いつもの朝
第1話
BEEP... BEEP... BEEP...
BEEP-BEEP-BEEP!
チュン...チュン……
外から聞こえる鳥の鳴き声と、鳴り響く目覚まし時計の音が混ざり合っていた。
キヨシは突然、目を開けた。
朝の日差しが静かに部屋の中へ差し込んでいた。
どうやら今日は、穏やかな一日になりそうだった。
彼は数秒間、天井を見つめてから、ゆっくりと上体を起こした。
「……今日は学校かよ。はぁ……もう少し寝たいな」
疲れたようにため息をつきながら、
キヨシはベッドから起き上がった。
まだ十五歳だったが、彼はすでに、ほとんどのことを自分一人でこなすことに慣れていた。
一階の浴室で風呂に入り、それから部屋へ戻って制服に着替える。
学校のネクタイには苦戦した。
「……なんでこれ、こんなに難しいんだ?」
何度か失敗したあと、ようやくネクタイを締めることができた。
鏡で一度だけ自分の姿を確認してから、部屋を出た。
部屋を出る。
階下から、
母親の話し声が聞こえてきた。
キヨシは階段の途中で足を止めた。
母、
「ほんっと、あのクズは……私たちのことなんてどうでもいいんだから! *私のことも、ユウトやサラのことも……どうして苦労するのは私だけなのよ――!*」
母親は電話をしていた。
また家族の問題について話し、父親への不満をこぼしている。
キヨシは階段の陰から、黙って話を聞いていた。
……また始まった。
彼はため息をついた。
しばらく聞いてから、キヨシはようやくキッチンへ入っていった。
「母さん、朝飯できてる?」
母親はキヨシをちらりと見た。
「話してるの、見れば分かるでしょ? パンでも食べなさい」
少し冷たい口調だった。
「……はいはい」
キヨシはパンを一枚取った。
パンを焼く機械の使い方がよく分からなかったので、そのまま食べることにした。
……まあ、いいか。
朝食を食べ終えると、学校のバッグを手に取った。
「じゃあ、母さん。学校行ってくる」
母親から返事はなかった。
キヨシはしばらく待った。
何もない。
静かにため息をつき、玄関のドアを開けた。
カチャ。
朝の空気が、外へ出た彼を迎えた。
キヨシは学校へ向かって歩き始めた。
数分後――
「おーーーい、キヨシィィィ!」
キヨシが振り返る。
セイイチが手を振りながら、追いつこうとこちらへ走ってきていた。
「待ってくれよ!」
キヨシはため息をついた。
*やっぱりな……*
ようやく追いついたセイイチは、キヨシの隣を歩き始めた。
「おはよう!」
「おはよう」
二人はそのまま一緒に学校へ向かった。
学校へ着くまで、話題はずっと*スティール・ビートル*のことだった。
セイイチは相変わらず興奮しながらゲームの話を続けていた。
昨夜、最強クラスのプレイヤーの一人を、あと少しで倒せそうだったことを熱心に説明している。
キヨシは静かに聞きながら、セイイチが反応を求めてこちらを見るたびに、短く返事をしていた。
気がつけば、学校の建物が見えてきた。
朝の校内はすでに慌ただしくなっていた。
生徒たちが廊下を行き交い、足音や話し声が建物中に響いている。
そのとき、ベルが鳴った。
**キーン――キーン――!**
セイイチがすぐに足を止めた。
「待て……一時間目、もう始まるんじゃないか?」
キヨシは教室のほうへ目を向けた。
「ああ」
二人とも、それ以上何も言う必要はなかった。
二人は急いで教室へ入った。
残念ながら、教室の入り口にはすでに誰かが待っていた。
数学教師の**山路先生**が、片手に教科書を持って立っていた。
キヨシは歩く速度を落とした。
*絶対、今回は怒られる……。*
遅刻してきた生徒を見つけた教師なら、いつものように怒った顔をするだろうと思っていた。
しかし、山路はただキヨシを見た。
「ああ、ユウト」
その表情が、少し柔らかくなった。
「もう少しで遅刻だったぞ」
キヨシは一瞬、少し驚いたように立ち止まった。
