ノールエレメンタルマテリアル-金髪のライバルと戦う
「ふっはっはぁ!!! またわたしの勝ちだぁ!!!」
私は今、土の上に仰向けに腰を付いていた。
そして、目の前で仁王立ちして嫌らしい笑みを顔面に貼り付けた、類稀に恵まれた容貌の金髪碧眼の美女に、首筋に模擬剣の切っ先を向けられている。
「うぅぅぅ!!!もっ!もう一回よぉ!まだ完全に負けたわけじゃない!まぐれよ!こんなの!」
「あらあら、負け惜しみなんてぇ~、情けないんだぁ~」
「くっぅぅう!!!!」
動けない状況下で盛大に全力で調子に乗った彼女の挑発、私は何も出来ない悔しさに思わず涙が込み上げてきた。
「きゃっはっはっはっはぁあああ!!!!涙目になっちゃったねぇ!!ねぇねぇ!!今どんな気持ちねぇ!どんな気持ちなのぉ??!!」
「あぁううぅ、、、」
ぽろぽろ、あまりの悔しさに涙腺が決壊、というよりぶっ壊されて、泣いてしまった、うぇ、泣きたくなんてなかったのに、こんな最低な、くそゴミみたいな奴の目の前で、、。
「ふぅ、、あなたなんて素晴らしいの!ヘイゼがこんな可愛い女の子なんてぇ、誰が知っているんでしょおぉ!」
顔を紅潮させて、息をなぜか先程の戦闘時よりも荒くしている、意味不明女が憎らしくて目の前が紅に染まっていった。
「おいおい!! なに怖い顔してんだよ!」
模擬剣を放り捨てて、瞬間的に私の胸に飛び込んできた。
むぎゅっと、柔らかくって幸せな感覚?
「やめろぉ!! 私に触るな!ていうか馴れ馴れしいんだよぉ!」
「いいじゃないかぁ!はぁはぁ! 私とお前の仲だろうがぁ!」
喜び溢れるような顔が嫌いだ、意味不明なテンションで迫ってくるのは、ある意味の生理的嫌悪すらある。
だが、彼女の戦闘で乱れたのか、チラチラと見える胸元や真っ白な太腿とかその他色々、それには自然と目が行ってしまう。
興奮なんてしたくないのに、悲しいくらいに鼻息とかが気になってしまうくらい乱れた。
「いやぁ!!!離してよぉ!」
「はっはっは!嫌よ嫌よも好きのうちだ! キスしてやっちゃうぞぉ!!」
「ああぁ、、ホントやめてよぉ」
ノリでキスしてこようとする女を全力で突き放す。
キスの形にした唇が堪らなく気になる、綺麗過ぎる整った顔に見惚れそうになる。
その後、なんやかんやで彼女、シャルロッテの魔の手から逃れた、もう一生関わらない事を誓った。
「やぁ、さっきぶり」
「、、、、「どこ行くんだい? 我が盟友よ」離しなさい!きらいきらいきらい!!!」
仲の良い友達のように、自然な動作で回り込まれて、肩をガッチリと組まれてしまう。
顔を寄せられて耳元で囁くように言われ、背筋が凍りつくような感覚、その一瞬後、熱病を疑うほどに顔も身体も瞬間的に沸騰した、もういやだ。
「ほれほれ、昼食食べにきたんでしょ、一緒に食べようや」
「嫌だって言ってるでしょうがぁ!!!うがぁ!!!はー!なー!せぇええええ!!!」
「はいはいツンデレ乙ツンデレ乙っと」
そのまま食堂のおばちゃんに醜態を晒しながら勝手に注文されて、その流れでそのまま二人席の対面に座らされてしまう。
「さよなら!」
席を瞬間的に立とうとすると、立ち上がった瞬間に声。
「ああ逃げるのか、期末テストの話でもしたかったのだがな」
「なっ、なんですってぇ、、」
「まあまあ、座りたまえ、じっくり話でもしようじゃないか」
とりあえず座ることにする、逃げるのかとか言われて、挑発に応じたわけじゃ決してないが、テストの話が気になったのだ。
「で、なによ、テストがなんだって」
「わたしのライバルも堕ちたものだな、もちろん負けた時の罰ゲームでも、君に決めてもらおうって話だよ」
「ふっふ、馬鹿は貴方よ、」
「へぇー、今回は自信があるんだ、で? どうする?」
