Chapter 14
キヨシは目を覚ました。
しばらくの間、毛布の下で横になったまま、天井を見つめていた。
部屋は静かだった。
ゆっくりと体を起こし、目をこすってから窓のほうを見た。薄い朝の光がカーテン越しに差し込み、見慣れた家具や、机の横に置かれた通学カバンを照らしていた。
すべてが昨日と同じに見えた。
けれど、何もかもが変わってしまっていた。
ベッドから出て、居間へと向かった。
家の中は、いつも以上にきれいに片づいていた。床は掃除され、家具もきちんと並べ直されていた。両親の言い争いのあと、ずっと残っていた壊れた物もなくなっていた。
キヨシは玄関の近くで立ち止まった。
空っぽの部屋を、ゆっくりと見回す。
そして、ほとんど無意識のうちに呼びかけた。
「お、お母さん?」
静寂。
キヨシは待った。
もう、誰も返事をしてくれないことは分かっていた。
それでも、心のどこかでは、まだ母親の声が聞こえることを期待していた。
台所から声が聞こえてくるかもしれない。
どうしてこんなに早く起きたのかと尋ねられるかもしれない。
朝ご飯の前に顔を洗いなさい、と言われるかもしれない。
しかし、何も聞こえなかった。
キヨシはうつむいた。
十五歳のキヨシは、何か問題が起きても、いつも冷静でいられる人間だった。
簡単に慌てるような性格ではない。
困難な状況に直面しても、反応する前に、まず何が起きたのかを理解しようとしていた。
けれど、今回は違った。
母さん。
父さん。
サラ。
三人とも、もういない。
あまりにも突然の出来事だったため、彼の心はまだ現実を受け入れられずにいた。
たった一日前まで、友達と長野の町を歩き、廃校や昔の謎について悩んでいた。
それなのに今は――
帰るべき家族が、もういなかった。
外では、すでに近所の噂が広まり始めていた。
人々は死亡事件や警察の捜査について、そして長野に古くから伝わる話と、今回の悲劇が関係している可能性について、ひそひそと話していた。
誰もが、何か言いたいことを持っているようだった。
けれど、この家の中に立つことがどんな気持ちなのか、誰も分かっていなかった。
キヨシは窓のほうを向いた。
泣かなかった。
ただ、そこに立ち尽くし、これから自分が何をすればいいのかを理解しようとしていた。
その時、玄関のドアの鍵が回る音がした。
ドアが開いた。
祖母が、小さな袋を持って入ってきた。
ドアを閉め、靴を脱いでから、居間のほうを見た。
「あら、ユウ。起きていたのね」
落ち着いた声だった。
まるで、ちょっと買い物に出かけて、朝ご飯よりも早く起きた孫を見つけたかのようだった。
キヨシは祖母を見た。
「うん」
祖母は袋をテーブルに置き、家の中を見回した。
それから、キヨシのほうを向いた。
「話しておかなければならないことがあるの」
キヨシは黙っていた。
祖母の表情が、少しだけ真剣になった。
「準備ができたら、こっちに来て座りなさい」
そう言って、祖母は居間へ向かった。
キヨシはしばらく祖母を見つめてから、そのあとを追った。
二人は座ったあとも、しばらく何も話さなかった。
外では、まるで何も起きなかったかのように、朝が続いていた。
そして家の中では、難しい話が始まろうとしていた。
一方、その頃――
道路脇の排水溝を、雨水が勢いよく流れていた。
前日に降った激しい雨のせいで、道路はまだ濡れていた。水は狭いコンクリートの蓋の下を勢いよく流れ、ときどき落ち葉や小さなゴミを押し流していった。
セイイチは、うつむきながらサトの隣を歩いていた。
「ズズッ……」
サトはちらりと彼を見た。
数歩進む。
「ズズッ……ズズッ……」
「おーい」
セイイチは袖で鼻を拭いた。
「何だよ?」
「少しくらい泣くのをやめられないのか?」
「どうやってやめるんだよ……」セイイチは再び鼻をすすった。「スイッチみたいに簡単に切り替えられるわけじゃないんだぞ!」
サトは苛立ったようにため息をついた。
「俺だって悲しいんだぞ」
「じゃあ、何でやめろなんて言うんだよ?」
「お前のせいで、こっちまで余計につらくなるからだよ!」
セイイチは涙で潤んだ目でサトを見た。
一瞬、サトはまた言い返そうとした。
しかし、結局、目をそらした。
「くそっ……」
ポケットに手を突っ込む。
「キヨシがかわいそうだ……両親も、それにサラまで。一度に全員だぞ」
その声は、だんだん小さくなっていった。
二人はしばらく黙っていた。
勢いよく流れる水の音だけが、沈黙の間を満たしていた。
セイイチが再び鼻をすすった。
サトは彼のほうを向いた。
「おい、マジで――」
「泣くのを我慢しようとしてるんだよ!」
「俺はまだ何も言ってねえだろ!」
「言おうとしてただろ!」
サトは口を開き、それから閉じた。
「……もういい」
二人は言い合いをしていたが、どちらも昨日の出来事を忘れることはできなかった。
二人は何年もキヨシと一緒に過ごしてきた。
一緒に笑い、言い争い、数え切れないほどの午後を、くだらないことをして過ごした。
昨日まで、キヨシは二人の隣に立ち、廃校について話していた。
それなのに今日、彼は家族全員を失った。
サトは唾を飲み込んだ。
「せめて、あいつのそばにいてやろうぜ……」
