、辛い時に笑ったら、笑った分だけマシになった。


まだちゃんと笑えてるんですね、良かった。


太郎は今度は心から笑っている。


鎌ちゃんは、ジーっと太郎を見て言った。


太郎、大丈夫か?


はい!大丈夫です。


鎌ちゃんはまた前を向いて歩きだした。あとひと山越えたら夕霧さんの旅籠につく。もう少し。


その次の日にはお雪のいる我が故郷に行く。


鎌ちゃんはお雪の祝言の事を思い出していた。湯本家を見下ろせる丘に登って小さく見えるお雪の白無垢姿を。


破ってしまった父の手紙は今も懐の中に肌身離さず持っている。


父上、本当は私も父上に会いたいとそう思っておりました。けれど父上の事を、どこかで許せない自分が今も居るのです。


夕霧の旅籠が近づいてくる。あとは山を下れば終わり。鏡山親方は内心ドキドキしてきた。お殿様はいったいどんな風に登場されるのか。見て見ぬフリが本当にできるだろうか。


あ、いや、その前に大切なことを忘れている。太郎にまだ言っていないぞ。どうする?


女将さんもその事には気づいていた。まだ言ってなかった!もう、山を下れば着くと言うじゃない!そんな、着く手前に言っても、、、。


女将さんが小声で鏡山親方にだけ聞こえるように小さな声で言った。


太郎は冷感が強い子で、鎌ちゃんと同じように、見える事にしましょうか。


そうだなぁ。黙っておくか。


でもあの子、大丈夫かしら?


大丈夫だろ。太郎のことだ。見えても見えないんじゃないか?


そうね。私たちに合わせそうよね。なんかそんな気がしてきたわ。


うんうんと笑い合う2人をチラッと鎌ちゃんは見て思う。おしどり夫婦というのはきっと、この2人の事を言うんだろう。と。


山を降りてくる足取りも軽くなる。そして麓の茶屋が見えてきた。


あら、お茶屋さん!ねえ、ちょっとだけ良い?


そうだなぁ。


女将さん、ここのおばちゃんはとても良い人なんですよ?


そうなの?


はい!私もここのおばちゃんにはお世話になりました。


じゃあ挨拶しなくちゃね。


はい!おばちゃん!元気だった?


あら、その声は鎌ちゃんかい?元気だよー。ありがとね。あらー!立派なお相撲さんになってぇー!鎌ちゃんも元気そうでなりよりだ。きゃ!鏡山親方もご一緒?そのお綺麗な方は女将さんかい?あらあら、鎌ちゃんみたいな子も一緒じゃないのさ。みんな夕霧さんの旅籠に来たのかい?


はい!


そうかい。夕霧さんもみんなも喜ぶよ。おかえり、鎌ちゃん。


おばちゃん、ただいま。


お茶を飲んで団子を食べた。お腹が空いていたのか今日のおばちゃんの団子は格別な味がしたのだった。


夕霧さん、変わりない?


ああ、なんかね、馬が増えたよ?


馬?


そう。馬。


それは楽しみだ。じゃあおばちゃんまた来るね!


おばちゃんは手を振ってみんなを見送ったのだった。





いよいよ鎌ちゃんは父と再会を果たす。

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