「その勝負受けるわ」
「そう、じゃー罰ゲームどうする?」
「負けた方は勝った方の下僕になる、もちろん一生ね」
「正気? 君はもっと理性的になるべきだね、せいぜい相手の足を舐めるとかが、いいんじゃないかな、あああと素足だよ、当然だと思うけどね」
「ふっなに? もしかして、怖いの?」
さっきとは逆に、冷徹な視線で見下すように見る。
「その異様な自信はなんだろうか、ちょっとイラっときちゃうなぁー」
「ぅっ!!」
睨むような視線に、ちょっと怯える。
だって単純な腕力では相手が上だ、その気になったら彼女にエロ同人漫画みたいに酷い目にだってなんだってされてしまうのだ、しょうがない。
「なによぉ、怖い顔してぇ、いつものハネッ返りの悪餓鬼みたいな、貴方らしくないわよぉ」
「うふ♪、馬鹿だなぁー、冗談だよ、冗談、えっへっへぇー、怖かったのかなぁ?」
「ふっふん! 怖くなんてないんだから!変な勘違いしないでぇ」
「あっは、可愛い反応! 打って鳴る楽器のようなヘイゼを、奴隷のように扱えたら、きっと果てなく素晴らしいんだろうねぇ!」
「はん! 勝つのは私よ」
「いいや、どう考えてもわたしだね」
その後、テスト結果が返ってきた。
私は勝ちを確信し、意気揚々と自室に彼女を招待した。
「いらっしゃい、今日は存分にくつろぎなさい、最後の晩餐みたいなものよ」
「あは、ヘイゼから誘ってくれるなんて、今日はやる気満々だね」
「そうよ、今日は積年の恨みを晴らせる、またとない機会だもの」
彼女の涙顔を想像して、掛け値なしに歓喜に身体が震えた、変態チックだが、もう抑え切れそうにない。
「くっくっく、今日から私が神よ、跪きなさい」
「いろいろと早いよ、まずは結果発表でしょうが」
「その必要すらないわ、見なさい、神の領域に至った、人間の真価を」
私は優雅に、十二枚の紙ペラを広げて、扇子を靡かせる様に翳す。
その横上に表示された数字だけが見えるように、それぞれを均等にズラしながら掲示したのだ。
「へぇー、流石だねー」
「はぁっ!そんな澄ました態度も!今日で終わりよ!一生拭いきれない醜態さらしてもらうんだからぁ!覚悟なさい!」
「あーだから尚早なんだって、これ見てね」
彼女は鞄から紙束を出して、私と同じように見せる。
それは私と同じで全て満点、、いや、満点っ??!!! いやいや!!これは満点かぁ!???
「あはっ気づいたね」
「、、、、ちょっと、急用オモイダシタヨ、それじゃあワタシハ行くよ、それじゃあね」
脱兎の如く、馬鹿みたいに一歩盛大に跳ね上がりながら逃げようとするが、玄関に着く暇も無く、自室の扉前で捕まってズルズル引き戻されてしまった。
「逃げない逃げない往生際が悪いよ、とりま、しなくてもいい説明くらいはしようか、いわゆる勝ち誇りタイムだね!」
「しなくていい!しなくていい!!」
「そうだよね!ただ常軌を逸して素晴らしすぎる解答に、100点超えて加点されてるだけだもんねぇ!」
その後、世にも語るに恐ろしい、あーなんだ、羞恥的な事をされた、それだけだ、もうほんとねえ、死にたくなったよ。
「おっはよぉ!!!今日も元気に一日を始めようじゃないかぁ!あっははっはっはぁあああ!!!」
「うるせえやい、死んじゃえよ、もお」
次の日、妙に活き活きと艶々(ツヤツヤ)した彼女がいた。
きっと私から生命力を吸い取ったからだ、人間の尊厳とかプライドとか、人間が生きる為には必要な大事なモノをだ。
「くそくそ、しねっしねぇ」
「何言ってるのかなぁ? 小さすぎて聞こえないよぉ~」
「うわぁ!!! 近い!! 近すぎて死ねるぅ!!」
またも自然な動作で肩を組んでくる、豪奢なサラサラふんわり髪の毛から良い匂いがして駄目になるぅううう!
