19 今日は信長の誕生日・サプライズな大作戦! 其の二
四人が信長の部屋に入った。
「お誕生日、おめでとうございます!」
四人の声が重なった。
返事がない。
部屋の中は真っ暗だった。
「社長?」
美咲が声をかける。
「寝ちゃったのかな?」
七海が言った。
「だったら・・・」
七海は手に持ったクラッカーのひもを引く。
「えいっ!」
七海がクラッカーを鳴らし、部屋に乾いた破裂音が響いた。
紙テープが暗闇の中に飛んでいき、白い煙がふわっと漂った。
美咲は怒った。
「ちょっと、七海!」
「だって、サプライズじゃないですか・・・」
「私たちを驚かせてどうするのよ!」
「すいません」
美佐子が言った。
「社長はどこかに出かけたのかもしれませんね」
「いや・・」
秀吉が言った。
三人が振り返った。
「誰かおる・・・」
「えっ?」
秀吉は部屋の暗闇の奥を見た。
「わしには分かる」
美咲が言った。
「何が分かるのよ?」
「気配じゃ」
「気配?」
「うむ。戦場では、姿が見えずとも、敵の気配を読んで戦うものじゃからな」
「何言ってんのよ。ここは合宿所よ? 時代錯誤なことばっかり言わないでよ」
その時だった。
暗闇の中で何かがもぞっと動いた。
「・・・」
秀吉の身体が固まる。
もう一度、もぞっと動く。
「やはりおる!」
「えっ?」
布団から人影が起き上がってきた。
「何用だ!」
「うわああああああっ!」
七海が飛び上がった。
「きゃあっ! オバケ?」
美咲も悲鳴をあげる。
秀吉が一歩下がる。
暗闇の中に乱れた髪の男が立っている。
鋭い目だけがぎらりと光る。
寝起きだというのに、その威圧感だけは際立っていた。
「何だ、貴様ら!」
怒号が飛ぶ。
「ひっ・・・」
七海が美咲の背中に隠れる。
「ちょっと、私を盾にしないでよ」
その横で、美佐子だけは落ち着いていた。
「社長。ちょっと待ってくださいね」
美佐子が壁のスイッチを押した。
ぱっ、と部屋が明るくなる。
そこに立っていたのは信長だった。
「・・・」
信長が四人をにらみつける。
沈黙が流れる。
秀吉はその場で膝をつき、見事な土下座をした。
「申し訳ございませぬ!」
信長が言った。
「何しに貴様ら、俺の部屋に入ってきた!」
美佐子が笑顔で言った。
「お誕生日のお祝いに来ました」
美佐子がケーキの箱を持ち上げる。
「ケーキもありますよ」
「誕生日?」
信長の眉間に皺が寄る。
「帰れ!」
部屋に緊張が走る。
美咲が言った。
「ちょっと、あんた。せっかく明智さんがケーキ持ってきてくれたのよ! 感謝ぐらいしなさいよ!」
秀吉は恐る恐る顔を上げた。
信長の火を噴きそうなほど恐ろしい目をしていた。
秀吉は信長から視線を逸らした。
よく部屋を見回すと、十畳ほどの広さだった。
小さな机と布団、最低限の家具しかなかった。
いかにも信長らしいと思った。
「んっ?」
秀吉の視線が机の上で止まった。
数冊の雑誌が目に入った。
表紙には水着姿の少女の姿が写っていた。
「何じゃあれは・・・」
「あっ!」
七海が机の前に行った。
「徳川キララちゃんの写真集だ」
信長の表情が固まる。
七海の目が輝く。
「社長もキララちゃん好きなんですか?」
「違う」
即答だった。
「アイドルの研究をしているだけだ」
「だったら、なんで三冊も同じ写真集があるんですか?」
七海が机の写真集を手に取った。
「キララちゃん、めちゃくちゃかわいいですよね」
「かわいくない!」
信長が徳川キララの写真集を奪い、ものすごい剣幕で押し入れの中に放り込んだ。
部屋に静かな沈黙が訪れた。
秀吉が小声で七海に聞いた。
「今、徳川キララと言ったよな?」
「はい」
「その者はどのようなやつなのじゃ?」
「もう、かわいくて、かわいくて。ちょっと天然なところもある日本一のアイドルです」
「ほう」
「ステージに立つと歌もダンスもすごくて、別人みたいにかっこよくなるんですよ?」
「なるほど・・・」
徳川キララ。
日本一の人気アイドル。
神が言っていた自分が目指すべき場所でもあり、徳川家康の生まれ変わり。
秀吉が信長に言った。
「親方様は徳川キララのどこが好きなのでござりますか?」
信長が怒鳴った。
「好きでもないし、ファンでもないわ!」
美佐子が二人の間に割って入る。
「まあまあ。せっかくのお誕生日なんですから、ケーキでも食べましょうよ」




