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「異世界帰りの錬金術師は、祈る彼女と契約関係を交わして――世界を救う。」  作者: Lark224a


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第93話 作戦開始。

俺達が考えた作戦を、ここで改めて整理して伝えておこう。


まず大前提として、今回の作戦では争い――つまり武力を用いた暴行や恐喝といった行為は一切認めない。この一点に関しては例外はなく、日本人が日本人として秩序を守る上で越えてはいけない一線として、明確に線引きをしておく必要がある。


この世界がどれだけ崩壊していようと、人として守るべきものまで手放した時点で、それはもう“生き延びている”とは言えない。


だからこそ、もし今回の作戦中に双方のどちらかが暴力、あるいは恐喝といった行為に及んだ場合、その時点でその行為を行った側を“悪”として認定し、俺たちの手でそれ相応の罰を執行する。


このルールだけは、最初に徹底して認識しておいてもらう必要がある。


その上で、今回の作戦について説明する。


作戦名は『みんなで手を繋いで仲良くしましょう!!』だ。


我ながらどうかと思うネーミングだが、やること自体は至ってシンプルで理にかなっており、今回の目的は敵対関係にある二つの生存者グループを争いのない形で同じ場に立たせることにある。


その為に俺達が取った手段は、信用を強制するのではなく相手に選ばせるという形で、双方のグループに同じ内容の手紙を送り、こちらが用意した条件のもとで話し合いの場へ来るかどうかを判断させるというものだ。


その手紙には、こう記載してある。


『ここから一番近い公園に、食べ物・日用品・水といった物資を置いておく。武装は携帯したままでも構わないが、公園に入る際は必ず武装を仕舞った状態で入ること。


この行動の目的について説明する。私達は「国立感染症研究所」に用があり、そこの設備や医療品を回収し、このゾンビ世界を解決する為に行動している。


その為に、あなた達にも協力をしてもらいたい。まずは話し合いの場として、意思決定が出来る立場の者を連れて来てほしい。


なお、この物資は話し合いに応じてもらう為の前金として受け取ってもらって構わない。


あなた達が理性を持ち、状況を理解出来る人間であることを期待している。』


この手紙には、俺達の目的を包み隠さず明記してある。


ゾンビへのワクチンの完成は、この世界に生きる全ての人間が望んでいることであり、その為に行動していると伝えれば無視することは難しいし、さらに話をするだけで物資が手に入るという条件を提示することで、相手にとっての損失を限りなくゼロに近づけている。


つまり、来るか来ないかは相手の自由だが、“来ない理由”を極限まで削ぎ落としている構図になっている。


これならば、争いを起こさずに同じ場へ引き出すことが出来る可能性は高い。


もちろん、リスクがないわけではない。


手紙の内容を信用せず、あるいは逆手に取って武力による奇襲を仕掛けてくる可能性も十分に考えられるし、そもそも善意というもの自体が、この世界では簡単に踏み躙られるものでもある。


だからこそ、そういった不測の事態に備えた準備は徹底して行っているし、何より最初から全てを疑ってかかるのではなく、一定のリスクを受け入れた上で歩み寄るという判断を、今回は選んだ。


それが最善かどうかは分からないが、今の俺達に出来る中で最も現実的で、かつ被害を抑えられる方法だと判断し、その手紙は無事に双方へと届けられ、あとは相手がどう動くかを見極める段階へと移った。


そして俺、祈、リル、リタ、リアはそれぞれ決められたポジションへと配置につき、公園の中央――物資を置いた場所には俺とリタが立って交渉の前面を担いながら周囲の動きに目を配り、祈とリルは公園全体を見渡せる位置に構えていつでも援護に入れる体勢を整えた。


さらに外部の監視と全体の状況把握についてはリアが担当し、設置したカメラと無線を通じて常に情報が共有される状態を維持している。


一つでも歯車が狂えば即座に戦闘へと移行しかねない状況だからこそ、配置一つ、視線一つにも無駄は許されないと意識を張り詰めていた中、やがてリアから無線が入る。


『マスター。そろそろ両生存者グループが公園に到着します。相手は一応、武装は解いているようです。では、私は他の生存者から邪魔が入らないように周囲を警戒します。』


その通信が途切れると同時に、公園の両入口から、それぞれの生存者グループが姿を現した。


互いに距離を取り、警戒を隠そうともせず、それでもなお約束通り武装を解いた状態で足を踏み入れてくるその様子は、この作戦が成立している証でもあった。


ここからが本番であり、力ではなく言葉で場を制する必要がある以上、俺は小さく息を整えながら視線を前へと固定し、この場の主導権を握る為に思考を研ぎ澄ませる。

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