FAW探検! ワクワク旅行記 ~道中~
別に走った訳でもないので、直ぐ見える距離に待っていた。俺とキリキリは並んで歩く。
「……ったく。キリキリ、そんな調子でテュテュさんと仲悪くなったらどうすんだよ」
「今のは俺のせいじゃないだろ!?」
「うむ、確かに。しかし、人には忍耐力という受け入れる力が必要なんだよ。分かるかい?」
「急に上から目線はなんなんだよ?」
「先輩からのアドバイスさ。男には耐えねばならぬ時がいくらでも存在するという、この世をほんの少し長く生きている俺のな」
「イチロウ、明らかに俺よりは若そうだけどな」
「ふっ、年齢など関係ないよ。必要なのは関係値、さ★」
「道案内やめてもいいか?」
「すんませんご勘弁を」
「だったら変な先輩風吹かせんな。忍耐力とか以前に友達失くすぞ」
「全くもってその通りでございます……」
……なんだか、過去の自分を見ているみたいでテンションが上がってしまった。理不尽に追い回される人生を歩んでいる姿を見るのは何ともない追憶なのだから少しは許して欲しい。いや、戯言か。
「……お仲間さん達はいつからの仲だ? 見たところ、あんたがトップなんだろ」
「ほんとにそう見えるかぁ? 結構あいつらに振り回されてるんだが」
「だが、さっきの能力も含めりゃあんたが統率者向きなのは分かるぜ。あの少女は……ともかく、アマとセウ。あの二人も従えてるのはとんでもねえな」
「アマとセウ? あの二人がどうかしたのか?」
「いやいや、俺も冒険者の端くれだからな」
「冒険者? 宿の主じゃなくてか?」
「副業だよ。リザードマンじゃ戦闘能力があるなら取り敢えずやってる、みたいな奴は多いんだぜ」
他の地方は知らないけどな、とキリキリは付け足す。
「『光の化身』のアマに『荒れ水流』のセウの名前ぐらいは聞いたことあるさ」
……アマの異名の多さにも呆れるが、セウにも異名があることにも驚きだ。――それもあるが。
「あいつら、そんなに有名なのか? ――あ、いや、知らないのは冒険者と関わることがあんまり経験になくてな? 王国の使者で生計を立てたかったからさ」
「立てたかった?」
「立ててたからな! うん!」
「さっき証明書の知識も無かったのにか?」
「……もう俺自体は気にしないでくれ。それより、二人の事はどうやって知ったんだ?」
「……まあ、言いたくないこともあるだろうし、そこら辺はいいんだが。――二人をどう知ったかってのもなあ……冒険者として活動してりゃ一度は聞く名だよ。『希望の星達』のメンバーは」
「『希望の星達』?」
「出自、能力、立場。何もかもがバラバラで、一ヵ所に集まることも珍しい冒険者パーティー。たった二つしか共通点を持っていない集団を、冒険者パーティーなんてパーティーと呼ぶのはちゃんちゃらおかしいがな。まあ、『希望の星達』という名前すら、本人達が名乗った訳でもないらしいから、あながち間違いでもないんだろうが」
……正直、希望の星達なんて名前、NWじゃ新興宗教以外に聞くことないので怪しさ満載だ。気になる部分を追及してみる。
「……二つの共通点、ってのは?」
「一つは強さ。年々冒険者が増加し、魔法や武器の技術も上がっていく中、『希望の星達』と他の冒険者では一線を画し、大壁に阻まれる程の実力差がある。リザードマンだと『巖鐵』のギルギルとは同じ依頼をやったことあるんだが、ありゃとんでもねえよ。百人規模の盗賊団を一人で全員ノシやがったんだ」
それは確かに凄い。某グラップラーでも幼少期だと三十七人が限界だったからな(曖昧な記憶だがそれくらいだったと思う)。現在地点の彼がやれば余裕なんだろうが、記録は記録だ。
「成程、アマとセウの強さはやっぱり異常なんだな。それで、二つ目は?」
「……執着。全員漏れなく北の台地への強い執念を持っている。言ってしまえば、あいつらはこっちの方が異常なんだよ」
……確かに、北の台地となると二人の目はギラギラに輝き始める。期待に満ち溢れているとか、獲物を狙うようなそれではなく、もっと、闇の奥を無理矢理覗き込むような目だ。
「北の台地に関係する出来事で自分が死にかけたり、家族を喪ったりしているんだ。昔あったっていう探検隊なんかとはまるっきり動機が違う。憎悪が殆どだ。勿論、異常な好奇心の持ち主もいるらしいが、聞いたことあるのは一人だけだ」
メンバー全員が有名ならば、『希望の星達』には聞いたことあるその一人しか居ないのだろう。リサーチ不足の可能性もあるが、プラス何人かされた所で正直俺には関係ない。――いや、案外そうでもないかもしれない。
「『希望の星達』か……西の地方にはギルギルの他に誰か居るのか?」
「ああ、それは……っと、着いちまったみたいだな。続きは中に入ってからでも遅くないだろ」
「……そうだな」
正直、『希望の星達』の情報はもう少し欲しかったが、ただでさえ連れていってもらってる身だ。おねだりなど出来る状態ではないだろう。俺は前にある古ぼけた教会に目を向ける。
セイクレート王国のような宗教国家とは違い、まるで真逆の宗教観を持っているイテウではあっち程綺麗には掃除されていないようだ。
他の建物と同じ石を使ってはいるが、度を超えて欠損が激しい為同種の素材とは思えない外見だった。
「なあ、これって使われてるのか? 手入れされてないどころか、廃墟と言われても信じそうなんだが」
「ああ、たまに柄の悪い奴がここで怪しい話をしてるからな。今は居なさそうだから安心しろよ」
「……」
確かに、シンミンの右目も特に反応していない。逆に心配なのだが、入ってみないと分からないこともある。
「じゃあ、さっさと入ろうぜ」
「……そうだな」
キリキリが扉に手を掛け押し開く。ドアノブは既に壊れていた。




