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11 秀吉、初めてのテレビ 其の二

 黒い箱の表面がぱっと明るくなった。

「うわああああああっ!」

 秀吉が飛び上がった。

「な、なんじゃこれは!」

 画面の中に人間が映っている。

「て、敵じゃ! しゃもじはどこじゃ!」

 美咲が言った。

「ちょっと! 静かにしてよ!」

「黙っておられるか! 敵がこの箱の中に小さくなって入っておるではないか!」

 美佐子が冷静に言った。

「豊臣さんは、プロ意識が高い方なんですね。こんな時でも、戦国武将になりきっておられる」

「お前は、この者たちを知っておるのか? この小さくなったやつらじゃ」

「これはテレビといって、映像を映し出せる機械なんですよ。中に人が入っているわけではありません」

「映像?」

「昔撮ったものや、今起きてることを、この画面を通して映せるんです」

「今、起きてることまでか?」


 秀吉がテレビに近づく。

 画面には、若い男女がきらびやかな衣装を着て歌っている姿が映っている。

 その前には大勢の観客。

 観客は光る棒を手に持ち、歌に合わせて振っていた。

「これがアイドルというものなのか?」

「そうよ」

 秀吉はテレビに釘付けとなって小さくつぶやいた。

「歌と、踊りと、演技で人を集め、そしてその人々の心を動かす」

 秀吉の口角が持ち上がる。

「これが親方様の言っていたアイドルというものか」

 秀吉の目が輝いた。

「面白い。わしが目指す天下というものがここにあるのか」

 美咲が呆れた顔をする。

「天下、天下、また天下・・・。大丈夫なのかしら。リモコン貸してもらえます?」


 美咲がテレビのリモコンを美佐子から受け取った。

 美咲がチャンネルを変えた。

 秀吉は驚いた。

「な、ななんじゃ! 人が変わりよった!」

 画面には、ニュースのお天気お姉さんが映っていた。

 日本地図を背景に、明日は「全国的に雨になる」と伝えている。

「雨か・・・」

 美咲はそうつぶやいて、またチャンネルを変えた。


 画面に古い寺の映像が映し出された。

 秀吉の目が止まった。

「・・・」

 見間違えるはずがない。

 あの場所だ。

 本能寺だ。

「なんか、いい番組ないのかしら」

 美咲がチャンネルを変えようとした。

「だめだ! 貸せ!」

 秀吉がテレビのリモコンを奪った。

「ちょっと何するのよ!」


 画面には本能寺の映像が映っている。

 画面にテロップが浮かび上がった。

『本能寺の変――信長最後の一日』


 秀吉の手からリモコンが滑り落ちた。

 秀吉は動けなかった。

 燃えがる炎。

 逃げ惑う兵。

 炎の中に立つ、織田信長。

 あの日の光景が頭の中に鮮明によみがえる。

 明日は6月21日。

 雨。

 秀吉の視線が美佐子に向かう。

「まさかな・・・」


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