Chapter 13
その体は、天井の扇風機から吊るされ、微動だにしなかった。
首にはロープがきつく巻きついていた。
両腕は、力なく体の横に垂れ下がっていた。
髪は前に垂れ、顔の一部を覆っていた。
キヨシは動けなかった。
全身が冷たくなっていた。
再び稲妻が走り、部屋を照らした。
今度は、母親の顔をはっきりと見るのに十分な時間だけ、光が続いた。
母親の目は大きく見開かれていた。
まるで、今にも飛び出しそうなほどに。
肌は青白かった。
体は完全に動かないままだった。
キヨシは口を開いたが、声が出なかった。
ただ、母親を見つめていた。
息をすることもできずに。
通りにサイレンの音が響き渡った。
赤と青の光が家々を照らす中、数台のパトカーがキヨシの家の前に停車した。
近所の人々が道沿いに集まり、互いに小声で話していた。
何が起きたのか、正確に分かっている人は誰もいないようだった。
警察官たちは、玄関に人が近づかないようにしながら、家の中を出入りしていた。
家の中では、警察官たちが慎重にキヨシの母親の体を下ろしていた。
運び出される前に、顔には白い布がかけられた。
そして、救急車へと運ばれていった。
キヨシは家の前のほうに、一人で座っていた。
警察が到着してから、ずっとそこに座っていた。
顔には、ほとんど感情が表れていなかった。
涙はなかった。
泣いてもいなかった。
怒りもなかった。
ただ、前を見つめていた。
傷ついていないわけではなかった。
まだ、何が起きたのかを完全には理解できていなかったのだ。
ほんの少し前まで、母親の体は天井から吊るされていた。
そして今、母親はもういなかった。
死因を調べるため、検死へと運ばれていった。
キヨシの心は、その二つの瞬間の間で止まってしまったかのようだった。
その時、聞き覚えのある声が彼の名前を呼んだ。
「ユトウ」
キヨシはゆっくりと顔を向けた。
そこには、中年の女性が立っていた。
祖母だった。
父方の祖母である。
キヨシは母親を見つけたあと、祖母に電話をかけていた。
警察に連絡することさえ、頭に浮かばなかった。
手が震えすぎていたのだ。
警察に連絡したのは祖母だった。
今、祖母は彼の隣に座った。
「ユトウ……」
キヨシは祖母を見た。
「どうしたの、おばあちゃん?」
祖母はしばらく彼の顔を見つめていた。
そして、静かに尋ねた。
「お昼ご飯は食べたの?」
キヨシは首を横に振った。
「ううん」
祖母は家のほうを見た。
「じゃあ、あとで何か食べなさい」
キヨシは頷いた。
その周りでは、相変わらず人々のひそひそ話が続いていた。
少し離れた場所に、二人の近所の人が立っていた。
そのうちの一人が、小さな声で言った。
「な、なあ……これって自殺なんだよな?」
もう一人は、すぐに声を落とした。
「何年も経ってから……」
家のほうを見る。
「まさか、また始まったんじゃないだろうな?」
「誰かがあそこへ行ったとしたら?」
「でも、あんな森の中に誰が行くんだ?」
二人は黙り込んだ。
声は小さかったが、キヨシには聞こえていた。
彼は何の反応も示さなかった。
やがて、近くにいた警察官が群衆のほうを向いた。
「皆さん、もう少し下がってください!」
警察官は声を張り上げた。
「現場を調べる必要があります。ご協力をお願いします。少し距離を取ってください!」
人々はゆっくりと離れ始めた。
キヨシは座ったままだった。
その時、家の中から一人の男が出てきた。
「ん……」
男の目がキヨシを捉えた。
「ユウくん」
キヨシは顔を上げた。
ケンタ・ヒロシだった。
サトの父親である。
キヨシは彼のことをよく知っていた。
