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老教授、少年に転生――教授は異界を書で拓く  作者: 千本松


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第二十三話「逆鱗に触れた少女」



「先輩さ……それはないんじゃない?」


 ミカが、ぽつりと呟いた。


「どういう意味ですか?」

「リアがなにかしたの? いくらなんでも、ひどいよ」

「ミルゼアへ戻りなさい」

「いや、だから――……ッ!?」


 レーナの眼差しが、静かにミカを見下ろす。


 その背から放たれる圧力――

 異端観測官として積み上げた格の違いがあった。


「教授様は、私に任せるとおっしゃいました。だから教授様が戻られる前に、貴女達をここから追いやらねばなりません」


 九重への尊敬と崇拝が、レーナを絶対の使者に変えていた。


「……本気なんだ」

「もう一度言います。ミルゼアへ戻りなさい」

「でも……実はアタシら、寄宿舎を勝手に飛び出しちゃってさ。戻ったら、どんな折檻を受けることやら」

「私を好きなように言い訳の材料に使ってください。貴女なら――どうとでもできるでしょう」

「……それでいいの? 先輩もう、ミルゼアに戻れなくなるよ?」

「構いません」


 レーナの迷いのなさに、ミカはしばし黙り込む。

 だが、絶望に伏せるリアを見て、拳を握りしめた。


 そして最後の一矢を放つように、あえて口を開く。


「先輩……――もいっこ、聞いていい?」

「何ですか」

「あの教授のこと、ちょっといいなって思ったんだよね。年も近そうだし、アタシとお似合いじゃない? ……――先輩と違って」


 ……風が止む。


「……――は?」


 レーナの声が、空気を焼いた。



 一方そのころ、集落の外れでは――


「……キミで最後のようだ」


 九重は、集落に潜んでいたすべてのグールを正常に戻していた。


「礼を……言い……ます」

「私こそ貴重な体験に礼を言う。それより――キミ達を襲った闇だが、何の情報もないのかね」

「わから……ない……――ただ」

「ただ、なにかね?」


 グールは九重の持つ《アル・アジフ》をじっと見つめながら――


「――主様の書……と、よく似たものを、見た……気がする」

「そうか」


 そうしてグールは去っていった。


(いったい何が、この集落にグールを集め人を襲わせたのか)


 九重は顎に手をやり、静かな笑みを浮かべる。


「実に……興味深い」




▼次回「リアとミカ」

お読みいただきありがとうございました!

表紙イラストやキャラ設定は、Xで随時公開しています。

今後ともお楽しみいただけましたら幸いです。

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