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「異世界帰りの錬金術師は、祈る彼女と契約関係を交わして――世界を救う。」  作者: Lark224a


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第82話 予定外の帰還。

拠点へと戻った俺達は、祈、リル、リタはそのままお風呂へと向かい、俺はその場に残ってリアと状況の確認を行うことにした。


長距離移動の直後であっても、拠点の状態を把握することは最優先だ。


「リア。今、戻ったが何か問題はなかったか?」


「はい、マスター。関崎さんからいくつかの報告は上がっておりますが、全て対応済みであり、現時点で重大な問題は発生しておりません。それで、そちらの状況はいかがでしたか?」


落ち着いた声音で淡々と返答するリアの様子から、少なくとも拠点内は安定していることが分かる。


「こっちは何とも言えない感じだな。良くも悪くもなく、想定通りと言えばそうだが、想定以上に厄介な部分もあった。正直、あそこまで車とゾンビが残っているとは思ってなかったし、特にゾンビの数が想定より多かったのが引っかかる。音に釣られてある程度は散っていると思っていたんだがな‥‥明日以降も、あれが続くと考えると楽観は出来ない。」


現場の感覚をそのまま言葉にすると、リアはわずかに思考を巡らせるように間を置いた。


「そうですか‥‥自分も何かお手伝い出来れば良いのですが、生憎、私は戦闘機能がほぼありませんので、申し訳ございません。」


「いや、リアが謝ることじゃない。」


即座に否定する。


リアは戦闘特化ではないが、その代わりに拠点運営に必要な思考能力と判断力に能力を極端に振り分けられた存在であり、人材配置、物資管理、消費計算、リスク予測といった“戦場の裏側”を支える役割においては、間違いなくリアの右に出る者はいない。


それに加えて、既存の知識に頼るだけでなく現代技術に関する資料を独学で読み込み続けており、その部屋には読み終えた専門書が山のように積み上げられている状態だった。


「それで、駅の進捗はどんな感じだ?」


話題を本題へと移す。


電車の運用は今後の物流と戦略の要になる重要項目だ。


「駅構内に関しては概ね問題はありません。清掃および安全確保も進んでおり、最低限の使用は可能な状態まで復旧しておりますが、問題はその先――線路の方になります。」


そう言いながらリアは机の上に一枚の図面を広げる。


それは単なる路線図ではなく、各区間の状態を細かく分類した実務用の配線図であり、複数の記号によって状況が一目で把握できるようになっていた。


「こちらをご覧ください。これは電車の走行ルートを示した図ですが、赤い〇で囲まれている箇所はゾンビの排除が未完了の区間、黒い〇は線路設備の損傷、白い〇は安全に走行可能な区間を示しています。」


だが――そこにあったのは、ほとんどが赤と黒で埋め尽くされた現実であり、白く示された安全区間は拠点からわずか一駅先までしか繋がっていない。


「‥‥なるほどな。これは運搬に使うのは厳しいな。」


そう口にしながらも、この状態では電車を長距離輸送手段として機能させるには程遠く、現状のままでは実用に耐えないという結論は明白だった。


「はい。線路の修理に関しては関崎さんが知識を有しており、自分も資料から構造の理解は完了していますので、マスターが必要な部品を錬金で用意していただければ、物理的な復旧は可能です。ただし――問題は赤い区間、すなわちゾンビの排除が未完了のエリアです。」


現状の戦力は外征を優先している以上、ここで戦力を分散させればどちらも中途半端になるのは明らかであり、その判断は現実的ではないと理解した上で、


「他に手はあるか?」


と問いかけると、リアは迷いなく答えた。


「はい。そのため、探索班の戦力強化へと方針をシフトしました。現在、主力は外へ出ておりますが、拠点に残っている人員に対しては戦闘訓練の強化を指示しており、一定期間で戦力として運用可能なレベルまで引き上げる計画です。」


その回答は合理的であり、即効性こそないものの確実に戦力の底上げが見込める現実的な選択だった。


「まぁ、それしかないか。ありがとうな、リア。これからも頼む。」


「はい、任せてください。マスターの力に依存しない形で、ゾンビの排除が可能となるよう最適化を進めます。」


その言葉に思わず小さく笑みが漏れ、やはりこいつに任せておけば大丈夫だと改めて実感しながら、俺も風呂へ向かおうと体の向きを変えた――その瞬間だった。


バンッ!!


突然、椅子を跳ねるようにしてリアが立ち上がり、普段は一切感情を表に出さないその異常な反応に、空気が一瞬で張り詰めた。


「マスター!!緊急報告です!!」


その声には明確な緊張が混ざっていた。


「探索班が帰還しました。幸いに噛まれた者はいません。しかし、負傷者が多数確認されています。出血量の多い者もおり、このままでは処置が間に合わない可能性があります!!」


一瞬で状況を把握すると、戦闘不能ではないにしても限界に近い状態であることを理解した。そして――


「分かった。」


とだけ短く返して迷うことなく走り出した。


拠点の廊下を駆け抜けながら既に頭の中で必要な処置と対応手順を組み立てており、休んでいる暇などないという現実だけがはっきりと意識に刻まれていた。


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