74. ヒナコの野望
「ヤマナ様、すみません、、私一人では書類がたまる一方でして、、」
デメトリオが申し訳なさそうに言う。
「……いや、俺の仕事だしな、、
むしろ不在の間、よく頑張ってくれた、感謝する。」
横と前と上を書類の山で埋め尽くされ、真っ白になった机らしきもの、を見てヤマナはげんなりする。
「それにしても、、この書類の山、
テリクスで何が起きているか、ざっくり説明してくれないか?」
「は、はい、まず人口は昨年度比1.5倍になっております。
テリクス市内はもちろん、新ヴィエラ村の発展が目覚ましく、もはや村でなく町です。」
「そうか、リュカが頑張ってくれたおかげだな。」
ヤマナは新ヴィエラ村の横を通る時に見た、数多くの建築中の家を思い出す。
「工業製品の生産量に至っては、2年前、これは最低だった時期ですが、そのときの5倍になっております。
優秀な技術者が集まり、労働者の意欲も非常に高いです。
製品の質も非常に高く、メイド イン テリクスということ自体がブランドになりつつあります。」
「そ、それは良いことだな。」
「貿易、商業の発展も凄まじいです。
領内の店舗数はこの2年で3倍に、ヒューレ、デルハルトの交易路も開かれました。」
「おお、デルハルト陛下やリカードと描いた絵の通りになったな。」
「農業の生産量も2倍になりました。
テリクス湖畔の開拓は大成功です、まだまだ農地は広がっています。」
「おお、喜ばしいことだ! これでみんなが食っていける!」
「しかし、しかし、行政府の人員は1倍です、、
いやむしろ、帝国闘技大会でヤマナ様がいなかったぶん、処理能力は大きくマイナスです、、」
「す、スマン、デメトリオ。
本当に何か考えないとな、、まずは優先度の高い案件から出してくれ。」
「はい、こちらの束です。」
「………………」
束というより、塔になった書類を見て、絶句しつつも取り組むヤマナであった。
「ダーリン、お弁当持って来たよー☆」
ヒナコがお弁当を持って来てくれた。
アユミ達は今日から学校に通っている。
「あ、ああ、ありが、と、う、、、」
書類の山の中から顔を上げるヤマナ
「ど、どうしたの、目の下にクマが出来てるよ!
朝見た時より20は老けたみたい!」
「………ああ、『高度情報処理』の能力にブーストかけて仕事してたからな、、」
「手伝おうか?☆」
「何? 書類仕事出来るのか?」
「私、元税理士だよ。」
「ふぁっ?」
「一応、K大出身だよ。」
………マジか、俺より全然高学歴じゃないか、、
高火力、高機動、高燃費、高学歴、高収入
何Kだよ、、
「この書類、わかるか?
金額の大きなものはチェックすることになってるんだ。」
「ふんふん、、税金の申告だね、
ええと、損益計算書、あっちの物とはちょっと形が違うけど、売上がこれで粗利がこれだからここからこうなって、、 税引前利益はこれか、 んー、テリクスの税率がここに書いてある通りだとすると、、 ここから出てくる金額はっと、、
あってるね。
申告の金額、OKだよ、これ。」
「ヒナコさん、、」
ヤマナはまっすぐヒナコの瞳を見つめる。
「なあに? ダーリン☆」
「採用!!」
「え?」
「頼む! 手伝ってくれ!
月給は小金貨50枚でどうだ!」
「お金より、ダーリンと同じオフィスで仕事出来るなら良いよ☆
あと私は秘書って肩書きで☆」
「わかった!
大きめの部屋を用意してそこを俺たちのオフィスにしよう!
助かる!」
こうしてヒナコはその能力を買われてテリクスの行政府で働くことになった。
「………………ぐふふ、社長と秘書、そのうち禁断のオフィスラブに………」
「ん? 何か言ったか?」
「ううん、何でも☆
それより社長、この書類ですが、ここが、」
メガネ クイッ、のポーズをとりながらヒナコが書類を出す。
「どれどれ、ヒショコ君」
ヤマナも結構ノリノリだ。
何にせよ、一人で憔悴しきって仕事をしていた頃に比べれば、ヒナコと二人で仕事をする事により、ずいぶん楽になったようだった。




