FAW探検! ワクワク旅行記 ~努力家~
坂の途中には、坂になっていることに気付かず転がり落ちたアマが居た。……あんまり女子がやるものではない格好になっている。それに、アマに気付いて近寄っているリザードマンも居た。文化的かはさておいて、服のように端の古ぼけた布を纏っている。胸に膨らみはあるが、胸筋なのか乳房なのかは見分けがつかない。
「ああいうのでもイケるのね。変態じゃないの」
「ピンクな視点じゃ見てねえよ!」
「何の……話ですか」
「今このノリいけるのソフィアしかいないから気にするな!」
「市郎も、随分、元気ですね……」
俺らは坂を降り、その姿にあちらの方が気づいた。人の倒れているのを発見したからだろう、焦っている様子だった。
「ぞあぎゅいび!? ――げねばで、んどぞぞだねどおぼどね? あも、あぼのぜるでげれぎゅどあお。ぞなおぎ、げねばでのげびねづぢぞっづ!」
……まあ、予想はしていたが。
「何言ってんのか分かんねえ……」
「んる!? めざおざづ、どなあっづりねおろおをどあ? でいざぜい……ろぞざ、づぁばおりげぎゃぶらどあゆ……。ん、ぜいぞ!」
リザードマンは両手で何度かアマを指差し、両手を水平にしてから上下、次に街の方へ片手で指差す。
「……」
「やっぱり、頭ピンクじゃない。というか、アマちゃんの事そんな風に見てたの?」
「ち、違え! これは男として当然の連想というか、仕方がないことというか……」
「一体、……何の、話っすか」
「ほら、セウ君は何も分かってないみたいだけど。思春期の子供みたいな妄想をしてるのは市郎くんだけよ」
……くそっ。否定出来ねえ。
「ぎゅっで! ……んどぞぞだ、ぞあぎゅあび? ――でいまづめ、ぞあぎゅあびざもどあどぬ。……ぞるお! げげなばでおぞえるづりね!」
今度は街の方へ叫びだした。……これ、大丈夫なのか? 追い出されたりとかしたら前代未聞の大ピンチに陥るんじゃ……。
「……ちょ、ちょっと! 何してんすか!」
少し思考に耽ったタイミングに虚をつくセウの声。気が付くと、リザードマンがアマを持ち上げて街へと歩き始めていた。目的の分からない行動につい出てしまったらしく、セウも口を抑えていた。咄嗟の後に善意の行動である可能性がよぎったのだろう。
無いわけじゃないが、種族間の偏見は小さいようだ。多分、ここでは俺が一番リザードマンを怪しんでいる。――幸い、リザードマンはセウの言葉をスルーし、変わらず奥へ進んでいく。
「んどぞぞだ、げっだながづ!」
リザードマンは長い口を俺らの向きから街に向かって振る。こっちに来い、ということだろうか。
「ついていくのがいいんじゃない? 万が一があったら私が助けるし」
「……そうだな」
体力や肉体に限界が来ているため、彼ら(もしくは彼女ら)にお世話にならないと命の危機に陥ってしまうのは事実。ソフィアの答えが最善ではあるように思えた。
「当然じゃない。私、高性能サポートAIだからね」
「自意識強いなこのAI……」
「……ちょっと、市郎、背中貸して、下さい……」
「おわあ大丈夫かミシュ!? 今まで見たことないくらい死にそうな顔してるぞ!?」
「大丈夫、じゃ、ないです」
「ちょ、分かった! 分かったからこっち来い!」
ギリギリで立っている状態のミシュを背中におぶりつつ、灼熱の街イテウの中へと踏みいった。
◆◆◆◆
地面は変わらず硬い石で、建物も同じ素材で造られているように見える。あくまで主観だが、他に建材らしい建材も無いのでまあ事実だろう。街並みは迷路の様に道が入り乱れ、セイクレート王国のように整列されてはいない。どんどん増えていく形で栄えたのだろうか。
されるがまま連れてこられたのは宿。やけに濁音が多いということ以外に何も分からない言語で内容は分からないが、宿の主人なのであろうリザードマンと俺達を連れてきたリザードマンが会話し、少し語気の強い場面はありつつも、二部屋借りてくれたようだった。
ハンドジェスチャーで誘導された部屋へ入ると、外見よりもしっかりした部屋が広がっている。
一流リゾートホテルなんて大層なものではないが、何部屋かに区切られた空間、ベットにテーブル、キャビネットやクローゼットと最低限泊まることに苦はない内装になっていた。
部屋のベッドにミシュ、もう一部屋にアマを寝かせ、俺とセウはそれぞれ二人の具合を見つつ軽い休養。軽い熱中症だった。水やら塩分のありそうな保存物やらを持ってきてくれたのでそれを与えた。
リザードマンがカウンターに立っていた別のリザードマンに何か話すと、こちらに向いて話し掛けてきた。
「……こんにちは。えっと……これで合ってるか?」
「え、ああ、はい。合ってます、よ?」
唐突に理解できる言葉が飛んできて狼狽えてしまった。仕事が速いな、ソフィア。
「いや、私まだ解析始めてすらいないわよ」
「高性能だか何だか言ってたのに、仕事サボってるんじゃねえ。というか、ならこれはどうして……」
「お、おい。俺の言ってる意味が分かるか?」
「え、あ、はい。ちょっと混乱したくらいには分かります」
反射で返してしまった。やらかしてないだろうか。
「……ゆおっぞお。でぎおぎづどあでおどりめをどをぞど」
また何を言っているのか分からなくなった。どういう事だ? もしや、この右目が悪さをしているのか?
「単にこの人がティピカル語を覚えたって話じゃないのかしら」
「……」
……あー。
「うっで……お前らは何処から来たんだ? 見たところ、ティピカルみたいだが……」
思った五倍流暢に話し始めるリザードマンに若干困惑しつつも唯一現実で話す元気の残っている俺が声を出す。正確には、無理矢理気つけされただけなのだが。
「――そうだな、概ねあんたの予想通りだ。それで、ここは?」
「お、おお……!」
「?」
「あ、いや、すまん。俺の言葉が伝わって、相手の言葉が分かるのが嬉しくって。少しテンション上がっちまったんだ」
屈強な体で、子供のように、無邪気に喜ぶリザードマン。
……俺もちょっとは自力で頑張ろうかな。




