07 オーディションの結果
秀吉の胸が高鳴った。
自分は豊臣秀吉。
アイドルの世界でも天下を獲れる。
審査員が言った。
「合格者は二名です」
秀吉は胸を張った。
二名。
ならば、あと一人は誰だろう。
「1991番。前田美咲さん」
「はい!」
美咲が笑顔で立ち上がった。
秀吉はうなずいた。
「まずは一人・・・」
審査員が続ける。
「1998番。向井七海さん」
「・・・はい」
七海は戸惑いながら立ち上がった。
「以上です!」
秀吉の表情が固まった。
部屋が静まり返る。
秀吉は自分の胸元を見た。
――2035
信長は何事もなかったかのように書類を整理していた。
秀吉は言った。
「親方様! これは何のご冗談でございますか?」
信長は何も答えない。
秀吉は美咲を指差して言った。
「わしが、この小娘以下ですと?」
秀吉は七海に視線を移す。
「そこの小娘に至っては、膝が震えておったではないか!」
秀吉は信長に迫った。
「天下は選ばれたものしか手にすることはできぬもの。この秀吉めを選ばぬなら、必ず後悔しますぞ!」
信長が静かに口を開いた。
「貴様は、アイドルというのが何なのか、本当に知っているのか?」
「歌って、踊るものでござろう・・・」
「それだけか?」
秀吉は黙った。
「貴様、さっき最終審査で何をやった?」
「わしは三分間、炊飯器と戦ったのでございます」
信長の目が険しくなる。
「俺が欲しいのは芸人ではない。アイドルだ」
秀吉は唇を噛んだ。
信長が言った。
「アイドルは人を惹きつける」
「・・・」
「憧れさせる」
「・・・」
「そして、人の心を動かす」
信長が秀吉を見る。
「それができる人間だけがアイドルの世界で天下を獲れる」
秀吉は何も言えなかった。
腹が立って、悔しかった。
天下人である自分が、何も知らなかったのだ。
だが、胸の奥が妙に熱くなった。
面白い。
自分が知らない天下取りがこの時代にはある。
歌と踊りで人の心を動かし、天下を獲る。
それならば覚えればいい。
歌も、踊りも、アイドルというものも。
全部を覚えて天下を獲ればいい。
審査員がそんな秀吉の決意に水を差すように言った。
「以上となります。豊臣さん、お帰りください」
秀吉は自信満々で言った。
「何を言っとる。わしは今、燃えておるのだ」
信長は秀吉など見向きもせずに言った。
「前田。向井」
「はい」
「これから本能寺に向かえ」