彼は警察官で、ほかの人たちとは違い、落ち着いた、集中した表情をしていた。
「ヒロシ……おじさん」
ヒロシは頷いた。
「一緒に来なさい」
キヨシは立ち上がった。
ヒロシに連れられ、再び家の中へ入った。
家の中の雰囲気は、すっかり変わっていた。
警察官たちは静かに作業を続けていた。
居間は、キヨシが最初に母親を見つけた時と、ほとんど変わらない状態だった。
ヒロシはキヨシを、少し静かな部屋へ連れていった。
そして、彼の向かい側に座った。
「何時ごろ帰宅したんだ?」
キヨシは少し考えた。
「午後二時ごろだったと思います」
「その前は?」
「サトの家にいました」
「サトと一緒だったのか?」
「はい。セイイチもいました」
キヨシは少し言いよどんだ。
「その……サトの部屋で遊んでいました」
ヒロシは何かを書き留めた。
「家に帰る前に、何か変わったことはなかったか?」
キヨシは目を伏せた。
「昨日、父さんが帰ってきました」
ヒロシのペンが一瞬止まった。
「お父さんが?」
キヨシは頷いた。
「また、両親が言い争いをしたんです」
床に目を向ける。
「僕は関わらずに、そのまま自分の部屋に行きました」
少し間を置いた。
「それから今朝、サトに会いに行きました」
ヒロシは口を挟まずに聞いていた。
数秒後、ペンを置いた。
「ユウくん……」
キヨシは顔を上げた。
「君はもう、小さな子供じゃない」
その声は優しかったが、真剣だった。
「人生では、向き合いたくないことにも向き合わなければならない時がある。それは分かるね?」
キヨシは黙っていた。
「強くいなさい。そして、目の前にあることから逃げずに向き合うんだ」
キヨシは目を伏せた。
「……はい」
ヒロシはドアのほうを見た。
「これが自殺なのか、それとも殺人なのか、まだ分かっていない」
キヨシは顔を上げた。
「検死でもっと詳しいことが分かるはずだ。それまでは、何も決めつけないようにしよう」
キヨシは頷いた。
ヒロシはこのあとどうなるのかを説明し、さらにいくつか質問をした。
二人は部屋を出て、玄関近くの部屋へと移動した。
外を見ると、サトとセイイチが一緒に立っていた。
二人とも、何も話していなかった。
ひどく怯えた様子だった。
遺体を見たからではない。
キヨシを見たからだ。
そして、二人とも彼に何と言えばいいのか分からなかった。
ヒロシも同じことに気づいていた。
その時、一人の警察官が近づいてきて、ヒロシの耳元で何かを小声で伝えた。
ヒロシの表情が、わずかに変わった。
「分かった」
彼は立ち上がった。
「もう行っていいぞ」
警察官は頷き、立ち去った。
ヒロシは再びキヨシを見た。
「少し用事ができた。私が戻るまでは、ほかの警察官たちがここを担当する」
キヨシは立ち上がった。
祖母と一緒に外へ出た。
「おばあちゃん……」
祖母は振り返った。
「少し出かけてくる」
祖母はサトとセイイチのほうを見た。
しばらく二人を見つめてから、頷いた。
「分かったわ。あまり遠くへ行かないようにね」
少し間を置く。
「あとで、何か聞きたいことがあるかもしれないから」
キヨシは頷いた。
「気をつけるよ」
三人の少年は家を離れた。
ほとんど誰も口を開かなかった。
やがて、商店街の近くにある小さな公園にたどり着いた。
そこは比較的静かだった。
三人は最初、少し離れて座り、それぞれ考え事にふけっていた。
キヨシは地面を見つめていた。
長い沈黙のあと、ようやく口を開いた。
「なあ……」
そこで言葉を止めた。
サトがキヨシを見る。
「何だよ?」
キヨシは唾を飲み込んだ。
「母さんが死んだのって……」
言葉が途切れる。
「呪いのせいだと思うか?」
サトはすぐに眉をひそめた。
「はあ?」
首を横に振る。
