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異形の冒険者は人間になりたい  作者: hakui
仲間との出会い

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8話 テオの抱えていたもの

「僕の場合は、索敵に力を入れてて、見つかる前に安全なところから詠唱して1発で倒したり、もし、気づかれても、いろんな魔術で隙を作ったり、無詠唱の魔術を強化できる素材を持ち歩いてて、動きながらも強い攻撃をできるようにしてるんだ」


「すごいですね!ラートさんはいろんな魔術使えるんですよね?私は今のところサンダーボルトの一つしか使えないんですけど、どうやったら増やせるんですか?」


「まず、複数あればいいというわけでもないんだ。中には得意な一つの術を極めて、詠唱無しでも必殺級にまで押し上げる人もいる。ただ、やっぱり、使える術が多いと、いろんな場面に対応できるようになるから、覚えておきたいね。雷なら、自己強化系の術を練習するのがいいかな」


「自己強化というと、足を早くしたり、力を強くしたりできるってことですか?やってみたいです!教えてください」


と鼻息を荒くしているテオ。よっぽど、新しい術を使えるようになりたいらしい。


「テオはちなみにどうやってサンダーボルトを使えるようになったんだい?」


「ラートさんは、勇者ロードの冒険という絵本を知ってますか?小さい頃によく読んでいたんですが、そのお話の中で勇者の仲間の魔術師がサンダーボルトを使ってるんです。それを、試しに真似てみたらできたんです」


「有名な絵本だね。僕も知ってるよ。実は魔術とはイメージの世界なんだ。テオの場合、サンダーボルトは絵本に出てくる、的に向かって電撃が飛んでいく魔法というイメージがかなり正確に出来上がっていた。だから、練習もせずに撃てたんだ。魔法を発動すること時に技名を叫ぶのは、そのイメージをより明確にして、技の成功率を上げるためなんだよ。例えば、僕の場合は…」


「ウォーターバレット」


超高速回転した水の球が丸太を撃ち抜く。


「ウォーターウォール」


自身の前に水の壁を作り上げる。


「こんな感じで、ウォーターバレットは高速回転させた水を飛ばす魔法、ウォーターウォールは水の障壁を出す魔法というイメージを作り上げてるから、同じ水魔法であっても目的に応じて、使い分けができているというわけなんだ」


「すごい!水魔法は応用が効くって言ってましたけど、本当にいろんなことができるんですね!」


「多くの人はテオのように絵本だったり、魔術書に書かれた魔術だったり、同じ属性の人にお手本を見せてもらうことでイメージを固めて術を増やしていくんだよ」


「じゃあ、さっきのウォーターバレットとかウォーターウォールも魔術書を買って覚えたってことですか?」


「それは、自分で編み出したね」


「えっ!?どういうことですか?」


驚いたのか、すごい大きな声で質問してくるテオ。


「さっきも言ったがイメージさえ完璧にできればいいんだ。みんな魔術は教えてもらうものだという先入観に囚われているけど、そんなことはないんだ。僕はこんな使い方もできるかもなーって思いついたものを、ひたすら試してるんだ。使えそうなものがあれば、それを実践レベルで使えるように仕上げていくって感じだね」


テオは目を見開き、口を開けたまま、固まっていたが、今日一の声で


「え〜!!!すごい!すごすぎますよ、ラートさん!ラートさんが魔術書を書いたら、爆売れ間違い無しですよ!」


とテオの目がゴールド金貨のようになっていた。


「そうかもしれないね。でも、僕はお金が欲しいわけではないから…。まっ、それよりも自己強化の魔法についてなんだけど…」


「はい!」


「悪いけど、僕は雷魔法が使えないから、お手本を見せてあげることはできない。だけど、それについて書かれた魔術書を持ってるから、練習しておくといいよ」


とテオに魔術書を差し出す。


「え!?いいんですか、これ!魔術書って結構なお値段しますよね?いくらですか?お支払いしますよ」


「お金はいいよ。もう読んだし、さっきも言ったけど、お金が欲しいわけではないから」


「そうですか…。なら、お言葉に甘えさせてもらいます。お金ではないなら、どうしてもこんな危険な仕事をしているんですか?冒険者に強いこだわりがあるんですか?」


と魔導書を受け取りながら、質問をするテオ。


「いや、僕は冒険者をやりたくてやってるわけじゃないんだ。魔人病を治す研究をしたくて、仕方なくやってるんだよ。研究をするのに、いろんな素材やお金が必要になるからね。冒険者なら、その両方を集めやすいからやってるだけだよ」


