連邦中央士官学校物語
「遊びでやってんじゃねぇーぞぉ! ぶっ飛ばすぞこらぁ!」
「うぇ、遊びでやってないよぉ、全力だよ」
もう、どれくらい走ったか分からない、疲れて疲れて死んでしまいそう。
「疲れたね、マティちゃん」
「うん? そう?」
全然疲れてなさそう。
ぴょんぴょん跳ねて、まだまだいける事をアピールしてるみたいだし。
「キアラてめぇ、まったく体力ねぇーじゃねーかオラ、舐めてんのか!」
「うぅ、ごめんなさいぃ、、ローザ」
「お前はわたし自らが補習と称して苛めてやるから、ありがたく思えよ」
「ひぃっ! た、助けてマティちゃん!!!」
傍らで事態を見守る親友に泣きつく。
「あっはっは、冗談だよ冗談。 ねぇ? ローザ」
「冗談じゃないぞ、たっぷり苛めて、反骨心を鍛えようと本気で思っているしぃ」
あはは彼女の瞳、酷くサディスティックな光を放っている、それが今、私に向けられてんだぁ、、、。
「やっ!、やだよぉ!うえーんんん!!」
私は逃げた、逃げに逃げて、図書室に隠れた、隅の隅で小さく震えて蹲るようにしている。
「あれ? もしかして、キアラちゃん?」
「うぅ、、シミト」
赤髪の青年が心配げな目を向けてくれていた。
「なるほど、訓練が厳しいんだ」
「うん、死んじゃいそうなんだぁ、、、」
図書室の隅の隅の机で向き合って、私は弱音を吐ききった、なんとなく気分が軽くなった。
「キアラちゃんは、もう訓練やめちゃうの?」
「うぅ、、やめたくないよぉ、、だって、みんなの役に立ちたいモン、、けど、、、」
「耐えられない?」
「うぅ、、」
そんな風に話していると、私達の方へ近づいてくる人がいた。
「やあやあ、何やってるのかな? シミトにキアラちゃん」
「うん、イルド、ちょっとキアラちゃんの相談に乗ってるんだ」
「そうなのぉ? だったら僕も仲間に入れてよぉ」
対面のシミトの隣に座るイルド、茶髪の好青年は今日も明るく爽やかな出で立ちだ。
「セクシーというより、キュートガールなキアラちゃんは、何を悩んでいるのかな?」
「うぅ、訓練がきつくて、逃げ出したくなっちゃってぇ、、、」
「あっはは、逃げたくなったら、逃げてもいいんだよ、自分のペースでやる以外に、手なんか無いんだから」
「でも、ローザは、そんなの許してくれなくてぇ、、」
「うーん、そうかぁー、誰かに強制的に引っ張ってもらうってのも、時には必要な場合もあるんだけど、今回はどうなんだろぉ、、」
「俺はキアラちゃんに無理させたくないな、本人の頑張り方に任せて、もっと優しくするべきだと思う」
そのとき、大げさに図書室の入り口が開く音がして、見慣れた二人が入ってきて、直ぐにこちらに来た。
「おい! キアラ!」
「キアラちゃん、ローザが、、、」
ローザとマティである。
「丁度いいところに来たね、話があるよ」
「うんうん、そうだそうだ、僕もあるぜ」
「シミトにイルド、貴方達、キアラを甘やかして、猫みたいに可愛がってたんでしょぉ?」
「だったら、なんなのかな?」
「その子には、絶望が必要なのよ、私が教えてあげるのよ」
私に向けて言っている、さっきの瞳で。
「ひぃっ、ローザ、やめてぇ、、」
「こんなに怯えさせて、ローザ、君のやり方は間違えているよ」
「間違えているのは、貴方達、戦場で、彼女を死なせたいの?」
「それとこれとは、話が別だろう」
「別なモンですか。
第一、弱ければ、その分他の人が割を食って、死ぬ危険性だってあるのよ? その現実から目を背けてない?」
「なんか殺伐とした話してるね、キアラはそこまでしないとダメなの?」
「イルド、それじゃ聞くけど、貴方は何ができるの?」
「僕は僕のできることができるよ」
「それじゃ、協力しなさい、キアラを強くする為に」
「ちょっと待て、イルド、お前、ローザに味方するつもりか?」
「そうとは言ってないけど、話くらいは聞いてみようかと」
そのとき、私の傍らに立っていたマティが「あぁーー」と呻いた、と思ったら次の瞬間、盛大に鳴き声を発した。
「あああぁぁぁ!!!ぅぅうううううう!!!」
「うげぇ! マティ! どうしたのぉ! くるしいよぉ!」
「なんでキアラちゃんが、こんな! かわいそうだよぉ!」
みんなに向けて宣言するように言う。
「確かに可愛そうね、でもしょうがないのよ、それが現実よ」
「ローザ、お前は厳しすぎる、もっと優しくできないのか?」
「わたし、これでも誰よりも優しいつもりよ、だから厳しくもできるの、貴方と違って」
ローザの台詞に一理あったからか、シミトが押し黙らされてしまう。
「僕は、別の方法はないかって思うよ」
「ないわ、この残酷な方法が、一番賢明なのよ」
「超一流のローザが言うなら、間違ってないと信じれるのかな? この場合?」
「ええ、私のやることに間違いは無い。
あったとしても、他人のそれより数十倍もマシで、もちろん成功すれば、当然の報酬がある」
「仮に失敗したら、どうなるの?」
「キアラがトラウマ抱えることになるわね」
またも私に怖い目を向けてきた、てかあなた、なんでそこで舌なめずりしますかぁ、、。
「ただそれだけで、何も得られない形でね。
まあ安心なさい、これは最悪最低のパターンの話よ」
「俺は、本人の意志を尊重しないとダメだと思うな。
キアラちゃん、君はどうしたいんだい?」
「うぅぅ、、わたしは、、、」
「私と来なさい、キアラ。
誰よりも優しく、貴方に色々と教えてあげるわ、そう、いろいろとね」
その場では色々あったけど、結局、結論はこれでした。




