92. ゼノーデン平原の戦い 決着
パパパッ、パパパァッ!
ソウジが素早く手刀とジャブを繰り出す!
俺はそれを手のひらや甲で受け流す。
早い! ケンタ以上の早さだが、重さはそれほどでもない。
タンッ!
ソウジがバックステップで距離を取ろうとする。
距離はとらせせないよ、
後ろに傾いた姿勢で下がるソウジに、前傾した状態でぴたりとついていく。
「はっ!」
後ろにのけぞったまま不利な体勢で、俺の顔面を狙って右の手刀を突き出してくるソウジ、
俺は手刀を右手のひらで左後方へと受け流し、左の掌底で仮面のアゴを打つ。
「がっ!」
後ろにのけぞるソウジ、左足を下げてバランスを取ろうとしたところを、中心線に踏み込む!
「くっ、とぉっ!!」
おお! バク転!! 離脱を計るソウジ、
後ろへまわり、起き上がってきたところをマントの襟を引っ張って引き倒す!
「ちぃっ!」
立ち上がりながら右こぶしを突き出してくる、
ソウジの拳に手の甲をつけて、スーッと引き込む。
前に体勢を崩すソウジ、
「くっ! 『推手』か!」
「お、良く知ってるね。」
手の甲を互いにくっつけながら、けん制しあう。
「昔、中国拳法の漫画で読んだことがある、、
それにお前の戦い方、『捨己従人』という奴か!」
「マンガかよ、、、まあ『捨己従人』は間違ってないね。」
「中国拳法のキャラか?!」
「アホ、リアルだよ、俺は何のキャラでもない、
俺だけ仮面ランナー知っているのは不公平だから教えてやるよ。
俺のは生前趣味でやっていた日本の武術だ、今使っている戦闘スタイルも『続飯』と呼ばれるものだ。
『続飯』とはご飯粒を練って作ったのりの事でな、おれもくっついたご飯粒みたいだろ?」
「!! 普通の人間が火炎竜を倒せるほど強いというのか!!」
「まあな、修行の成果だ。」
「ちい!」
パパパッ パパパパ!!
激しい組み手争いのような攻防が続く!
「ししょーー、すごい、、かんぜんに、ししょーのぺーす、、、」
「え? ルルちゃんホント? さっきのトモナリさんの戦いに比べたら全然地味だし、威力なさそうだし、勝っているように見えないし。」
「わかってないなぁ、、シェリーは、、」
「なによ! レオル! あんたはわかるっていうの!」
「試しに俺の頬をビンタしてみな、遠慮はいらないよ。」
「よぉーーし! 歯ぁくいしばれぇ!」
おもいっきり振りかぶるシェリー、
振りかぶろうと右手を引いたところを、、ルルがシェリーの腕の内側を外に向かって優しく撫でる。
「キャッ、」
右後ろに転ぶシェリー
「ちょ、ちょっとルルちゃん!」
横のルルを見ながら立とうとすると、
ドン、
いつの間にかレオルが正面に立っていてぶつかり、また転ぶ。
「っ!、あんたたちねぇ!」
「ししょーのまねしてみた。」
「!!」
「そういうことだよ、シェリー、
俺たちは二人がかりで、シェリーの意識をそらしながらやってみたけど、師匠はこれを一人で、それもあの白い戦士を相手に真正面からやっているんだよ。パワーとか魔力とかじゃなく、本当に美しいほど純粋な技なんだよ。
師匠はあえてそれを俺たちに見せてくれているんだ。」
「……そ、そうなのね、 ありがとう。何を見るべきかわかったわ。」
「ああ、」
「さすがだな、レオル。」
「まだまだだよ、早いとこ、兄弟子に追いつかないと。
フィオナを安心して預けるなんて、よっぽどだよ。」
「そうか、私も弟や妹たちに追いつかれないよう頑張らんとな。」
ケビンとレオルが、ヤマナの戦いを見ながら話す。
「すごい、奇麗、、」
「え? ちょ、ちょっとアユミ、 アユミも技がわかるの?」
「ううん、シェリーちゃん、 技は全然わかんない、
でも、フミオさまの気が白い戦士に流れて、白い戦士の気も自分の中に受け入れて、、穏やかに混じりあった二人の気がフミオさまに導かれていく。
白い戦士とトモナリさんの時は互いに強大な気を出し合って、決して交わることなくぶつかり合っていたのに。」
「そうだね、あるじさま、あたしと繋いでいるときより楽しそう。 ちょっと嫉妬、、」
いつの間にか顕現して、アユミと手をつないでいるフィオナが言う。
「かー、アユミ姉のほうが俺たちよりよっぽどすごいや、、
今度、気の流れの見かた、教えてくれよ。」
「いいわよ、レオル。」
「……私もお願いしたい。」
「は、はい、ケビンさん。」
「ラン…」
パシッ!