「そもそも、これが自殺なのか、それとも――」
キヨシが言葉を遮った。
「今は、その話をしないほうがいいと思う」
サトは黙った。
キヨシは自分の手を見下ろした。
指はまだ、わずかに震えていた。
突然、セイイチが口を開いた。
「もう、みんな噂してるよ」
キヨシとサトはセイイチを見た。
セイイチは居心地が悪そうだった。
「呪いがまた始まったって言ってる」
キヨシの表情がこわばった。
サトは目をそらした。
数秒間、誰も話さなかった。
やがて、サトがキヨシを見上げ、あることを尋ねた。
「お前の父さんはどこにいるんだ?」
キヨシはためらった。
「ヒロシおじさんが言ってた……」
地面に目を向ける。
「父さんはサラを連れていったのかもしれないって」
サトは眉を上げた。
「父さんと一緒に?」
「うん」
「何で?」
キヨシには分からなかった。
答えられなかった。
ただ、父親の奇妙な行動を思い出していた。
あの言い争い。
真夜中の訪問。
自分の顔に触れた手。
そして、最後まで言い終えられなかった警告。
キヨシの胃が、ぎゅっと締めつけられた。
「……分からない」
誰かがそれ以上何かを言う前に――
一人の警察官が、自転車で通りを猛スピードで走ってきた。
速い。
あまりにも速かった。
「キヨシ・ユトウ!」
少年たちは振り返った。
警察官は自転車を止め、彼らのほうへ走ってきた。
息が荒かった。
顔は緊張でこわばっていた。
セイイチはすぐに立ち上がった。
「な、何があったんですか?」
警察官は三人の前で立ち止まり、息を整えようとした。
「一緒に来てくれ」
キヨシは立ち上がった。
「ヒロシさんに、君を連れてくるように言われたんだ」
警察官の表情を見て、キヨシの胃が沈むような感覚がした。
「何があったんですか?」
警察官はキヨシを見た。
「長野山脈の近くで、一台の車が見つかった」
キヨシは彼を見つめた。
警察官は唾を飲み込んだ。
「その車の中で、二人の遺体が見つかったんだ」
サトの表情が変わった。
セイイチは一瞬、息をするのを忘れた。
警察官は続けた。
「まだ身元は確認できていない……」
ヒロシ警部からの話だった。
彼は言葉を止めた。
そして、キヨシと目を合わせた。
「君のお父さんかもしれない……」
沈黙。
「それに、君の妹のサラも」
警察官はキヨシ、サト、セイイチを連れ、道路から離れた場所へ向かった。そこには警察官たちが集まっていた。
雨は止んでいなかった。
山道には雨が絶え間なく降り注ぎ、警察官たちも、車両も、周囲を囲む暗い木々も、すっかり濡れていた。
道路脇には数台のパトカーが停まっており、点滅するライトが雨の中を照らしていた。
少し先には救急車が停まっていた。
キヨシは黙って歩いた。
これから何を見ることになるのか、もう分かっていた。
それでも、心のどこかでは、まだ信じることを拒んでいた。
救急車にたどり着くと、ヒロシが後部ドアのそばに立っていた。
その表情は、いつになく真剣だった。
彼はしばらくキヨシを見つめたあと、目を伏せた。
「ユウ……」
言葉を止めた。
このあとに続く言葉を、どう伝えればいいのか分からなかった。
「すまない」
キヨシは答えなかった。
彼の目は、救急車の担架にそれぞれ横たわる、白い布をかけられた二つの遺体へと向かった。
一つは大人のもの。
もう一つは子供のものだった。
キヨシの呼吸が浅くなった。
ゆっくりと前へ進む。
ヒロシは彼を止めなかった。
キヨシは担架のそばに立ち、白い布を数秒間見つめていた。
それから、一つ目の担架に手を伸ばした。
指が震えていた。
布を下へ引いた。
その下から、大人の男の顔が現れた。
キヨシは凍りついた。
父さんだった。
