第77話 探索班の初任務。
新連載 『世界を統べた覇王と一心同体になった俺は最強の仲間【駒】を揃える』
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それから数日が経過した。
あの時、祈が助けた親子は無事に拠点へと迎え入れられて現在は他の住人たちと共に生活を送っている。
元々その親子がいた場所は、病院とは逆方向にあるホームセンターを拠点として活動していたらしいのだが、ほんの些細な油断からゾンビの侵入を許してしまい、防衛線は一気に崩壊、結果として拠点そのものを維持することが出来なくなったという経緯だった。
混乱の中で何とか脱出に成功したのがあの親子であり、それ以外の生存者については最後まで確認する余裕もなく、現在どうなっているのかは分からないとのことだった。
その情報が事実であるならば、未だ現地に取り残されている生存者が存在している可能性は十分に考えられるため、堂島さん率いる探索班にはその旨を伝え、物資の回収と同時に生存者の有無を確認する任務を正式に与えた。
そして今日――その任務の出発日を迎えていた。
「で?装備はどうだ?違和感とかはないか?」
最終確認として声を掛けると、既に装備を整え終えている堂島さんが軽く腕を動かしながら感触を確かめる。
「あぁ、それは問題ないが、本当にこの服でゾンビの攻撃を防げるのか?」
「それは大丈夫だ。俺が身をもって実験したからな。」
軽く言い放つと、すぐさま呆れたような返しが来る。
「それはどうなんだ?多分、怒られたんじゃないか?」
「あぁ、めちゃくちゃ怒られた。」
苦笑混じりに返すと、周囲からも小さな笑いが漏れ、張り詰めていた空気がわずかに和らぐ。
探索班が着用している装備は、軍用の迷彩服をベースにしつつ、祈やリタ、リルの専用防具と同様に錬金術で物理攻撃耐性と衝撃耐性を付与したもので、見た目こそ一般的な戦闘服に近いが、その防御性能は通常の衣服とは比較にならないほど高い水準に仕上げてある。
さらに武装としては、近接戦闘用にバランス調整を施したサバイバルナイフと、取り回しと威力のバランスを重視して改良したハンドガンを標準装備として支給しており、いずれも扱いやすさを優先しながらも、実戦で確実に結果を出せるよう設計している。
加えて、一週間分の携帯食料、応急処置用の医療キット、行動記録用のカメラ、通信用の無線機、夜間や屋内での活動を想定した携帯ライトと予備バッテリー、火起こし用のライター、そして野営を前提とした寝袋などを基本装備として持たせており、短期遠征としては十分すぎるほどの準備を整えている。
堂島さんは、俺がメンバー選考を任せてからわずか三日で人員を決定し、その後すぐにリタによる実戦形式の戦闘訓練と、神崎さんたちによる基礎的な医療講習を並行して実施させた結果、短期間とは思えないほど統率の取れた部隊へと仕上げてきた。
もちろん、国家レベルの正規軍と比較すれば知識や動きに未熟な部分は残っているが、それでも限られた時間と環境の中でここまで仕上げたという点においては、個人的には文句なしの評価を与えていいと判断している。
「じゃあ、今回は10人で探索を行い、残りの10名が拠点の警備って形でいいな?」
「あぁ、それであっている。一応、定期的に連絡は入れるつもりでいる。」
「分かった。今回が探索班として初めての任務になるわけだが、俺から言えることがあるとすれば、焦らず、驕らず、常に仲間と連携を取りながら動くことだ。無理に突っ込まず、確実に状況を見極めて行動すれば、必ず任務は達成できる。頼んだぞ?」
「あぁ、任せてくれ。」
その言葉には、覚悟と自信の両方がしっかりと宿っていた。
そこへ、横から神崎さんが静かに歩み寄ってくる。その手には、小さな布製の御守りが握られていた。
「私は一緒に行くことは出来ませんが、これを私だと思って持って行ってください。絶対に戻ってきてくださいね。」
差し出されたそれを、堂島さんは一瞬だけ目を細めて見つめた後、ゆっくりと受け取る。
「‥‥御守りか。ありがとう。肌身離さず持っておく。それじゃあ、みんな行ってくる!!」
その声を合図に、探索班の面々が一斉に動き出し、見送る側の人間たちがそれぞれ声を掛ける中で、彼らは拠点を後にした。
今回の任務は距離的に見ても極端に難易度が高いものではない。仮に何らかの想定外が発生したとしても、緊急連絡が入るようにはしてあり、最悪の場合には俺が電車を使って即座に現場へ向かうことも可能な体制は整えている。
だが、その“保険”の存在は探索班には伝えていない。
何かあれば助けが来るという前提は、確実に判断の甘さを生み、最終的には命取りになりかねないからだ。
どんな状況であっても、自分たちの判断と行動で乗り越える――その意識を持ち続ける限り、あのメンバーであれば必ず結果を出せる。
そう信じている。
「‥‥頑張ってくれ。」
誰にも聞こえないほど小さく呟いたその言葉は、遠ざかっていく背中へと静かに向けられていた。




