94. 王都防衛戦
「王都へ撤収する! 全軍いそげ!」
王都へ向かう軍は約2万。
テリクス軍は大半をハルバルトに渡して南に向かわせたので、こちらには俺の馬周りを中心とした千騎だけが残っている。
「よし! テリクス騎兵、ヒューレ騎兵は先に行くぞ! 後詰の軍はデメトリオ、お前が率いてこい!」
「ははっ!」
「何かあったのか?」
ソウジだ、、話していいものか迷ったが、、ええい! これから信頼関係築きたい相手だろ!
「ああ、ベアダインの海軍が海岸線に現れたから、迎撃しに行くところだ。」
「……そうか、、俺たちは捕虜としておとなしくしていればいいんだな。」
「ああ、そうしてくれると助かる。 おい、ジョバス! ソウジ殿と少年兵たちを捕虜として丁重に扱え!」
「ははっ!!」
「では! 先発隊出発! つづけ!!」
「「「ははっ!!」」」
俺はアユミを背に、レオル、ルル、シェリーはケビン達、帝国の親衛隊やガルスト兵たちの騎馬の背に乗せてもらって疾走する。
ヒナコは先に向かい、高度偵察を行ってもらっている。
夕方になったころ、王都まで半分の距離まで来た。
キィィィィィイイイインン!
ヒナコが帰ってきた! フィオナを掲げ、光らせて合図をする。
「ダーリン!! 大変! もう敵兵が王都まで迫ってる! 王都は城門を閉じて防衛態勢に入ってる!」
「!! ヒナコ、、もう一度王都に飛んでくれ! あと3時間でいい、持ちこたえろ、ヤマナが2万の兵で向かっていると伝えてくれ! あと、エリスを、頼む!!」
「わかった!!」
王都にはエリスがいる!!
うぉのれぇえええ! いい度胸だ!!
「おい!! 付いてこれる奴だけでいい!! いくぞ!」
「「ははっ!!」」
ドカカッ、ドカカッ、ドカカッ、ドカカッ、
全速力で走る数十騎、
3時間後、とっぷり日が暮れたゼノラウト王都城外の草原で、、、
ゴッ、 ドバァァアアアアアン!!
「てめぇらぁああ! いい度胸だゴラァァアアアアア!!!!」
「ぎゃぁぁぁああ!」「ひぃぃいい!」「ば、化け物だぁああ!!」
ゼノラウト王都の城門前で、1万を超えるベアダインの大軍を前に、たった一人で暴れまくる男がいた、、、、
右手には白く光る刀、左手には雷をまとっている。
ベアダイン軍は、ゼノラウト王都を攻めるつもりでいた所に側面からヤマナが現れて攻守一転、その圧倒的攻撃力で蹴散らされたものだから、恐慌状態に陥っていた。
「出たな! ヤマナ! 俺が相手だ!! 俺は召喚戦士のテツロー! いざじんじょうに、、」
「俺のこの手がとどろき叫ぶ!! 『サンダークローーー!!!』」
敵の戦士の口上も終わらぬうちに、『縮地』で一瞬のうちに距離を詰め、雷をまとった左手で顔面をつかみ、吊り上げる!!
バリバリバリバリ!!!
「ぎゃふっ!!」
顔面から全身を雷に焼かれ、出て即、瞬殺されるかわいそうなテツロー、、、
「ひぃぃぃいい、テツロー様が一撃でやられた! ひけ、ひけぇぇぇえ!」
城門を壊そうとしていたベアダイン軍が、ヤマナ一人に蹴散らされ、退却しようとする。
「逃がすか、ゴミどもぉぉ!! 『龍王雷撃破ァア!!!』」
「ぎゃぁぁぁあああ!」「ひぃぃいい!」
城門前のヤマナから、龍の形をした雷が数匹、草原へ向けて扇状に放たれ、敵を薙ぎ払う!!
新技、というか、もはや適当な名前をつけて、イメージしたままの技を振るうヤマナであった。
「おるぁああああ! かかって来いやぁ!! クズどもぉ!!」
ヤクザキックで大盾を持った数十人を突き飛ばし、左手の雷でフルプレート兵達の鎧の中身を焼き、右手の刀の衝撃波で敵陣を吹き飛ばす!