間違いなかった。
彼の目は、二つ目の担架へと移った。
再び布に手を伸ばす。
ゆっくりと、それをめくった。
小さな顔が現れた。
サラだった。
妹だった。
キヨシの表情が変わった。
唇をきつく結ぶ。
歯を強く食いしばりすぎて、顎が震え始めた。
彼は二人の遺体を見つめた。
母さん。
父さん。
サラ。
家族の三人。
もう、いない。
たった一日のうちに。
目に涙が浮かんだが、キヨシはそれをこらえた。
数秒間、ただそこに立っていた。
そして、父親の顔に白い布をそっと戻した。
サラにも同じようにした。
しばらくの間、彼の手は布の上に置かれたままだった。
やがて、彼は口を開いた。
「……うん」
声は、ほとんど聞こえないほど小さかった。
「父さんと、妹だ」
誰も答えなかった。
誰にも、かける言葉がなかった。
ヒロシは頭を下げた。
近くにいた警察官たちは、静かに作業を続けていた。
遺体は必要な手続きのために運ばれることになったが、キヨシをいつまでも現場に留めておくわけにはいかなかった。
サトが近づいてきた。
現場ではまだ捜査が続いており、警察官たちは調査を終える必要があった。
キヨシはただ、背を向けた。
祖母が近くで待っていた。
到着してからずっと、何も言わずにいた。
その顔は真剣で、ほとんど無表情だった。
しかし、その目は違っていた。
祖母は長い間キヨシを見つめ、静かに言った。
「帰りましょう」
キヨシは祖母についていった。
二人が立ち去る前に、ヒロシが近づいてきた。
「ユウ」
キヨシは立ち止まった。
ヒロシは息を吸った。
「現場を調べた」
言葉を選びながら、慎重に話した。
「車のブレーキが利かなくなったようだ。雨で道路がひどく滑りやすくなっていた。車は道路から外れ、溝に転落したんだ」
キヨシはヒロシを見つめた。
「じゃあ……事故だったんですか?」
「今のところ、現場の状況はそう示している」
ヒロシは断定するような言い方はしなかった。
「最終的な原因は、これからの捜査で明らかになる」
キヨシは小さく頷いた。
それ以上、何も尋ねなかった。
もう、そんなことをする力も残っていなかった。
夕方になる頃には、雨はさらに激しくなっていた。
病院の検死部門は、いつになく慌ただしかった。
キヨシの母親の遺体は、自宅で発見されたあと、すでに病院へ運ばれていた。
家族に関係する死をきっかけに、検死室がこれほど慌ただしくなるのは、何年もなかったことだった。
しかし、父親とサラの遺体は検死には回されなかった。
二人の死は交通事故によるものと判断され、必要な手続きは別に進められた。
夕暮れが闇へと変わる頃、キヨシは雨の降る墓地に立っていた。
母親の遺体が車で到着し、待ち受けていた墓へと慎重に運ばれていった。
母親の体は、白い布で完全に覆われていた。
キヨシは動かなかった。
母親、父親、そして妹が、最後の安らぎの場所へと運ばれていくのを見つめていた。
長い話はなかった。
劇的な別れの言葉もなかった。
ただ、傘に当たる雨の音と、周囲の人々が静かに動く音だけがあった。
作業員たちは墓の準備を進めた。
一人ずつ、遺体は土の中へと下ろされていった。
キヨシは一言も発さず、そこに立っていた。
祖母が隣に立っていた。
サトとセイイチは、少し離れた場所で黙っていた。
やがて、警察官たちは必要な作業を終えた。
ヒロシがキヨシのもとへ歩いてきた。
彼の隣で立ち止まり、そっと頭に手を置いた。
「ユウ……」
キヨシは顔を上げた。
ヒロシはそれ以上、何も言わなかった。
この状況をよくするための言葉など、どこにもなかった。
ただ、キヨシの頭を優しく撫でてから、歩き去った。
一人、また一人と、皆が帰り始めた。
