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21 今日は信長の誕生日・サプライズな大作戦! 其の四

 秀吉は慎重にケーキにナイフを入れた。まるで敵陣に切り込む武将のような顔をしていた。

 四人が黙って見守る。

 秀吉は真剣な顔でケーキを切り分けていく。

 ひと切れ、ふた切れ。

「できた」

「普通に切っただけじゃん」

 美咲がつぶやく。

 秀吉は胸を張った。

「うむ。見事な采配であった」

 美咲が言った。

「すごい自己満足・・・」


 美佐子が皿にケーキを並べる。

「では、いただきましょうか」

 秀吉は言った。

「待て!」

 美佐子が少し声を荒らげた。

「今度は何?」

「毒味じゃ!」

「毒味?」

「親方様がお召し上がりになる前に、わしが食べる」

「もう・・・」

 秀吉は真剣だった。

 自分の皿にケーキを取った。

 ケーキをじっと見て、においを嗅いだ。

 フォークでほんの少しだけケーキを削った。

 秀吉はゆっくりとケーキを口に運んだ。


 七海が心配そうにたずねた。

「どうですか?」

「甘い」

 美佐子が言った。

「毒の味はどうですか?」

「分からぬ・・・」

 美咲が言った。

「それ、毒味になってないじゃん」

 七海がくすくす笑った。

 それにつられて美佐子も笑いそうになる。

 秀吉の顔は真剣だった。

「笑い事ではないぞ?」

 美佐子が信長に言った。

「大丈夫みたいだから、新田社長も食べてください」

「ああ」


 信長は自分のケーキを口に運んだ。

 美佐子がそっとたずねる。

「おいしいですか?」

「うまい」

「よかった」

 美佐子の表情がゆるむ。

 秀吉はふと信長の横顔を見た。

 いつもの険しい表情がない。

 ただ、目の前のケーキを静かに味わっている。

 その顔を見ていると、秀吉は何とも言えない気持ちになった。


 秀吉の知っている信長はいつも戦場にいた。

 天下を目指し、敵を倒すことしか知らない男だった。

 そんな男が今はおいしそうにケーキを食べている。

 秀吉にはそれが妙に新鮮に感じられた。

 信長が口を開いた。

「なんだ、貴様。何か言いたそうだな」

 秀吉は慌てて首を振る。

「いえ、いえ、いえ。親方様にも、なかなか人間らしいところがあるなと思いまして・・・」

「喧嘩を売っているのか?」

「滅相もござりませぬ!」

 七海がその様子を見て笑った。

「なんだか、いい誕生日ですね」

「そうですね」

 美佐子が微笑んだ。

「最初はどうなるかと思ったけど・・・」

 部屋の空気がやわらかくなった。


 信長が美佐子に話を振った。

「そういえば・・・」

「はい?」

 美佐子が振り向いた。

「貴様、どうして俺の誕生日を知っていた?」

「えっ?」

「俺が公表している誕生日は八月だ」

「・・・」

「今日が本当の誕生日だということは、誰にも教えていない」

 美佐子は少し考えてから首をかしげる。

「マネージャーさんから聞いたような気がします」

「ような?」

「違う人だったっけな?」

「まあよいか」

 信長はそれ以上何も言わなかった。


 秀吉は美佐子を見た。

 やはり何かあるようだ。

 この女は一体、何者なのか?

 美佐子が秀吉の視線に気づいた。

「豊臣さん?」

「なんじゃ」

「ケーキはお口に合いませんでしたか? さっきからずいぶんと、私のことを見ていますけど・・・」

「それは・・・」

 秀吉は何と返していいのか分からなかった。

 美佐子がじっと秀吉を見る。

「豊臣さんって不思議な方ですよね」

 秀吉の背筋に、ぞくりと恐怖が走った。

「なんか、豊臣さん、本物の豊臣秀吉みたい」

 秀吉は、心臓が身体の中から飛び出るほど驚いた。

 美佐子はそんな秀吉を見て言った。

「な―んてね!」

 美佐子は笑っていた。

 秀吉は笑えなかった。

 現世の人間が、自分のことを豊臣秀吉の転生者だと見抜けるはずがない。

 なのに、なぜ、そんなことを言えたのか・・・。


「気が変わった」

 信長が立ち上がった。

 信長が四人を見る。

「明日を最終日にする」

 美佐子が言った。

「早すぎませんか?」

 信長は四人を突き放すように言った。

「明日は特別なプログラムを用意しておいたから、ケーキを食ったらさっさと帰れ!」


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