「そうか、ラートさんだったのか…」


とテオがボソッと小さな声で囁き、動きを止めていた。流石に、疲れたのだろうか…


「今日のところはここまでにしようか。魔術について基礎から、練習方法まで教えたし、後はひたすら練習あるのみだからね。これで他のパーティーとかに入ってもある程度の活躍はできるんじゃないかな」


とテオに声をかける。しかし、テオは受け取った魔導書の表紙をじっと見つめており、こちらを見向きもしない。聞こえいなかったんだろうか?するとテオが顔を上げずに、


「ラートさん…聞いて欲しい話があるんですけど、いいですか?」


といつもよりも1トーン下の落ち着いた声で聞いてくるテオ。おそらく、大事な話なのだろう。


「もちろん!喉も渇いただろうし、お茶淹れるから、座ってゆっくり話そうか」


テオは近くにあった木で作られた椅子に腰掛ける。そして、ラートの淹れてくれたお茶を一口飲み、話し始める。


「実は私には歳の離れた弟がいるんです。とても可愛くて、いい子なんです。生まれつき、弟の額には2つのコブのような物がありました。月日が経つにつれ、コブも少しずつ大きくなっていきました。弟が一人で立って歩けるようになった頃だったと思います。夜中に弟が泣いていたんです。またオムツの時間かなと思って、弟の様子をみに行ったら、コブがあった場所の皮膚を突き破って、角が生えていました。父母とも協力して、色々と調べ、魔人病のことを知りました。角は成長とともに大きくなってます。ラートにこんなこと言うのも、あれなんですが、魔人病だと知られると…」


「大丈夫だよ。続けて」


「今はまだ、帽子などで隠せていますが、それもいつまでできるか。弟は外に出るのが大好きでした。ですが、露見するのが怖くて、外に連れ出す機会もめっきり減りました。魔人病について調べる中で、このコレッタの街に魔人病に詳しい冒険者がいると言う噂を耳にしました。そこで、藁にもすがる思いで、この街に来て、冒険者をすることにしたんです。同じ冒険者なら、会えるかなって思って。そしたら、レッサードラゴンに襲われていたところをラートさんに助けてもらったんです。助けてもらっておいて、最初ラートさんの姿を見て落胆したんです。魔人病を治す方法はないんだな…と。ですが、助けていただいた命。弟そして、助けてくれたラートさんのために使おうと決意しました。魔人病について調べている冒険者の手助けをして、治す方法を見つけようと思ったんです。魔人病について調べているなら、ラートさんかラートさんと親しい誰かなのかなと思い、けっこう強引にラートさんに近づいてしまいました。不快な思いをさせてしまったら申し訳ございません…」


と所々涙ぐみながらも、正直に話してくれたテオ。命を助けたとはいえ、僕のようなものを、はじめから人間扱いしてくれたのは、そういう理由だったのかと合点(がてん)がいった。


「無理を言って、申し訳ないのですが、弟を治してあげたいんです。私がラートさんに何かしてあげれることなんてほとんどないかもしれません。でも、どうか、ラートさんの研究のお手伝いをさせてください!お願いします!お願いします!」


と必死に懇願(こんがん)するテオは、頭を何度も下げながら、僕の方へ右手を差し出してきた。その手をじっと見つめる僕。その手を掴むかどうか…。頭をフル回転させ、考えられるメリットとデメリットを弾き出し、比較する。僕が導き出した答えは…


続く

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