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ChocolateDragon  作者: 珈琲屋
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久々の更新…な気がしますね…

「はぁ〜…」


白雪に間取りなどの一通りの説明を受け、広い部屋に1人取り残された沙也香が溜め息を吐いた。


今日からここで暮らす…


なんだか現実味がない。


リビングにある、フカフカな黒いソファーにボスッと身を沈め、ぼんやり。


美香も用事があると、とっくに帰ってしまい、暫くは家族にすら会えそうにない。


でも…


朝輝君は私を家族だって言ってくれた。

あの言葉は効いた。

あの時に不安で不安で仕方なかった沙也香の心に、微かだが暖かな明かりが灯ったのだから。


「頑張らなくちゃ」


明日から魔法のお勉強らしい。


魔法のお勉強って何するんだろ…


それを考え、あれこれ妄想していると何だか楽しくなって来てしまった。


恋には奥手だが、基本的にはポジティブ思考な沙也香である。

「そ・れ・にぃ〜!!」


朝輝君の家だよ!!

これってドーセー!?

朝輝君と1つ屋根の下!!


それにこの部屋の隣が朝輝の部屋である。


「朝輝君に“まほー”のお勉強を教えて貰うなんて…」


思わずソファーに付属のクッションを抱きしめてジタバタする。


「…そういえば夕ご飯になったら呼ぶって白雪さんが言ってた」


ジタバタし終わって不意に冷静になったらお腹空いていることに気が付いた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「はぁ〜…」


自室の白いソファーにドサッと倒れた朝輝が深々と溜め息を吐いた。


「みぃ〜」


うつ伏せに倒れた朝輝の背中に、ちっこい白い子猫がひょいっと乗って来た。


むすびがそのまま朝輝の背中でゴロゴロし始める。


「結〜、夕飯何だろうね。今日はリクエストし忘れたけど黒江さんなら九条さんの歓迎会の準備は抜かりないだろね〜」


朝輝が伸びたまま結に言う。


すると ―


「うっぐ!?…僕の上でいきなり姿変えるのやめてって言ったでしょ…」


ふやけている時に、背中に乗っているモノの重量がいきなり増大したらそりゃあ苦しい。


「妾は認めぬ」


声と共にふぁさり、と緩く波打つ漆黒の長髪が一房、朝輝の横顔にかかる。


「九条さんに意地悪しちゃだめだよ?」


朝輝が少し顔を上げて言う。


顔を上げると、美しい長髪から花の蜜のような甘くていい香りがした。


「認めぬったら認めぬ!!あやつが朝輝の主人だと?ぬかせ!!」


朝輝の背中で駄々をこねているのは、膝辺りまである、緩く波打つ漆黒のおかっぱ長髪に、今からお祭りでも行くのかというような、水色の生地に金魚柄の可愛らしい浴衣を着た、朝輝や沙也香と同い年くらいの少女であった。


「朝輝は妾だけの所有物モノじゃ…」


そう言って結が背中からギュッと抱きついてくる。


「あの…そろそろ降りてくれない?」


「嫌じゃ」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


リンリン と沙也香の部屋にあるインターフォンが、控え目な音をたてた。


そう。朝輝の家の各部屋にはインターフォンが着いている。


寝室にいる場合などに、廊下からのノックに気づかないからだ。


「はい」


する事も思い浮かばず、ソファーに座ってデッカい液晶テレビで旅番組を見ていた沙也香が、立ち上がってドアを開けた。


「沙也香様、ディナーの用意が整いました」


相変わらず無表情な白雪が静かに告げる。


「あっ、すいませんわざわざ」


いいえ、と答える白雪。


やっぱり白雪さんは背が高いな〜。


それにしても…ディ、ディナーですか…


少なくとも沙也香の家では外食する以外で使うことなんか無い単語だった。


「それでは此方へ」


白雪が案内するのは朝輝の部屋…


ドキドキしてきた沙也香。


白雪が、沙也香の部屋と同じ作りのドアの横にあるインターフォンを押した。


どうぞ〜、と朝輝の声。


沙也香はその声で一瞬だけ心臓が痛くなった。


白雪が静かにドアを開け、どうぞと沙也香を促す。


「あ、はい。ありがとうございます」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


入ってみると、そこは沙也香の部屋と全く同じ作りの部屋であった。


細かい所は違うが、大差ない。


朝輝はリビングにある、6人掛けのテーブルに着いていた。

しかし ―


「あっ、は…初めまして!!」


知らない女の子が朝輝の隣に座っていた。


金魚がらの浴衣を着た髪の長い可愛らしい女の子。


沙也香はかなり動揺した。


だ…誰!?


まさか朝輝君の彼女とか…?


さっきまでいなかったのに…


しかも、その女の子は、スゴく嫌そうな目で沙也香を見ていた。


「九条さん、初めましてじゃないよ」


朝輝がふふっと笑った。


「えっ?」


こんな娘知らないよ?


「結だよ」


えっ? どゆこと?


「結ちゃんて…子猫ちゃんじゃないの?」


思わず震える声で聞き返す。


「ふん、物わかりの悪いヤツじゃ」


相変わらず嫌そうな目で此方を見ていた少女が口を開いた。


その声は…


「あ…」


今日の昼間、結に引っかかれた時に聞いた声であった。


「言っておくが、」


と結が沙也香に更に厳しい表情を向ける。


「妾はお主を認めてはおらぬ」


まさか私嫌われてる?


「それに、これがイチバン大事じゃが」


こら、結!


という朝輝の注意を聞かず、


「朝輝は妾のモノ…お主などには渡さぬ」


えぇ〜!?


まさか…朝輝君のこ、ここ恋人ぉ〜!?


ショックで固まってしまった沙也香に、疲れた表情の朝輝が溜め息混じりに言う。


「九条さん。化け猫の戯れ言なんか無視していいよ」


にゃ、にゃんだと!!

と朝輝に向き直った結が喚く。


あ〜、はいはい。


と結を適当にあしらう朝輝。


「九条さん。こちらへどうぞ」


と立ち上がった朝輝が、正面の席の椅子を引いてくれた。


「あ、ありがとう」


むぅ!!そんな女に構うな朝輝!!


部屋中に結の声が響いていた。


「誤解しないでね九条さん」


正面に座った朝輝が、疲れたような苦笑いを浮かべていた。

「この結は恋人でも何でもなくて、」


あぁ…良かった。

少し安心して、体が軽くなった気がした。


「ただの居候の神様だから」


「え?…えぇ〜!?」


今度は思わず叫んでしまった沙也香であった。


「そうじゃ!!妾は神ぞ。この家に居たくば、畏れ敬え奉れ!!」


平伏せ〜!!


と立ち上がり、胸を張って声高に叫ぶ結。


「…居候のクセに」


隣で朝輝がボソッと呟いた。


「ごめんね九条さん」


「う、うぅん…」


か、神様…


神様と一緒に住むのか…


早くも(魔術の話し抜きで)波乱の予感のする沙也香であった。


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