第5話 例のパーティー
「どうして俺たちが尾行していると分かった?どうせ死ぬんだ。まぁいい」
と言いながら先ほどの4人組が姿を現す。人との戦闘は色々と面倒くさいことになるから、避けたいのだが…。
「このまま引いてはくれないか?」
「そんな選択肢はねーんだよ!」
とモヒカン頭が凄む。どうやら、本気らしい。相手はB級パーティーと言っていた。しかも、4対1。やらなくてはやられる。先手必勝だ。僕は尻尾で地面を強く叩いた。土埃が巻き上がる
「ウィンド」
ただ突風を出すだけの術だ。巻き上げた土埃が勢いよく四人を襲う。
「チッ目が…」
と悶えている間に、僕は全速力で走り出し、後方にまたウィンドを放つ。一気に間合いを詰め、魔術師二人を尻尾で薙ぎ払う。
ガハッ
スピードに乗った一撃は重く、吹き飛んだ魔術師二人は木に打ち付けられ気絶する。後方で遠距離攻撃を行う魔術師は、身軽で魔物の使う炎などの遠距離攻撃に耐性の高いローブなどを身に纏うことが多い。つまり、物理攻撃に弱いのだ。
「あと二人」
「この卑怯者が〜」
と激昂したモヒカン男が剣を抜き突っ込んでくる。怒りに任せた攻撃は直線的でヒラリと回避した僕は尻尾でモヒカン頭を背後から殴る。軽量タイプとはいえ、モヒカン頭は鎧を装着しており、さっきとは違い勢いにも乗ってなかった攻撃は、体勢を崩す程度しか効いてなかった。
「ウオオオオ」
と盾を構えたタンクが突進してくる。
グッ…
衝撃を和らげるため、咄嗟に後方にジャンプしたのだが、それでもなかなかの強さだった。後方にそのまま3メートルほど飛ばされてしまう。
「やっかいな、尻尾だなぁ、まずは尻尾から切り落としてやるよ!」
と叫びながらモヒカン頭が走り出し、右に回り込みながら、僕との距離を縮める。正面からは、タンクが盾を再度構えながら突進してくる。
流石の連携だ。僕が着地したとほぼ同時に攻撃がやってくる。剣による攻撃を優先的に回避した僕は、盾の突進をモロにくらってしまう。
受け身もうまく取れず、ズザーっと地面を転がる。肋骨が数本いったかもしれない。かなり痛む。だが、痛がってる余裕もない。次の攻撃が来る。
僕は咄嗟に試験管二本を取り地面に投げつける。すると、辺りに赤い粉が舞い始める。それを見たモヒカン頭が足を慌てて止める。
「まさか、コイツは…」
「さすがB級。知ってたか。鬼火蝶の鱗粉だ」
鬼火蝶とは自分の身を外敵から守るために起爆性の鱗粉を振り撒くD級の魔物だ。火気もしくは、強い衝撃で起爆する。一つでも鱗粉が爆発すれば連鎖的に爆発を引き起こし、大惨事になる。レッサードラゴンの時に使用した試験管の中身の一本はこの鬼火蝶の鱗粉だった。鬼火蝶の鱗粉は起爆前に濡れると起爆できなくなるため、もう一本は威力を調節するためのただの水だった。そうしないと爆発がデカすぎて、僕にまで被害が及びかねないからだ。つまり、試験管一本に満たない量でファイヤーをメガファイヤーにまで威力を押し上げる鱗粉を今回は二本丸々使用したのだ。
「テメェ正気か!!やめろ!」
と叫ぶモヒカン頭
「リーダー俺の後ろに下がれ」
とタンクが盾をがっしり構え、モヒカン頭はその裏へと周る。
「ウィンド、ウォーターウォール」
ウィンドの風を受けて舞っていた鱗粉はモヒカン頭達の方へと流れていく。僕は水魔法で自身の前に壁を作る。
鱗粉の一つがタンクの構えた盾にぶつかると
ドドドドドドドカン
と、とんでもない爆発が起こる。あまりの威力に吹き飛ばされ、岩に背中を打ち付けられ、僕は意識を失ってしまった。
ーー
「…ート、ラー……ラート、ラート、ラート!」
目を覚ますと、テオが心配そうに僕を見つめていた。
「ラート!よかった!目を覚ましたのね。今ギルドの人呼んで来るから!」
と勢いよく部屋を出て行った。
腕には手錠をかけられていた。こうなるから、人との戦闘は避けたかったのに…
上体を起こし辺りを見回すと、ベッドがいくつも並んでいた。さっきテオがギルドの人を呼んで来ると言っていたことから、ここはギルドの医務室もしくは休憩室といったところなのだろう。
ガチャ
と扉が開くと、テオに続きこの前受付してくれたリアーナさんと手錠をかけられた例のパーティーが部屋に入ってきた。リアーナさんは黒髪のロングストレートで切長な目が特徴的な美人さんだ。この前は椅子に座ってたから分からなかったが、身長は僕よりも高く180センチ近くありそうだ。そして、テオと違い、出るところはしっかり出ていた。
僕を囲むように皆が座るとリアーナさんが口を開く
「ラートさん、いくつかお伺いしたいことがあるのですが…体調は大丈夫ですか?」
全身痛いが話す程度ならどうにかなる。
「えぇ、大丈夫です」
「それでは、まず今回の騒動の経緯を教えていただけますか?」
こういう時は嘘が一番良くない。僕は正直にギルドに向かおうとしたら、このパーティーに絡まれたこと、僕たちを尾行して来たこと、僕が一人になったタイミングで奇襲を仕掛けられそうだったので、先手必勝と思い先に手を出したことを話した。
「ほらみろ、コイツから仕掛けてきたんだよ!俺たちは無罪だ!早くこの拘束を解いてくれ」
と早口で宣うモヒカン頭。
「おかしいですね。双方の意見が食い違ってます」
「なっ!?そんなことはないだろ!コイツから仕掛けたってコイツも認めてたじゃねーか」
「そこではなく、あなた方が街中でラートさんを取り囲んだり、尾行したりしていたことについてですよ。あなた方の証言ではたまたま災いの森で出会っていきなり襲ってきたと言ってたじゃないですか」
「えっ!?あー、そうだった。こんな魔物みたいな奴よりも俺たちのことを信じてくれるだろう?なぁ、早くしてくれよー」
「意見が食い違っている以上、どちらかが嘘をついていることになります。他に目撃者がいないか確認してきます」
と立ち上がろうとしたリアーナさんにテオがはいはいはいと手を挙げる
「私ラートさんがこの人達に囲まれてるのを見てますよ!これでラートさんは嘘つきではないということですよね!」
「いえ!あなたはラートさんと行動を共にしていたのでしょう?事実とは異なるラートさんに有利な証言をしている可能性があります。ギルドにいる他の者に聞いてみるだけです。すぐに戻りますので、少々お待ちください」
と言い残し部屋から出て行ってしまった。
「ヒャヒャヒャ、お前終わったなぁ」
とモヒカン頭が勝ち誇った様子でこちらを煽る。この様子だと僕が気絶している間もしくは、それよりもずっと前に根回しをしていたのかもしれない。
ガチャ
と扉が開きリアーナさんが入ってくる。
「ギルドにいた他の冒険者の方に目撃者がいないか聞いてまいりました。結果ですが…」
続く




