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ChocolateDragon  作者: 珈琲屋
13/16

9

朝輝が主人公だったはずが、いつの間にか沙也香視点の話に…(笑)

「さて、九条さん」


これまた沙也香の家では考えつかなかいような豪華な朝食を(夕飯はなんかご馳走になるのが申し訳なくなくなるほど豪華だった)食べ終わり、朝輝がイスにもたれかかって言った。


時刻は午前9時ちょっと。


色々とドキドキしていた沙也香としては、朝輝が起きるまで部屋で1人でいて、不安で不安で仕方がなかった。更に言うと朝ご飯も美味し過ぎて、食べ過ぎた上に、現在9時過ぎと言うことは3時間後にはお昼という、かなり胃袋的にハードな感じである。


「魔術のお勉強を始めようか?」


今日からやることは知っていたが、まさか今言われるとは思っておらず、ちょっと焦った沙也香。


朝輝に無害な笑顔を向けられて、顔が熱くなっている。

「う、うん。お願いします」


「じゃあまず、魔術って何だと思う?」


「えっと…」


いきなり難しい質問だった。


魔術…魔法…の意味…


「う〜ん…奇跡を起こすこと?」


「まぁ、間違いじゃないよ」


「その…正解は?」


「人の欲望だよ」


朝輝が少しニヤリとして、椅子から背を離してテーブルに肘を付いた。


「…欲望」


「そう。欲望。不老長寿、不老不死になりたい、金持ちになりたい、空を飛びたい、世界を征服したい、誰かを殺したい、誰かを蘇らせたい、美しくなりたい、尊敬されたい、力が欲しい。この世の真理を得たい。…それを叶えんとする為に…その欲望を満たす為に生み出されたのが魔術だよ」


「じゃあ本物の魔術って、なにが出来るの?」


「う〜ん…魔術って一口に言っても沢山種類があるからね。出来ることより、出来ないことを言った方が分かりやすいかも」


朝食の時に、何故か沙也香に向かって勝ち誇った顔をしていた結が、子猫の姿になって朝輝の膝にちょこんと乗って来た。


テーブルの食器を、白雪が手際よく片付けてゆく。


「じゃあ、魔術で出来ないことって…何?」


「大ざっぱに言えば、完全に人を蘇らせること、神になること、無から何かを生み出すこと、かな」


まぁ、細かいのは沢山有るけどね。


「完全にってことは…不完全なら可能なの?」


「例えば、死霊術ネクロマンシーって魔術系統があるんだけど、あれはある意味死者を蘇らせるモノかな。レベルが高い死霊術師だと、死体に肉体を失った他人の霊魂を込めて動かすってのがあるんだよ。これは不完全な蘇りかな」


「ふぅ〜ん…」


なんか怖くなってきた。


「まぁ、不老長寿…半永久的に生きることは出来るよ?」


「あっ!もしかしてそれって賢者の石!?」


某ファンタジー映画で得た知識であったが、今まで沙也香にとって魔術とはそのくらいのものであった。


「賢者の石は“まだ”ないよ」


「えぇ〜…ないんだ」


現実を知り、ちょっとがっかりした沙也香であった。


「じゃあ、なにで不老長寿になるの?」


「吸血鬼になること、かな」


一瞬、沙也香の心臓が跳ねた。


吸血鬼ってホントにいるんだ!!


会ってみたいの半分、怖いの半分である。


「朝輝君は会ったことあるの?」


「勿論あるよ」


「どんな感じなの?」


「人と変わらないよ。血が必要で、かなりの長生きで、スッゴい頑丈で身体能力が高いってこと以外はね」


「やっぱりニンニクとか聖水とか十字架とか苦手?」


「いや、因みに太陽も大丈夫だし、杭を心臓に刺せば死ぬってのは、吸血鬼だろうが人間だろうが同じだしね」


「へえ〜。吸血鬼になるって、やっぱり咬まれるとなるのかな?」


「ある意味逆だね。人間が吸血鬼の血液を摂取すると吸血鬼になる。それと今は新しい吸血鬼を作り出すことは禁じられてる」


最後に、案外近くにいたりするもんだよと言ってニヤリとした朝輝であった。


「さぁ、問答はこれくらいにして、早速テストかな」


「えっ!?テスト!?私まだなにも…!!」


いきなりのテスト宣言で慌てた沙也香であった。


学生にとって突然のテスト宣言は死刑宣言に等しいのであるから。


「テストって言っても、勉強のテストじゃなくて、九条さんの適性を調べたりするテストだから大丈夫だよ」


椅子から立ち上がりながら朝輝が言う。

「あぁ…良かった…」


朝輝が立ち上がったせいで下にずり落ちた結が、朝輝の足元でみぃ〜みぃ〜と不満を述べていた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「朝輝様」


朝輝邸の地下である。


あの後3人は地下に移動し、さっそく沙也香のテストを開始したのだ。


地下がある家は初めてな沙也香であったが、朝輝邸の地下のイメージは思っていた地下のと合っているようないないような…。そこは、綺麗な普通の家の部分と、映画で見た地下牢のような石造りの冷たく武骨な空間に別れていた。


そこに行くには、朝輝の部屋からしか行けないらしい。


三階にある朝輝の部屋の寝室にある隠し扉を通ると、なんとドア1枚で直接地下に繋がっている。


沙也香がハッキリと魔術を目の当たりにした瞬間であった。

「沙也香様の適性がわかりました。属性は水、適合魔術はルーンです」


何やら椅子に座らされ、白雪に良くわからないことをいくつかされていた沙也香であったが、どうやら結果がでたらしい。


ルーンとか聞いてもまったくわからない沙也香。


この部屋はこのイス以外に何もなく、石の床に白い天井と白い床というかなり殺風景なもので、なぜかその殺風景さが、沙也香には非日常的な空間に思えた。


朝輝はと言うと、白い壁にもたれかかってケータイなんかいじっている。


ここは地下でも電波が良いらしい。


シュカッ


と言う音を立て、朝輝がスライド式ケータイを閉じた。


「ルーンか。まぁ、それなら僕にも教えられる」


ケータイをポケットに仕舞いながら朝輝が壁から背中を離す。


「ルーン…って、何?」


聞き慣れない単語なのは仕方のないことではあるが、なんとなく宿題を忘れてしまったようなちょっとした恥ずかしさを感じつつ、沙也香が聞いた。


「ルーンってのは北欧発祥の文字でね、1つ1つが複数の意味と力を持ってるんだよ。だから今から九条さんがするお勉強は、ルーンの意味を全部覚えて使いこなすことだね」


暗記が苦手な沙也香は少し手に汗をかいてきた。


更に朝輝が、


「まぁ、漢文の重要漢字と同じように覚えれば大丈夫だよ」


漢文が苦手な沙也香に余計な追い討ちをかけたのであった。

「がっ、頑張りますッ!!」


これより沙也香の魔術生活が始まる。




む~…魔術って難しい

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