小さくつぶやいた。
セイイチは頷いた。
「ああ」
二人は再び歩き始めた。
やがて、キヨシの家が見えてきた。
門に近づくにつれて、二人の歩く速度が落ちていった。
しばらくの間、どちらも何と言えばいいのか分からなかった。
やがて、サトがインターホンに手を伸ばした。
**ピンポーン!**
二人は待った。
何も起きなかった。
サトはもう一度押した。
**ピンポーン!**
それでも返事はなかった。
サトはドアを見つめ、それから両手を頭の後ろに回した。
「中で何してんだよ?」
セイイチは鼻をすすりながら、窓のほうを見た。
「おばあちゃんと話してるんじゃないか? 昨日のこともあるし、いろいろ話さなきゃいけないだろ――」
その時、玄関のドアが開いた。
キヨシが立っていた。
「ああ……セイイチ、サト」
落ち着いた声だった。
普段着を着ていて、寝起きなのか、髪はまだ少し乱れていた。
顔には、泣いたような跡もほとんど見られなかった。
まるで、以前から二人が知っているキヨシと同じようだった。
何も変わっていないかのように。
「よ、よう」とセイイチは、できるだけ普段どおりに聞こえるように言った。
サトも小さく頷いた。
「お前に会いに来たんだ」
「そうだと思った」
キヨシは一度家の中へ戻り、靴を履いてから玄関へ戻ってきた。
「おばあちゃん、ちょっと出かけてくる」
廊下の奥から祖母が姿を現した。
「分かったわ。遅くならないようにね。夕方には出発しなければならないから」
キヨシは頷いた。
「分かった」
友達のほうを向く。
「行こう」
三人は家を離れた。
しばらくの間、聞こえるのは足音と、靴が時折水たまりを踏む音だけだった。
セイイチは何度もキヨシをちらちらと見た。
大丈夫かと聞きたかった。
しかし、その質問はあまりにも失礼な気がした。
家族を失ったばかりの人間が、どうして大丈夫でいられるというのだろう。
代わりに、別のことを尋ねた。
「なあ、キヨシ。さっき、おばあちゃんが言ってたことなんだけど……」
キヨシは彼を見た。
「何のこと?」
「夕方には出発するって言ってただろ? どこへ行くんだ?」
サトも振り返った。
「ああ。俺も聞いたぞ」
キヨシは歩き続けた。
冷たい空気が三人の頬を撫でた。
雲はまだ長野の空を低く覆っており、道路には雨の跡が残っていた。
数秒後、キヨシが口を開いた。
「なあ、セイイチ。サト」
「ん?」とセイイチが答えた。
「どうやら……」
キヨシは少し言葉を止めた。
「おばあちゃんと一緒に、東京へ引っ越すことになりそうなんだ」
サトは足を止めた。
「え……?」
セイイチはつまずきそうになった。
「待てよ。何だって?」
キヨシは振り返った。
「おばあちゃんが、俺を連れていくって。今日の夕方には長野を出るんだ」
数秒間、二人は何も答えられなかった。
サトは聞き間違えたかのように、キヨシを見つめていた。
「ちょっと待て。今日、出発するのか?」
「ああ」
「東京に?」セイイチが尋ねた。「本当に東京へ行くのか?」
キヨシは頷いた。
「ああ、そうだよ」
「でも……どうしてそんなに急に?」セイイチの声が揺れた。「おばあちゃんと一緒に暮らすっていうのは分かるけど……」
そこで言葉を止めた。
この状況を普通のことのように扱う意味などなかった。
三人はしばらく、黙って歩き続けた。
冷たい風が通りを吹き抜け、雨水が道路脇を流れていた。
やがて、キヨシが口を開いた。
「俺は、両親がどうして死んだのかを突き止めたい」
二人はキヨシを見た。
「昨日、いろんな噂を聞いたんだ」とキヨシは続けた。「殺人だと言う人もいた。呪いのせいだと言う人もいた。それに、父さんが家族を殺したんじゃないかって言う人までいた」
彼の手が、わずかに握りしめられた。
「何が本当なのか、俺には分からない。でも、本当のことを知らないまま、何もせずにここを離れるわけにはいかないんだ」
セイイチは道路を見下ろした。
「ああ……昨日は、みんな好き勝手なことを言ってたな」
「俺は、あんな噂を信じていない」とキヨシは言った。「自分の目で真実を確かめたいんだ」
サトは静かに頷いた。
「だったら、俺たちも調べるよ」
キヨシはサトをちらりと見たが、何も言わなかった。
三人は歩き続けた。
セイイチもサトも、キヨシに長野へ残るよう説得しようとはしなかった。
祖母と一緒に行かなければならないことは、二人にも分かっていた。
たとえ、こんなに早く別れたくなかったとしても。
しばらくして、セイイチが口を開いた。
「東京でも、元気でいろよ」
「ああ。お前らもな」
サトはポケットに手を突っ込んだ。
そこで会話は終わった。
三人はまだ若く、こんな状況にどう向き合えばいいのか、誰も分からなかった。
起きてしまったことを変えることはできない。
すべてが大丈夫になると約束することもできない。
ただ、現実を受け入れるしかなかった。
キヨシは、その日の夕方に長野を離れる。
けれど、長野を離れることは、起きたことを忘れるという意味ではなかった。
噂や非難の奥には、両親の死に関する真実が隠されている。
そして、いつか――
キヨシは、その真実を必ず見つけ出すつもりだった。




