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ChocolateDragon  作者: 珈琲屋
12/16

8

やっとこさ更新…

食事の後、沙也香が退室し、朝輝はソファーに身を沈めて適当に付けたテレビ番組を見ていた。


「み〜ぃ」


そんな朝輝の膝の上で真っ白い子猫が、まだ歯のない口で朝輝の指をもぐもぐしたりしてじゃれている。


いつもの、とても穏やかな時間であった。


「くすぐったいよ。結〜」


無邪気にじゃれている子猫を持て余し気味の朝輝。

…しかし、なんの前触れもなく唐突に朝輝の表情が変わる。

「くっふふっ…」


別にテレビ番組が面白かった訳ではなかった。 その証拠に…


「あぁ…どんなゲームになるんだろうなァ」


朝輝の表情が引き裂いていた。


鬼を滅殺した時に浮かべていたそれと同じ表情。


愉しくて愉しくて堪らないといった、狂喜の笑み。


「もうすぐ“謹慎”も解ける」


背中に刻まれた7つの呪縛のうち6つ消え、残り1つも後ちょっとで消える。


「サタンと他の“参加者”…殺し応えがあるやつならいいねぇ」


「朝輝、朝輝」


そんな狂気に捕らわれていた魔術師の名を、いつの間にか少女へと変化した結が、優しく呼ぶ。


「だめじゃ、朝輝。狂気に捕らわれるな」


愛らしい姿の少女が、朝輝の前にちょこんと座り、朝輝を諭すようにじっと目を見つめていた。


「ん、ああ。ごめん結…」


正気に戻り、そういって結の頭をなでなでしてやる。


「朝輝…ッ」


突然に結が前にのめって、真っ正面からぎゅっとしてきた。


「ど、どうしたの?」


少女の姿の時はいつもは後ろからしかくっ付いて来ないのに。

故に朝輝はちょっと驚いていた。


結の黒曜石のような美しい黒髪から、花の蜜のような甘やかな香りが鼻孔をくすぐる。


「妾は怖い…」


「な…なにが?」


久しぶりだった。


結が怯えているなんて、初めて出会い、朝輝が結を助けたあの時以来である。


「朝輝が…朝輝がいなくなってしまいそうで怖い…」


朝輝の体を締め付けるか細い腕だけでなく、結の全身から震えが伝わってきた。

「大丈夫だよ、結。僕はドコにも行かないよ?」


「あの女のせいじゃ…」


「あの女って…九条さん?」


「それ以外に誰がいる!!」


朝輝の肩の辺りに顔を埋めていた結が不意に顔をあげた。


「結…」


結は泣いていた。


麗しい瞳から透明の雫がはらはらと零れている。


「妾は朝輝と一緒にいたい!!これからもいつまでもッ」


「…大丈夫だってば。僕はどこにも行かないって言ったでしょう?」


「約束できるか…?」


「もちろん」


そう言って朝輝は何時ものように微笑んだ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


場面は移り、中国の上海


夜の帳が降りてはいるが、ここ上海の街中は煌々とした雑多な光に包まれていた。


と言っても、光が届かない所は世界中の何処にでもあるわけで、東京だろうが、ニューヨークだろうが、道を1本外れるだけで雰囲気は驚くほど変わる。


そんなほの暗く、薄汚れた細い裏道を、1ペアの若い男女が人目を忍ぶように進んでいた。


見る人よっては、駆け落ち中のようにも、ただの逃亡者のようにも見える光景。

確かに2人には明確な目的があった。

ただしそれは駆け落ちでも、逃亡でもない。


「竜が力を取り戻す前にまず竜を狩る」


「その“竜”が日本にいるのは確かなの?」


「お前はまだ“こっち”の世界に来たばかりだから知らないのはしょうがないが、ヤツは日本にいる」


「竜になんて…勝てるの?」


「勝つさ。勝ってお前を解放し、俺は俺をバカにした奴らを見返してやる」


「…あんたのそーゆーとこ嫌い」


右手で自分の手を引き、左肩に荷物を引き下げて裏道を急ぐ少年の後頭部に向けて少女が言う。


「あたしだって戦うからねッ」


コイツに任せるのがイヤなのは、コイツが幼なじみだからだけではない。


確かに幼なじみのコイツに守られると言うのは、プライドが許さないが、それ以上に…


「…あたしの為に戦って死んだりしないでよね、後味悪いから」


きっとコイツはあたしを守る為に無茶をするから。


「俺は俺のやりたいようにやるだけだ」

こちらを振り向きもせずに、ずんずん進んで行く少年。


「そ、それに!!あたしはまだ許してないんだからね!!」


「俺がなんかしたかよ?」


「あんたが手品師だか魔術師だったってのをあたしに隠してたこと…許してないんだからね」


あーわかったわかった。


と適当に答える少年と、少年に手を引かれ、ちょっとふくれっ面の少女が、自分たちの運命を賭けた戦いに身を投じようとしていた。


そして薄暗闇の中、ダイヤの欠片が少女の首元で揺れている。




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