「まあいい。中に入れ」
二人は、彼が中に入れと言ったことで、ようやくほっとした。
教室へ入る途中、セイイチがキヨシのほうへ身を寄せ、囁いた。
「なあ……なんで先生、いつもお前には優しいんだ?」
キヨシは山路をちらりと見た。
「俺にも分からない」
「マジかよ? 俺だったら、五分くらい怒鳴られるぞ」
二人はいつもの席へ向かった。
キヨシは窓際の一番後ろの席に座り、セイイチはそのすぐ前の席に座った。
窓からは、下に広がる校庭が見えた。
朝の日差しが木々の間へ広がり始め、教室の中よりも外のほうがずっと面白そうに見えた。
しかし、その視線はすぐに現実へ引き戻された。
「よし、みんな」
山路は教科書を机の上に置いた。
「数学の教科書を出せ」
教室中から、一斉にため息が漏れた。
キヨシは教科書を開いた。
そして、一時間目が始まった。
数字と方程式が、ゆっくりと黒板を埋めていく。
教室は静かになり、鉛筆が紙を走る音と、ときどきページをめくる音だけが響いていた。
キヨシは集中しようとした。
本当に、集中しようとはしていた。
セイイチも、それほど上手くはいっていなかった。
時々、キヨシが見ると、セイイチはノートに何も書かず、ぼんやりと見つめていた。
*こいつ、寝るぞ。*
キヨシは思わず笑いそうになった。
やがて数学の授業が終わった。
しかし、まだまだ続きがある。
二時間目が終わった。
そして三時間目。
三時間目がようやく終わる頃には、キヨシには朝が何日も続いているように感じられた。
そして――
**キーン――キーン――キーン!**
ベルが鳴った。
しばらくの間、誰も動かなかった。
そして突然、教室が騒がしくなった。
椅子が床を擦る音とともに、生徒たちが立ち上がる。
話し声が教室いっぱいに広がり、何人かの生徒はすぐにドアへ向かっていった。
セイイチは安心したような表情で椅子を回し、キヨシのほうを向いた。
「やっと……休み時間だ」
キヨシは椅子にもたれた。
静かに息を吐く。
「ああ」
三時間の授業が終わった。
その朝、初めて二人には自由に過ごせる時間ができた。
セイイチはしばらくキヨシを見つめた。
「それで……何する?」
キヨシは窓のほうへ目を向けた。
「さあな」
セイイチはニヤリと笑った。
「じゃあ、考えようぜ」
キヨシはセイイチを見る。
どういうわけか、セイイチがこれから自分を何かに巻き込もうとしている気がした。
だが――
キヨシとセイイチが会話を続けようとした、そのとき。
近くから、椅子を引きずる音が聞こえてきた。
**ギィィィ――。**
二人が振り返る。
そこには、満面の笑みを浮かべた少年がこちらへ歩いてきていた。
授業が終わるこの瞬間を、ずっと待っていたらしい。
二人の机まで来ると、少年は大げさに両腕を広げた。
「よーーー! 俺の親友たちぃぃぃ!」
セイイチはすぐに笑
キヨシは、そんな彼をただ見つめて言った。
「お前、生きてたのか、サトウ!」
サトウは、まるで最初から誘われていたかのように椅子を引き寄せ、二人の隣に座った。
セイイチは彼を見て笑った。
「三時間の授業を生き延びたばかりなのに、元気すぎだろ」
「当たり前だろ!」
サトウは誇らしげに答えた。
「だって休み時間だぞ!」
キヨシは、そんな二人を静かに眺めていた。
教室はすでに騒がしくなり始めていたが、なぜかこの三人の周りだけは、他の誰よりも騒がしい。
キヨシはため息をついた。
*静かに休めると思ったのに。*
それでも、キヨシは二人と一緒にいる時間を楽しんでいた。
*……母さん、大丈夫かな……。*
[注:こんにちは! この部分は少し分かりにくいと感じる読者もいるかもしれません。今はプロローグのことは気にしないでください。
第1章は、キヨシと彼の友人たちが14歳だった頃、桜島中学校に通っていた時の物語です。
本編の時間軸は、キヨシが14歳の時から始まります。]