「あ、そういえば」
そんな彼女の口上だけで、私の危機管理意識が警鐘を鳴らした、脱兎の如くだ、逃げ出すんだぁ!
「それじゃねぇえええ!! さらばぁ!!!!」
「あっはっはぁ!!キャラ変わって過ぎるよぉ!待て待てぇ!!!」
またも昇降口に着く暇すらない、学校の校門ぜんぜん前で首根っこ捕まえられた。
「うえぇぇ、やだよぉー、もう死んじゃうんだぁーわたしはぁー、、、」
猫被って縋るような目をしてみる、捨てられてダンボールに入った子猫ちゃんみたいな哀れ味漂う哀愁で慈悲を狙う。
「はいはい可愛いですねぇー、でっ、本題だけど昨日の奴隷扱いって、確か一生だったような」
「、、、、リ」
「リ?」
「リベンジダァ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「あきゃきゃっきゃ! 流石わたしのライバルだ! なんど土を舐めても立ち上がるぅ! その強情さと不屈の精神に憧れ惚れちゃうよぉ!」
「うるさい! 私は私の誇りを必ず取り戻す! そして貴方を泣かせてやるんだ! 絶対にだ!」
「あっは!いいねぇ!良い啖呵だ!やれるものならやってみてくれぇ! 今凄く面白いよ!」
こちらの心情を知らないか、あはあは大笑いしながら余裕しゃくしゃくの彼女を怨敵と再認識した。
その後、来世も奴隷になるとか、世界観を超越する提案に彼女が乗った、馬鹿だと思ったが、好機なので乗ることにした。
「ふ、今度こそ、私が勝つ、そして勝利の歴史が刻まれる、その礎として、屍を晒せよシャル」
「はいはい、で、何をするのさ?」
「これよぉ!!」
既に目の前にある、人一人が入れる二つの箱を示す。
「高機能エミュレーター装置、これで、一体なにをするつもりなんだい」
「機動兵器戦よ!」
「あっはっは、わたしにそれで戦いを挑むなんて、なんて勇敢なんだ、まさに勇者だよ君はぁ!!」
「えっ、もしかして、、、強いの?」
私はコレの腕を幼い頃から、趣味もあって鍛えて磨き抜いていたのだ。
まさか彼女がそれを上回るなんて思っていない、なぜなら彼女は全てで私を上回るオールラウンダーな反則天才なのだから。
「自慢じゃないけど、宇宙空戦技能ランク+SSSだけど、なにか?」
「最高ランクじゃないの、、それ」
もちろんボロ負けしました、戦闘描写するのも憚られる、酷い惨敗で、私は心が軋むほどに悲しんだ。
「うぇくひっくうぇ、私が一番上手く乗れるって、信じてたのに、得意分野だったのにぃ、そう思っていたのにぃ、ひっくえんえん」
エミュレート装置の傍ら、しゃがみ込んで小さくなっていると、上方から何か振ってきた。
「いたぁ!!」
「あっはははは!! 流石わたしのライバルだ! あんなに複雑な機動を要したのは初めてだよ!強いね!ヘイゼは!」
その輝ける笑みを向けられて、とたんに恥ずかしくなった。
彼女は何を言っているのだ、実力差は歴然だった、複雑な機動て、私は一度も剣を当てられなかったのに、掠りもしなかったのに、、。
「ふはふは、そんなに気落ちするなよ、ヘイゼは強いぜ、そうだよなぁ!!こんな所で諦めるような奴じゃないよなぁ!」
しゃがみ込んで、わたしと同じ視線で瞳を覗き込もうとしてくる。
私は彼女のキラキラした瞳を見たくなくて、思いっきり瞳を下方横に逸らそうとするが、それすら阻止されて頭を固定されてしまった。
「なあなあ、どうよぉ? そこらへん?」
