第二十二話「絶望の棄却」
九重は軽く目尻を押さえ、ふっと息を洩らした。
「……どうやら込み入った話になりそうだ」
そして視線をレーナへ向ける。
「レーナくん……ここは任せていいかね? 私は、やるべきことがある」
「はい! お任せください……教授様」
「うむ」
九重は静かに背を向け、ゆっくりと歩み去る。
その姿が闇に融けるまで、レーナはただ見送った。
やがて振り返ると、残された二人に鋭い視線を向ける。
「で? ここで何をしているのです」
レーナの声は硬質だった。
静かながら、有無を言わせぬ圧を孕んでいる。
「まあ~……ちょっと、校外学習というか……」
ミカが気まずげに笑うと――
リアは一歩前へ出て、ハッキリと叫んだ。
「教授を捕まえに来ました!」
レーナの瞳が鋭く細められ、ミカは目を伏せて溜息を吐く。
「……教授様を?」
「姉様があんなふうになったのは、教授のせいです! だから、元に戻してもらいます!」
「あんな、とは?」
「姉様は……姉様は……!」
リアはこみ上げるものを押さえきれず、再び叫んだ。
「一人じゃ何もできない! お話もできない! ただ教授……教授って呟くだけ……! そんなのに、なったの!」
レーナの瞳は、少しも揺れなかった。
教授様は間違えない。
だからジゼルがどんな状態になったにせよ、それは自業自得に過ぎない。
「そうですか」
「……それだけ、ですか?」
「それだけです」
「助けては、くれないんですか?」
「そのつもりはありません。……おそらくは、教授様も同じでしょう」
リアの瞳から、瞬く間に光が消えていった。
顔は青ざめ、絶望だけがその表情を塗りつぶす。
膝が折れ、ミカが反射的に肩を支えた。
▼次回「逆鱗に触れた少女」
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