「ひいいっ! ひけ! ひけぇ!」
「お前達! 逃げるんじゃない! 私の盾に、、ぐべっ!」
ヤマナに対しての恐怖が恐怖を呼び、ベアダイン軍は大混乱に陥っていた。
「……師匠、おっかねぇ、、」
ヤマナの戦いを離れて見ている、ドン引きのレオルや親衛隊たち
彼らもヤマナについていこうとしたが、全開戦闘の邪魔だから来るな! アユミを守っていろ、と言われて待機していた。
「力攻めのフミオさまもステキ、、」
ハートマークの目で見つめるアユミ
「ダーリン☆ がんばれー!」
城門の上から声援を送るヒナコ
城壁の塔からはゼノラウト王とテレシア王妃、ヒューレ王リカードとデルハルト王がヤマナの戦いを見守っていた。
「おっかないのぉ、あいつ、、」
「え、ええ、、本当に私の騎士なんですよね? あれって、、」
ヤマナを『あれ』呼ばわりするテレシア、、
「……ヤマナと友達でよかった、、」
「ホッホッホ、さすがわが友ヤマナよ、愉快、愉快!」
「これで、終わりだァ! 『ライトニングスコーール!!!』」
ドガガガガガガガガガガガガガガガ!!!
また勢いで適当な名前をつけて、無数の小さな雷を豪雨のごとくベアダイン軍に降らせる!
「ぎゃっ!」「びっ!!」「ぐぎゃっ!」
短い悲鳴をあげてバタバタとベアダイン兵たちが倒れていく!
全員その場でぴくぴく痙攣している。
「ゴフー、ゴフー、」
口から湯気か煙のようなものを噴き出してあたりを見回すヤマナ、
「う、うわぁぁぁああ!」
雷をまぬがれ、座り込んでいたベアダインの少年兵が、恐怖でヤマナに剣を突き立てる!
ガッ!!
ヤマナは左手で少年の剣を握ると、、
バキバキバキ、
鋼鉄の剣を握りつぶす!
「ひっ、ひぃぃぃ!」
少年は座り込み、、、
ジョロロロ、、
恐怖のあまり失禁する。
「……おい、」
「ひっ!」
「そんなに俺が怖いか?」
「あ、あ、、、、」
少年は言葉を返すことができない、、
後続の連合軍が続々と到着し始める。
「そうか、、ふぅ、今日はここまでにしよう、、
おい、逃げてもいいぞ!」
「ひぃぃい!」「ひけ、ひけぇぇえ!」「おたすけー!」
蜘蛛の子を散らすように逃げていくベアダイン兵達。
深夜になって、王都前の草原には連合軍2万が続々と到着し、陣をはった。
俺は王都の城門にある塔に向かい、陛下に会っていた。
「陛下! ご無事ですか?!」
「おお! ヤマナよ! 今回も助けられたの! それにしても凄まじいな! また強くなったか?」
「はい、まあぼちぼちと。
ゼノーデン平原の戦いは勝利いたしました、今はガリア方面と王都に軍を割いている状況です。
上陸した敵はどれほどの数でしょうか?」
「うむ、上陸した分は先ほどの1万程度だけじゃ。ただ、海岸に現れた5隻の軍船は巨大でのぉ、ヒューレ海軍もゼノラウト海軍も牽制するのがやっとじゃ。」
「十分です、むしろ、突撃して全滅せずに、牽制し続ける方が賢明な判断でしょう。ゼノラウトも被害は少なくありません。
ガルファングの戦死、シュルトの負傷、指揮官も多数やられました。
力及ばず申し訳ありません陛下、、、」
「何を言うか! ヤマナはじめ、皆の奮戦は伝わってきておる! それを力及ばずなどと言うではない!」
「はっ、失言でした、申し訳ございません、陛下。」
「うむ、早く終戦を迎え、皆を称えたいものじゃの、、」
「はい、そうですね、、」
「それはそうと、城門近くの教会で、そなたの妻が救護活動をやっておるはずじゃ、会いに行ってやれ。」
「!! エリスが! しかし、皆が家族に会えない状況で私だけ、、」
「命令じゃ! 速やかに教会へ行け!!」
「! はっ! 了解いたしました陛下!」
「まったく、、あいつ、新婚のくせに命令せんと妻にも会いに行かんとは、、」
「ほっほ! 素晴らしい命令の使い方じゃ! さすが賢王。」
「ええ、素晴らしいです、王として勉強になります、ゼノラウト8世殿。」
