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旅立ちの時  作者: 美藤蓮花
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計画

お雪のところに手紙が届いた

雨はまた降り始めた。梅雨時に降る長雨は、長過ぎると木々を病気にしてしまう。


生きていくには必要なものでも、それを摂りすぎてしまうと病気になってしまう。


過ぎたるは及ばずが如し。である。


まだここに植わって一年しか経っていないサザンカだと思っていたら椿の木にも容赦なく雨は降り注ぐ。


ラクダのラクも外に出ることが出来ず、ずっと馬小屋で過ごしている。


お雪もまた、屋敷の中で過ごしている。伊助は仕事の為、居なかった。


縁側に出たお雪は空を見上げ、まだまだ止みそうもない雨が早くやめばいいのになー。と呟いた。


お雪様、冷えては大変です。どうぞ中へお戻りくださいませ。と女中のイトが呼びにきた。


イトは長いことこの湯本家の女中をしており、お殿様が江戸へ行く時も付いては行かずお雪の側に居てくれた。


母からの贈り物を大切にしまって置いてくれたのも、このイト達のお陰だった。お雪が懐妊した事を心から喜んで、涙してくれた。


わかったわ。いま、戻るわね。


お雪様ー。


戻ろうとしたところに家来が手紙を持ってきた。


この家来はあの役人の甥で、この家来もこの屋敷に残った数少ない家来の1人だった。お殿様からもこの屋敷に残って伊助とお雪を守ってやって欲しいと仰せつかった1人だった。


聡太郎様から手紙が届きましたよ。


いつもありがとうね。ここまで持ってきてくれて。


もう隠す必要もありませんもの。お雪様、良かったですね。


お雪はニッコリと笑うと、うんと大きく頷いて、いつものように聡太郎の部屋の中へ入っていった。


母上、兄から手紙がきましたよ。今から読みますね。


母の微笑む顔が早く読んでちょうだいねと言っているようで、とても嬉しいのだった。


拝啓、お雪様、元気にしてますか?


懐妊したと知り、兄は嬉しく思います。そしてお雪の事が少し心配になりました。


それでね、兄はお雪の顔が見たくなって、女将さんと親方に頼んで、秋場所が始まる前にお雪の顔を見に行く事にしたよ。


この手紙が届く頃には兄はもう出発して幾日か経っている頃だよ。もうすぐ行くからよろしくね。


兄より。


母上、兄上がここへ来てくれるそうです。お雪は幸せ者ですね。


そうね、お雪。お前は幸せね。母はお雪が幸せでいてくれる事が幸せなのですよ。


母上、嬉しい時も涙がでるんですね。


母の絵は何も言わないけれど、いつも見守るようにそこにいる。母の絵を掛け軸にして兄上に渡そうとしたお雪だったが、ここにいてくれて良かったと思うのだった。


お雪、いま帰りましたよ。


お帰りなさいませ。伊助。


どうした?なんで泣いてる?何があった?


いや、これは、嬉し涙よ。伊助、兄上が会いにきてくれるって。


本当に?そりゃ私も嬉しい!それでいつ?


もうすぐ。


そうか。もうすぐか。良かった。兄上が会いにきてくれるなんて。秋場所の初土俵で幕下優勝したそうだ。


それ本当?


ああ、本当みたいだ。江戸へ行ってきた役人が話してた。


兄はそんな事ひとことも書いてないわよ。


聡太郎様らしい。お殿様と本当に良く似ている。お殿様も自分の手柄を自分で言うことは絶対にしなかったし、肩で風切るような事もなかったよ。


伊助が父上の話をするの初めてね。


お殿様の仕事を引き継いでやってはいるが、大変で。アホな事ばかり言ってたあの人は凄い人だったんだなぁと思うと、なんだかお雪にも知って欲しくなったんだよ。


父上は母上に会えたかしら?


きっと会えてるよ。大丈夫。


父が生きているけど死んだことをこの2人は知らない。悲しみをいつくか超えた2人の絆は過ごした時の長さだけ、強く深くなっているのだった。





兄が来るのを心街にする2人だった。

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