「くっ!!」
ソウジの技を、発動前にことごとくキャンセルする。
「ふう、目的は達成されちゃったかな?」
ベアダイン兵は俺とソウジが戦っている間にほとんど撤退していた。
我先に逃げると、草原から森に入る街道が詰まり、渋滞が発生してなかなか撤退できないだろうが、整然と撤退することにより、効率的に撤退していた。おそらくソウジの指示であろう。
「どうする? ソウジも引くなら手を出すつもりはないが、、」
「……いや! まだだ! まだ戦う! オオオ!!」
ソウジが渾身の突きを放つ!
しまった、遅れた! いなせない! バックステップでかわす。
やべぇ、距離を取られた!
『ペンタグラムダッシュ!!』
ズバババババ!!!
ソウジが俺を中心に星印を描くように、ストップ&ゴーでダッシュする!
「ぐあぁぁぁ!」
5方向から衝撃波に襲われ、切り刻まれる!
『ランナァーーーア! パーンチ!!』
「ぐっ!!!」
かわしたが、衝撃波で吹き飛ばされる!!
……くそ、しくじった! 油断して自分の間合いを手放してしまった!
「ちぃ、、」
ダメージに膝をつく。
くそ、ここまで練った気も振り出しか、、
ワンミスでこれかよ、、これだからチート野郎どもは、、いや違う、俺の油断だ、今回は
『ランナーァ、ダッシュ!』
くそ! 調子に乗るな!
『追い風!!』
なんとか追い風で後を追い、ぶつかって一緒に転げる!
一緒になって倒れた二人が、ガバッと起き上がる!
正座の姿勢で、左隣にいるソウジのあばらに、左手の中指の第2関節を立てた一本拳を打ち込む!
「ぐあ!!」
あばら骨を折られ、苦し紛れに左手の手刀で突いてくるソウジ!
右手でソウジの手刀を取り、関節を決め、、投げる!
「ぐッ!!」
腕を折られないよう飛ぶソウジ、俺は正座のままそれを左の地面に叩きつける!
「がっ!!」
また関節を決めたまま持ち上げ、右の地面に叩きつける!!
「ぐ!、が!、あっ!」
正座のままソウジを濡れタオルを叩きつけるように、ビッタン、ビッタン左右に叩きつける!
「ぐぅぅうう!」
呻きながら耐えるソウジ、そう簡単には逃さねえよ。
「ソウジさん! がんばれーー!」
「ソウジさん!! 立って!」
「ソウジーーー!!」
ベアダイン軍の居た陣地から声が上がった!
ずいぶん若い連中が数十名残っている、ベアダインの少年兵達か?!
「な、なんでだ?! あいつら、、なんで退却していない!」
「ソウジさん負けるなーー!!」
「ばかやろう!! 何のために俺が体張っていると思ってんだ、、っぐ!」
俺に投げられながら、ソウジが叫ぶ。
「「「ソ、ウ、ジ! ソ、ウ、ジ! ソ、ウ、ジ! 」」」
「お前ら、、ウオオオオォォオオ!」
バギャ!
ソウジが俺に極められた左手を折って離脱する!!
ソウジは応援する仲間を一瞬見た後、、
「天知る、地知る、俺を支える仲間たちが知る!!
仮面ランナー ソウジ!
参る!!」
ソウジの体から白い闘気が噴き出す!!
「フミオ ゼン ヤマナ、受けて立つ!」
多少無理がかかるが、、体内で練り上げた気を、アユミのおかげで得た龍王の気に変換する!
数秒、間を置いた後、、ソウジが先に動いた!!
『ランナァーーーア、キィーーーック!!』
来た! 今まででより一際白く輝いたロケットが俺をめがけてまっすぐ降ってくる!
自然体で緩やかに立ったまま、両腕に気を巡らせて集中!
ソウジの足が胸に命中する瞬間、 左足を踏み込んで半身になり、左腕を下に、右腕を上に回してソウジの足を抱え込み膝とアキレス腱を極めた『変則アキレス腱固め』に取る!
