22 秀吉! いざ、クイズ番組へ
最終日。
朝のレッスン室。
四人はストレッチをしていた。
美咲が鏡に張られた一枚の紙に気がついた。
「・・・何これ?」
紙には大きな文字が書かれていた。
『本日 クイズ・ゴールドラッシュの撮影』
その下には太い赤い文字。
『大至急、運動場に来い! 新田』
七海が紙をのぞき込む。
「ゴールドラッシュって、あの武田レオンが司会のやつ?」
「そうじゃない?」
美咲が答える。
「あいつのことだから嘘はないと思うけど・・・」
秀吉が言った。
「クイズとは何じゃ?」
「えっ?」
美咲は驚いた。
秀吉は不思議そうな顔をする。
「何じゃ、その反応は」
「あんた、クイズも知らないの?」
「知らぬ」
「あきれた。さすが原始人ね」
七海が言った。
「クイズっていうのは、問題が出て、それに答えるゲームなんです」
「ほう・・・」
「知恵比べみたいなやつか?」
「まあ、そうですね」
「ならば、わしの得意分野ではないか」
「そうかしら・・・」
美咲が首をかしげる。
そのときだ。
窓の外を見ていた美佐子が声を上げた。
「運動場で何か始まってますよ」
三人も窓の前に来た。
昨日まで何もなかった運動場に、大掛かりなテレビ番組のセットが組まれていた。
中央には司会者席。
その向かいには横一列に並べられた回答者席。
それぞれの席の前に赤い丸いボタンが置かれていた。
回答席の上には小さなモニターが設置され、その周囲には数台のテレビカメラが並んでいた。
スタッフらしき人たちが忙しそうに動き回っていた。
美咲がつぶやいた。
「これ、ガチじゃない?」
「そうみたいですね」
美佐子が答える。
「すごい・・・」
七海が窓の外を指差した。
「あっ! あそこ! あの赤い帽子!」
司会者席の前にスタッフに囲まれた一人の男が立っている。
赤いハット。
グリーンのジャケット。
テレビで何度も見たことのある顔。
「武田レオンだ!」
美咲の表情が明るくなる。
慌ててポケットから手鏡を取り出す。
「髪、大丈夫かな・・・」
美咲は手鏡をのぞきこみ、前髪を整えた。
美佐子が言った。
「早く行ったほうがよさそうじゃないですか?」
美咲が言った。
「そうね」
四人は急いでレッスン室を出た。
廊下を走っているとテレビスタッフとすれ違った。
「おはようございます! 本日はよろしくお願いします!」
美咲は足を止め、深々と頭を下げた。
声まで普段より高くなっていた。
完全にアイドルの顔だった。
スタッフが言った。
「新田さんが待ってますよ」
「分かりました。ありがとうございます!」
四人は運動場に出た。
そのとき、信長の怒号が飛んできた。
「貴様ら! 早く来いと書いてあっただろうが!」
「すいません!」
三人が頭を下げる。
秀吉だけは、このときも平然としていた。
「親方様。これは一体、何の戦の準備ですか?」
「戦のセットではない! これはクイズ番組だ!」
秀吉は番組のセットを見回した。
回答者席の前にある赤いボタンに目を止める。
「なんじゃ、あの赤いやつは・・・」
七海が言った。
「早押しボタンかな」
「何のためにあるのじゃ?」
「答えが分かったら押すんです。押した人から順番に答えていくんですよ」
「なるほど・・・」
美咲が言った。
「あんたさ、ほんと、頭大丈夫? 変な演技して、使われなくなるようなことしないでよ」
「任せとけ」
「ほんとかしら。私、嫌な予感しかしないけど・・・」
武田レオンが四人のところに歩いてきた。深々と頭を下げる。
「武田レオンです。本日はよろしくお願いします」
美咲が頭を下げながら言った。
「こちらこそ、よろしくお願いします。私、クイズ・ゴールドラッシュのファンなんです。武田さんとご一緒できるなんて光栄です」
武田は見た目の派手な衣装とは違い、穏やかな男だった。
声も柔らかく、笑顔も自然だった。
その間、秀吉は武田をじっと見ていた。
嫌な予感がした。
武田が秀吉に言った。
「どうかされましたか?」
秀吉は我に返る。
「いやいや。なかなかの大将じゃと思ってな」
「大将?」
武田が目を丸くした。
信長が近づいてきて言った。
「撮影は九時までだ。さっさと始めるぞ」
信長は美佐子を指差す。
「明智」
「はい」
「貴様から回答席に行け」
「分かりました」
美佐子が回答席に向かった。
スタッフが美佐子の胸元にピンマイクをつけた。
運動場にスタッフの声が飛び交っていた。
「マイク入ります」
「はい」
「声、大丈夫ですか?」
別のスタッフがカメラを動かす。
「カメラ、オッケーです!」
「音声問題なし」
「照明オッケーです!」
武田レオンが司会席についた。
さっきまで穏やかだった男の表情が、静かに引き締まった。
表情が変わり、目つきが鋭くなる。
背筋が伸び、空気が変わる。
秀吉は、その一瞬の変化を見逃さなかった。
武田がカメラの向こうを見る。
スタッフが右手を上げる。
「それでは、本番、いきまーす!」
スタッフの声が響く。
「五秒前!」
秀吉の心臓が高鳴る。
「四、三、二・・・」
武田レオンの表情が笑顔に変わった。
「一!」
カメラの赤いランプが点灯した。
「クイズ。ゴールドラッシュ!」
武田の声が運動場いっぱいに響き渡った。




