第3話 運命の出会い
僕としたことが迂闊だった。まさか、裏通りとはいえこんな街中で絡まれるとは…。
相手は四人。大きな盾と立派な鎧に身を包んだ者が一人。剣を二本携えた者が一人。杖を持った者がニ人。タンク一枚、近接アタッカー一枚、魔術師に枚といったところか。お手本のようなパーティー構成である。
近接アタッカーと思われるモヒカン頭でいわゆるといった風貌の男が剣を一本抜き、肩に刀身を当て、こちらに大きく一歩踏み出してくる。
「なぁ?昨晩にレッサードラゴンが災いの森に出たっていうのは知ってるか?言っておくが俺たちはB級冒険者だ。言うことを聞くことをおすすめするぜ」
何か大事になっても困る。ここはシラを切ることにしよう。
「いや、知らない。他を当たってくれ」
「嘘はいけねーな兄ちゃん。角と尻尾が生えてて白衣を着てる男なんてここいらじゃ兄ちゃんしかいねーだろ〜がよ〜」
と言って剣を振りかざし、僕の首元でピタッと止まる。
周辺に危険な魔物の生息地があまり多くないこの街で冒険者をしているのは、一番ランクの高いパーティーでもB級。普通冒険者はパーティーを組むものだし、C級のレッサードラゴンをソロで倒したとなれば、注目されるのは必須だった。
「卑怯だなんて言うなよ〜。魔物と違って人間は群れで行動するものなんだ。俺様の質問には正直に答えろ!」
と凄みこちらを威圧してくる。
「分かったから、剣を離してくれないか、恐怖でうまく喋れなくなる」
首元から剣は離してくれたが、間合いからは外れていない。後ろに控えてる三人も何かしてくる気配はないが、いつでも動けるように細心の注意を払っているのが伝わる。
「どうやら話は通じるようだなぁ。質問だ!あのレッサードラゴンをどうやってソロで倒した?それとも協力者がいたのか?」
「協力者はいない。内側の鱗は頑丈じゃないから、懐に入って、水魔法で胸を貫いたんだ」
「ほう?それを信じろと?忠告はしたはずだぜ。正直に答えろとな!」
と言い、もう一本の剣も抜き体の前で二本の剣をクロスさせ、膝を曲げ今にも飛び交ってきそうだ。
「おい!冷静になれよ。まだ聞きたいことはあるだろう」
と魔術師の一人が声をかけると、近接アタッカーの男は構えを崩し指ではなく一方の剣先で僕のことを指し
「コイツの余裕ぶった態度が気に食わないんだよ!懐にそう簡単に入れるわけがねー。それに水魔法は最弱の属性じゃねーか!どうせインチキみたいな手を使ったに決まってる。こんな奴殺したって誰も文句は言わないだろ?」
「待て!一番重要なことを聞けてないだろ」
「そうだった、そうだった。なんであんなとこにレッサードラゴンがいたんだろうなぁ。同じ魔物同士何か企んでいたところ、あの嬢ちゃんに見つかって仕方なく倒したんだろ?白状して楽になれよ。お前なんだろ?」
「それは…」
と答えようとしたところに…
「あっ!?こんなところで会えるとは!!」
と昨日助けた少女が僕を取り囲むパーティーの背の方からこちらに駆け足で寄ってくる。その姿を見て、こちらに剣を向けていた男は
「昨日の嬢ちゃんじゃないか。今から黒幕のコイツを…って待て!どこへ行く」
テオは男たちの横を駆け抜けてラートのすぐ目の前まで来て、深々とお辞儀をした。
「昨日は助けてくださって本当にありがとうございます!私テオって言います。何かお礼をさせてください!ところでこれはどういった状況ですか?」
テオのあまりの警戒心のなさに一瞬の沈黙が訪れ、さっきまでの緊迫した空気はどこかへ消えていた。
「嬢ちゃん危ないから、早くソイツから離れるんだ」
と剣を握っている男がテオに向かってこっちに来るようにと手招きをしている。しかし、テオは
「何でですか?命恩人なのに」
と納得のいかない様子のテオと男は口論を始める。
「あんなところに普通レッサードラゴンは出ないんだよ。ソイツが同じ魔物同士レッサードラゴンを使って何か企んでいたに違いないんだよ。それをたまたま嬢ちゃんが見つけちまったから…」
「だったらレッサードラゴンではなくて、私を殺せばいいだけでは?」
「そっそれはそうだが、見てみろよ。禍々しい角に尻尾を!知らないのか?ソイツは魔人病なんだよ。不当な扱いに嫌気が刺して、同じ魔物を操って復讐しようとしていたに違いない!でないと、あんな森にレッサードラゴンが出るはずないんだよ!」
「知ってますよ。あなたの言う通り彼は魔人病なのでしょう。それって、つまり人間ってことですよね?魔人病はただの病気なんですから。彼は魔物ではありません。私たちと同じ人間です。そうですよね?」
とこちらを笑顔で振り返る。それを見た僕は全身がブルっと震え、目頭が熱くなった。握る拳に力を入れて答える。
「魔物と会話をしたり、操ったりなんてできない。なぜなら僕は人間だからだ!」
声は震えていた。気づいたら目からは涙が溢れていた。
「でも…」
と何かを言おうとした男を遮り、
「しつこいですね。大声で叫びますよ。もういいですよね!」
とテオは言い放ち、僕の手を取って走り出した。
続く