「うっく、ひっく、うぇ、はっへぇ、うぅぅぅ、、、」
弱ったところに威圧的な事をされて、息が苦しくてあへあへしてしまう。
「この程度で根を上げるのか? わたしに手篭めにされて、良い様に扱われたいのか? ああぁ??」
傲慢な瞳、そのくせ、誰よりも純粋で純真な、複雑に矛盾を孕む印象を併せ持つ姿。
嫉妬と憎悪で頭が可笑しくなって、私の中で幾らか分かったもんじゃない、沢山の何かが切れた音がした。
「うがぁわぁあああああああああ!!負けない負けない!あなただけはわたしがぶっつぶすんだぁ!!!!!!!!!」
「いよっしゃぁ!!!!よく言ったぁ!!!それでこそヘイゼだぁ!!!」
右ストレートをぶっ放して、乱闘が始まった。
「ふが、ふが」
何か喋りたいが、言葉にならない。
取っ組み合いで喧嘩して、一方的にやられた、女の子なのに顔がアンパンマンみたいになってるカッコ悪過ぎる私を今すぐ殺して無くしたい。
「あっはっは、まるで某国民的菓子パンヒーローみたいだよ、ヘイゼ」
とか言いながら、私の頬を引っ張って、ひちぎろうとする、てぇやめろやめろマジでひきちぎれるつぅーのぉ!!!!
「どうよ? わたしのライバルは楽しいだろ?」
「ひるか」
「昼じゃないよ、もう夜だよ!」
彼女の言いたい事は分からない。
私なんかじゃ、彼女の好敵手に足りえないだろう、それなのに、こんなにも満足そうな顔をしているのだろうか。
その日は何も話せなかったので次の日。
「あれ、もう直ったんだ、流石だぁ!それでこそ不死身の亡者ヘイゼ!」
「はあ、最新医療の賜物よ」
「なにか言いたそうだね」
「良く分かるわね、天才なんじゃないの?」
「そうとも! わたしは掛け値なしのスーパーウルトラ超天才だぁ!!」
その言葉は確信に満ち溢れていた、それがハッタリになりえない、それだけの純然たる実力を持っているから宿る言の葉の迫力だ。
私にはそんなモノ無い。
己の無力さを痛感していた、少しでも努力して、せめて秀才足ろうと、そうしているだけなのだ。
「さてさて、今日はどうやって、わたしを倒すつもりなのかな??ええ??」
それでも、、それでもだ。
「ああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」
魂の咆哮だった。
私を私足らしめる本質、アイデンティティを揺らす、常に己の命の危機的状況を演出してくれるのだ! この女わぁあああ!!!
「おらぁ!!こいや!!昨日のリベンジダァ!機動兵器戦だ!!」
「もうキャラの原型無いね! だがそこがいいぃ!!」
ふざけた笑顔でにしにし笑いながら、へらへら両手を後頭部に回して着いてくる。
あはは、面白いなぁ、この女は、絶対に負かした時面白くなる、その確信がある、ずっとずっと夢見て、あるかどうか分からない希望を幻視させてくれる。
さて、昨日の内に、エミュレータに細工をして、彼女の機体が一世代前の旧世代機になっているのだが、果たして私は勝てるのだろうか?
しょうじきそれは、きっとギリギリの勝負になる予感があった。
どうしても勝ちたい私の執念、怨念とも呼べるソレは、彼女を負かす為の運命を何時かは引くに足るだろう。
無限に湧き出るような絶対で巨大な精神、祈りとも願望とも呼ばれるソレは、因果を捻じに捻じ曲げて曲げ切って、か細過ぎる奇跡すらも可能にすると、私は信じるのだから。