バリバリバリ!!!
皮鎧の一番ぶ厚い胸の部分が、バラバラになってえぐられる!!
バヂッ! パンッ、パンッ!!
鎧の上半身部分が、気のぶつかり合いに耐えられず、パーツ毎に壊れて弾け飛ぶ!!
ソウジの足を抱える両腕も焼けるように熱い!!
「どっっせぇーーーーーーーい!!」
後ろへ倒れこみながら、抱え込んだ脚を支点にしてソウジを地面に叩きつける!
ドッゴーーーン!!
ソウジが地面に激突し、大地が爆発する!
俺も後ろに吹っ飛び、大の字に倒れこむ。
「はあ、はあっ!」
やべぇ、両腕が真っ赤になってもう動かねぇ、 皮鎧が吹き飛んで、上半身裸だよ、龍王の気で強化して無かったら、ミンチにされてたな、まったく。
「どっこいしょっ とぉ!」
何とか立ち上がる。掛け声しないと、立ち上がれないとは、、おっさんだな、俺。
見ると、ソウジも大の字になっている。
胸が大きく上下しているところを見ると、生きているようだ。
よろよろと、ソウジの元へと歩いていく。
「ソウジ様!」「お願いします! ソウジ様を殺さないで!」
「ソウジ様の代わりに私たちを殺してください!」
「「「お願いします! お願いします!」」」
少年兵たちが悲壮な声で叫ぶ。
……どんなふうに思われているんだ? 俺、、
ああ、そうか、こいつらには火炎竜ぶった斬ってタツヤを殺した怖い人という印象しかないのか。
とりあえず、殺す意思はないよと、ヒラヒラと手を振っておく。
「よぉ、生きてるか? ソウジ。」
「……ああ、負けた、、」
「いや、ダブルノックアウトだ、俺ももう戦えん。それに俺は勝敗なんてどうでもいいしな。」
「……そうか、、頼みがあるんだが、、」
「あいつらの事か? もちろん手を出さないよ。ゼノラウトへ来てもいいぞ。」
「!! いいのか?」
「ああ、俺のところには、孤児院もあるし、学校もある、」
「学校があるのか!」
ガバッと上半身を起こすソウジ。
「ああ、思想的なことは一切教えてない。読み書きそろばんが中心だ。ベアダインには学校はないのか?」
「……おれ、あっちの世界で教師だったんだ、、ベアダインは学校はなく、6歳から即軍隊でな、、、」
「そうか、、ところで来月、テリクスで教員採用試験があるんだが、受けないか?」
「採用試験は難しいのか?」
「ああ、面接のみだが厳しいぞ、ちなみに面接官は俺と妻の2人だ、2人で経営している学校でな。」
「ぜひ頼む!」
「ああ!! 歓迎するよ!」
ガッシと握手を交わす俺とソウジ、そのまま引っ張り上げて立たせてやる。
ソウジに肩を貸し、ベアダインの少年兵たちのところへ行き、ソウジを渡す。
「はらへった! メシにするか! お前たちも来い! ゼノラウトのメシはうまいぞ!」
戸惑う少年兵達。
「みんな、ごちそうになるとしよう、大丈夫だ。」
「「「はい! ソウジ様!」」」
「ししょーすごかった!!」
「「フミオさま!!」」「師匠!」
「ああ、ありがとうお前たち。 おい! デメトリオ! このゼノーデンの戦いは停戦だ!
全軍に通達しろ! あとあそこにいる兵たちは丁重に迎えろ、敵ではない。」
「ははっ!!」
「ハルバルト! ギルファングと共にガリアへ行け! ベアダイン軍の撤退を見届けろ!
抵抗するようならすぐにこの平原の本軍に連絡しろ! 後詰する!」
「「ははっ!!」」
「ヤマナ様、デルハルト軍の一部もガリアへ行かせてください! 恩あるガリアへぜひ!」
「セルンド、ありがとう。よし、3千ほど出してくれるか?」
「はい!! ギルファング殿、お願いします!」
「ありがとう、こちらこそお願いします。セルンド殿」
「ハラ減ったーー!! メシにするぞ! お前たち!」
「「「はい!!」」」
3日目、、ずいぶんと長い事戦っていたような気がしたが、こうしてゼノーデン平原の戦いは幕を閉じた。