デルハルト王と、ヒューレ王が感心する。
俺は城門を降りていき、教会へと向かう。
教会の中は、王都防衛で負傷し治療をうける兵達でいっぱいだった。
中に入ると、兵たちがざわめいた。
「ヤマナ様!」「ヤマナ様だ!!」
「おれ、さっき見てました! ヤマナ様が1人で1万の軍を撃退するところを!」
「ゼノーデン平原では巨大な竜を倒したと聞きました!」
「ヤマナ様!」「ヤマナ様!」
「あ、ああ、、すまない、人を探しているんだ。」
「ダーリン☆!!」
ヒナコがいた。そういえばエリスの護衛を頼んでいたんだった。
「ヒナコ! エリスを知らないか?」
「こっち! 今、重傷者を見てる!」
「ああ、頼む、案内してくれ。」
重傷者が寝かされている部屋に行くと、エリスがいた。
髪を後ろで縛り、額に汗をかきながら、一生懸命治療をおこなっていた。
とても声をかけられる状況じゃない、、、戸惑っていると、、
「ダーリン、、何してんの?」
「あ、、いや、、」
「お互い忙しいんだから、、今、声かけて会ってあげないとダメだよ。」
「わかった。」
「エリス、、」
「!! あなた! ご無事で、、」
「ああ、エリス、エリス」
俺は手を広げてエリスを抱きしめようとしたが、、
皮鎧が泥と返り血で汚れているのに気づき、ためらってゴシゴシしてると、
どん、
ヒナコに後ろから押されて前にでて、思わずそのままエリスを抱きしめた。
「ああ、エリス、、」
「あなた、、」
「エリス、エリス、、」
「あなた、ご無事で何よりです。」
「心配かけてごめん、エリス、」
「本当に、、、
数時間前、あなたが現れて、王都を攻める1万の敵軍にたった1人で突っ込んでいったと聞いたときは胸が張り裂けそうでした、、」
「ごめんね、、エリス、君を守りたい一心で、」
「本当に、無茶はほどほどにしてくださいね、あなた。」
「ああ、友軍も到着した、もう大丈夫だ。もう行くよ、必ず帰ってくるから。」
「はい、お待ちしております。」
重傷者の部屋を後にしようとすると、ベッドの患者から声をかけられた。
「だ、団長、、」
「!! シュルトか?!」
「、、は、い、、申し訳ありません、、大事な時に、、」
「いやいい! 休んでいろ! エリス、シュルトの具合はどうなんだ?」
「絶対安静です、、左目は、もう、、」
「そうか、、」
「団長、、あの攻撃は、、何だったのですか?」
「……あれは、俺たちの世界にある『銃』と言う武器だ、高速で鉄のつぶてを飛ばし、極めて高い殺傷能力がある。
さらに本陣を狙った敵の召喚戦士は、『レーザーポインター』と呼ばれる、必ず急所に当てるための装置も使っていた。
お前以外で狙われた指揮官は全員頭を吹き飛ばされて死んでいたよ。」
「そうでしたか、、、ルルちゃんに、、感謝しないと、、」
「ああ、ルルに聞いたら、お前の額が赤く光っていたそうだ、間違いなく『レーザーポインター』で狙われていた。それでやばいと思って体当たりしたらしい。ルルが気づかなかったら、頭がなくなっていただろうな。」
「すみません、戦列を、、離れてしまい、、」
「大丈夫だ、お前は良くやってくれた。お前のおかげでゼノーデン平原に連合軍を集結させることができたんだ。シュルトの海軍とヒューレ海軍でベアダイン海軍の牽制もできている。今回、第一の功労は間違いなくお前だ。」
「はい、ありがとうございます、、」
「ああ、後は俺たちに任せて、ゆっくり休んでろ。」
「はい、、、」
「エリス、シュルトを頼む。」
「はい、あなた」
「ダーリン☆ わたしは?」
「……また一仕事頼めるか? ガリアと王都の伝令役をやってほしい。」
「もちろん☆」
「ああ、では明日の朝までは休んでいてくれ。陣へ戻り、アユミたちと合流しよう。」
「うん!」
エリスとの束の間の再会をさせてもらった俺は、ヒナコと共に、王都前の陣へと戻っていった。