作業員たちは道具を片づけた。
パトカーは濡れた道を走り去っていった。
サトとセイイチも家へ帰された。
やがて、そこには二人だけが残った。
キヨシ。
そして、祖母。
墓地は再び静かになった。
新しく掘り返された土の上に、雨が降り続いていた。
二人とも何も話さなかった。
長い間、ただそこに立っていた。
そして、ついに祖母が沈黙を破った。
「あなたのお父さん……」
静かな声だった。
「お父さんは、私が今まで出会った中でも、特に働き者の人だったわ」
キヨシは墓から目を離さなかった。
「どんなに問題を抱えていても、決して努力することをやめなかった」
祖母は少し間を置いた。
「初めてお父さんがお母さんを家に連れてきて、結婚すると言った時……」
祖母の顔に、かすかな笑みが浮かんだ。
「私は反対したのよ」
キヨシはゆっくりと祖母を見た。
「お父さんに、家を出ていってほしくなかったの」
祖母は目を伏せた。
「でも、最後には……あの子が自分の人生を選べるように、自由を与えたわ」
雨がキヨシの顔を伝って流れた。
彼は拭おうともしなかった。
祖母は続けた。
「それから、あなたが生まれたの」
声がさらに優しくなった。
「あなたが生まれて、みんな喜んでいたわ」
「お父さんは、あなたに幸せになってほしかったのよ」
祖母はキヨシを見た。
「お父さんは、自分があなたくらいの年齢だった頃に経験できなかったことを、あなたには全部経験させてあげたかったの」
キヨシの目が震えた。
祖母は手を伸ばし、優しく彼の頭に触れた。
「あなたは、いつだってお父さんにとって大切な存在だったのよ」
その言葉だけで、十分だった。
ずっとこらえていた涙が、ついにキヨシの目からあふれた。
一滴。
そして、もう一滴。
肩が震え始めた。
彼は両手で顔を覆った。
「僕は……」
声が途切れた。
「僕は……」
最後まで言えなかった。
祖母は彼を優しく引き寄せた。
「よしよし……」
キヨシは、ついに泣いた。
大声ではなかった。
大げさでもなかった。
たった一日のうちに、ほとんどすべてを失ってしまった少年の、静かで、壊れそうな泣き声だった。
雨が降り続く中、祖母は彼を抱きしめていた。
その時だけは、キヨシも強くあろうとはしなかった。
二人がようやく家に戻った頃には、すでに夜遅くなっていた。
家の様子が違っていた。
きれいすぎる。
静かすぎる。
前夜の言い争いで壊れた物は、すべて片づけられていた。
床は掃除されていた。
家具も元の場所に戻されていた。
すべてが、ほとんどいつも通りに見えた。
ほとんど。
キヨシは玄関でしばらく立ち止まった。
周囲を見回す。
ここは、自分の家だった。
母親の声が、この部屋を満たしていた。
サラの小さな足音が、廊下に響いていた。
父親はいつも遠い存在だったが、それでも確かに、ここにいた。
今は、ただ静寂だけが残っていた。
祖母はそっとキヨシの肩に手を置いた。
「さあ、行きましょう」
キヨシは頷いた。
祖母は彼を自分の部屋へ連れていった。
「もう寝なさい」
「眠れる気がしない」
「今夜のことも、明日のことも、今は考えなくていいのよ」
祖母はキヨシが横になれるように手伝った。
キヨシは天井をぼんやりと見つめていた。
祖母は彼に毛布をかけた。
数分間、ベッドのそばに座っていた。
それから、優しく彼の髪を撫でた。
「おやすみ、ユトウ」
キヨシは答えなかった。
彼の目は、ゆっくりと閉じていった。
祖母は立ち上がった。
ドアのほうへ歩き、最後にもう一度、キヨシを振り返った。
そして、静かにドアを閉めた。
部屋は暗くなった。
そして、その日初めて……
キヨシは、本当に一人きりになった。




