エピローグ 1/28
第七部 俺達の家族 ー団結編ー 新章『『兄さんなんて大嫌いです!』
このお話は藤堂正道の視点と朝乃宮千春の視点で物語が進行します。
タイトルは日付で表記されます。
小説家になろうでは藤堂正道の視点で物語が進行致します。
朝乃宮千春の視点はアルファポリスで投稿致します。
「そうだ。親指、人差し指、中指で割るんだ。フォークの要領だな」
「……こう?」
「そうそう。慎重になってゆっくり割ろうとするな。こう自然にな」
俺は強に手本を見せる。片手で卵を割り、ボールにいれる。
強も俺と同じように卵を割ろうとするが……。
「あっ……」
卵は割れたが、親指が卵の中に入り込む。
「強、焦ることはない。そのまま手を開いて、卵をおとせ」
「……うん」
強は卵をボールにおとすが、少し殻が混じったな。
「……」
「そんな顔をするな。俺だって何度も失敗して割れるようになったんだ。それに慣れれば片手の方が割りやすい」
コツを掴めば、片手の方が楽なのは確かだ。
俺は強のお願いで料理を教えている。強がなぜ、料理を覚えたいと言い出したのかは分からない。
けど、強が望むのなら、俺は応えたい。
俺はいつも誰かを傷つけてきた。理不尽に立ち向かう為、暴力を是とした。
俺は反面教師でしかない。
ただ、そんな俺でも教えられることはある。わずかなものだけど、俺に出来ることをしたいって思ったんだ。
俺と強を楓さんはニコニコと見守っていた。少しテレくさいが、俺の料理の師匠は間違いなく楓さんだ。
俺よりも優れたアドバイスをしてくれると思ったが、基本、口出ししないようだ。
俺を見守っている……いや、睨みつけているヤツが一人……。
「……」
上春だ。
アイツは何がしたいんだ?
ずっと、俺と強……いや、俺を睨んでいる。
面倒くさそうなので、俺は上春を無視することにした。
さて、何を作ろうか?
目玉焼き……はボールに卵を入れちまったしな……別にそれでも作れるが、卵焼きにするか?
それともスクランブルエッグもいいな。
ウィンナーがあるし、おやつにホットドッグでも作るか。
別に俺達は人様にご馳走するような料理を作るわけではない。だったら、好きなモノを作ればいい。
料理は楽しく作る方が上達するしな。
「よし、強。もう一個割ってくれ。全然失敗しもいいからな。こういうのは経験だ。幸い、食い扶持が多いから経験に困ることはないからな」
何の因果か八人家族になっちまって、料理を沢山作らなければならない。失敗作など信吾さんにでもくれてやれ。
まあ、失敗作は自分で処理するのも上達する方法の一つだけどな。
強は卵を割ろうとしたとき。
「……」
上春が俺と強の間に割り込み、慣れた手つきで卵を割った。
コイツ……。
俺はポカリと上春の頭を叩いた。
何やってるんだ、コイツは。強の料理の邪魔をするな。
上春はうつむき……。
「……ぅあああああああああああああああああああ~~~~~~~~~~~~~~~!」
「「「!」」」
上春はいきなり号泣した。
な、何が起こったんだ?
俺も強もただ呆然としていた。
楓さんだけが反応し、上春を優しく抱きしめる。
この出来事が今から起こる他愛のない……いや、違うな。
かなり面倒で、騒がしくて、でも、楽しくて……。
その日々が……二度と取り戻せない輝かしい宝物になることも知らずに……。
そして、アイツとのわずかで貴重な思い出もこの日々のなかでうまれていく。
今回はそんなお話だ。




