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「異世界帰りの錬金術師は、祈る彼女と契約関係を交わして――世界を救う。」  作者: Lark224a


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第63話 平和な世界。

少し本編から離れます。

世界にゾンビが現れる前の平和な世界だった頃。みんなはその当たり前の日常がどれほど貴重だったのかを、この時は誰も認識していなかった。


毎朝の家族や恋人や友達との何気ない挨拶に、当たり前のように自分の前に出てくるご飯に、不自由なく電気やガスが使えること、そして何より命の心配をする必要がない。


それら全ては平和な世界では当たり前のことであったが、全ては世界が平和だったから実現されていたことであり、その前提が崩壊すれば当然のように平和な世界は崩壊する。


この話は、そんな平和な時の世界の話である。



私の名前は「宮坂 祈」。桜ノ宮高校に通う高校2年生です。部活には入っていませんが、生徒会に所属しているので、放課後は自然と生徒会のメンバーと過ごす時間が多くなっています。


特別なことがあるわけでもなく、ただ決まった時間に起きて、決まった道を通って、決まった人たちと会う。そんな何気ない日々を、私は当たり前のように繰り返していました。


朝、目を覚ませばリビングへ向かい、既に起きている家族に「おはよう」と声をかけるところから一日が始まります。眠そうに返ってくる声や、いつもと変わらない会話に少しだけ安心しながら、身支度を整えていく。


そして準備が終わる頃には食卓に朝食が並び、家族全員でそれを囲みながら、特に意味のない会話を交わす。今思えば、その“特に意味のない時間”こそが一番贅沢なものだったのだと思いますが、その時の私はそんなことを考えたこともありませんでした。


学校まではそれほど遠くなく、徒歩で三十分ほどの距離なので、私はいつも歩いて通っています。季節によって変わる景色や、同じ道を歩いているはずなのに少しずつ違って見える朝の空気を感じながら、特に急ぐこともなく歩く時間が私は嫌いではありませんでした。


そして途中で、必ず合流する相手がいます。


最初に会うのは、昔からの親友である「花村 結」。


小学生の頃からずっと一緒で、小学、中学、高校と同じクラスが続いているという、少し出来すぎているくらいの関係です。しかも今は同じ生徒会に所属しているので、家族よりも一緒にいる時間の方が長いんじゃないかと思うこともあるくらいです。


結と合流した後は、自然ともう一人――幼馴染の「錦戸 亮太」と合流します。


亮太は小学生の低学年の時にこちらへ転校してきて、家が近所だったこともあってすぐに仲良くなりました。それからずっと同じ時間を過ごしてきて、気が付けば今でもこうして一緒に登校するのが当たり前になっています。


男女の友情は成立しない、なんて言葉を耳にすることもありますが、私はそうは思いません。実際にこれまで特に問題が起きたこともありませんし、この関係はこの先も変わらず続いていくものだと、どこかで当たり前のように考えていました。


ただ、私達ももう高校二年生です。周りを見れば、恋人がいる人も珍しくはなくなってきて、誰かにとっての“特別”が生まれることも当たり前になりつつあります。もし、そういう存在が出来たとしたら、この関係も少しずつ変わっていくのかもしれない――そんなことを、ぼんやりと考えることもありました。


とはいえ、私自身はこれまでそういう相手がいたこともありませんし、誰かを特別に意識したこともなかったから、だからきっと、この先も誰かと付き合うことはないんじゃないかと、なんとなく思っていました。


あ、でも、そういうことを言われたことがないわけじゃありません。むしろ、ほぼ毎日のように誰かしらに告白されているくらいです。ただ、不思議なことにそういう気持ちになることは一度もなくて、どうしてなんだろうと自分でも思うことがあります。


そんなことを考えているうちに、他の友達とも次々と合流していき、気付けばいつもの六人が揃っていました。



そうして私達は学校へと着き、授業が始まるまでの間をいつも通り話をしようとした時だった。


クラスの一人の男子がネットで凄い動画を見つけたと言って、全員にそれを見せていた。その動画の内容は口で言うのも嫌になるぐらいの酷い物で“人が人を食っている”動画だった。


男子はそういった系の動画や映画が好きなのかこぞって見ていたが、私はどうしてもその動画が作り物のようには見えず、本当に起こっている現実のように感じていた。


けれど、人が人を食うなど現実に起こり得るわけがない。そう結論づけることで、その違和感を無理やり押し込めた。


そして、その動画のことを忘れることにした。


今思えば、その考えを捨てずに少しでも警戒していれば、話は変わっていたのかもしれない。だが、既に終わったことであり、今それを言ってもどうしようもない。


そうして崩壊の時は、刻一刻と進行していた。

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