73. 家に帰るまでが大会です。
ヤマナ達一行はデルハリアに到着、そこで一泊した後、デルハルト王やトモナリと別れ、ゼノラウトへの帰途についた。 ここから先は良く知った道だ、順調に旅は進み、国境を越え、ゼノラウト領内へと入った。
「団長! おかえりなさい! 優勝おめでとうございます!!」
ハルバルトだ、レガト砦横の国境の門に守備兵達を整列させて待っていた。
「おう! お前たち、勝ったぞ!」
そう言って馬を降り、拳を天に掲げる。
「「「団長! 万歳!!」」」
兵たちが拳を掲げる。
「応!」
ヤマナは掲げた腕を、ハルバルド達と、兵達と、ガシガシとクロスさせていく!
「団長!」「団長!」
兵たちが誇らしげな顔で腕を交わしていく。
一行はレガト砦を後にし、峠を下り、街道を行く。
「りょーしゅさま!!! おかえりー!」
新ヴィエラ村の横に差しかかると、リュカ村長と村民たちが迎えてくれた!
「おお、リュカちゃん!! ありがとう!」
ヤマナが馬から降り、リュカを抱きあげる。
「「「あーー! いいなー☆!!」」」
ヒナコたちが叫ぶ。
「リュカちゃん、村のみんなも元気だな、ありがとうな、俺のいない間に村も発展しているようだ。」
リュカを抱き上げたまま村のほうを見る。
「うん! みんなでいい村にしようと頑張ってるんだよ! いつもみんなで話し合って!」
「そうか! やっぱりリュカを村長にして良かった! これからも頼むよ。」
リュカをおろし頭をなでる。
テリクス市では城門の前1kmほどから、祝福する住民たちが並んでいた。
ヤマナが通るときに、野原で集めてきた花びらをまく。
「領主様ー!」
「領主様万歳!」
「優勝おめでとうございます! 領主様!」
舞い散る花びらの中、テリクスに入城するヤマナ、そして屋敷の前で待っていたのは、
「おかえりなさい! あなた!」
「エリス!! 今 帰ったぞ!」
走り寄って、抱き合う二人。
「キャー、ダーリン☆ キャー」
「フミオさま! キャー!」
「キャー! キャー!」
ヒナコとアユミとシェリーが騒ぎ出す!!
「?? こちらの方たちは? あなた、」
「ええと、帝都で、、」
「愛人のヒナコで~す☆!!」
「ぇ、ぇぇと、愛人のアユミです!」
「愛人のシェリーです!!!」
「ロイスだよ!!」
ついーーっ とヤマナを突き放すエリス、
にっこり笑って、
パタン、
屋敷の中に入って扉を閉めた。。
「あああ!! エリス! 誤解だって!! ちょっと!」
ガチャガチャ!
カギがかけられて扉は開かない!!
「エリスさん? エリスさん? お話を! 話し合いぅをー!」
「ダーリンってさー、
絶対尻に敷かれるタイプだよね~ ☆」
ヒナコの意見にコクコクとうなずくアユミとシェリー
「うるさい!! 誰のせいでこうなってると思ってるんだ!!
ちょっと、エリスさん? 聞こえてますか?」
ギィィィイイ、 と音を立てて開く扉、
おかしい、扉は手入れが行き届いていて、音はしないはずなのに、、
エリスが顔を出して、
「ようこそテリクスへ、皆さんどうぞ。」
と、にっこり笑って、ヒナコたちを招き入れる。
ふう、と一息ついてヤマナが屋敷に入ろうとすると、
「あなたは働いてらっしゃい、
お仕事たまってるわよ、まだ日は高いでしょ。」
と、ヤマナを突き放す。
「ええええええーーー!」
ヤマナがあぜんとする中、ヒナコ、アユミ、シェリー、ロイス、フィオナが屋敷に入っていく。
んんん? フィオナ??
目をゴシゴシこするヤマナ、
「まてまてまてまて!」
ガチャンと閉じてカギがかけられる扉、、
「ちょっと待ってー! 違うんだってばー!」
ヤマナの叫びがこだまする。
「エリスと申します、テリクスで神官を務めさせていただいております。みなさんよろしくお願いします。」
エリスはヒナコたちに深々と頭を下げる。
「ひ、ヒナコと申します! よろしくお願いします!」
「アユミです! よろしくお願いします!」
「シェリーと申します、よろしくお願いします!」
「ロイスだよ!」
「あたしはフィオナ、よろしくね。」
「「「「 フィオナ?!! 」」」」
白い髪、白い肌、白いワンピースの少女に視線が集まる。
「え? みんなどうしたの?」
フィオナが首をかしげる。
「ほんとだ! この気配!
やっぱり精霊だったのね、フィオナは!」
エリスがびっくりして叫ぶ。
「え? この子が! かわいい☆」
「う、うむ、あたしは日本刀の精霊、フィオナ、普段はあるじさまの腰の刀に宿っておる。」
両手を腰に当て、エッヘンのポーズをとるフィオナ。
「あらためてよろしく、フィオナさん!」
「うん、エリスの声はずっと聞いていたよ。あるじさまを守る約束したしね。」
「あの人を守ってくれてありがとう、フィオナさん。」
そう言ってエリスはフィオナの手を両手で握る。
「うん、エリスと約束したからな!」
にぱっとフィオナが笑う。
『リュカと約束したからな!』
魔獣退治の時のヤマナの言葉を思い出す。
……ああ、やっぱりあの人の精霊だ、間違いない。
「ありがとうね、ありがとうね。」
「エリスとも話ができたし、そろそろあるじさまの元に戻るね。」
「うん、またね、フィオナ」
フィオナはキラキラと光の粒になってヤマナの元へと戻っていった。
「ええと、ごめんなさいね、」
「いえいえ! こちらこそ!
改めて自己紹介を、わたしはヒナコ、
ダーリンとは闘技大会で戦って、負けて、
私、所属する国とか無いから、
それで勝手についてきたの……
ごめんなさい、、」
「あの人がテリクスに来いって言ったんでしょ?」
「は、はい、テリクスに来ないかって言ってくれて、、」
「テリクスへようこそ、歓迎するわ」
にっこり笑うエリス。
「!! ありがとう。」
「あの、私はアユミ、私も召喚されて、でも戦えないから捨てられて、飢え死にしそうなところをフミオさまに助けていただきました。
あの、、お願いします! 役に立って見せますので、ここに置いてください。」
「大丈夫よ、 あの人、これまで何十人、孤児を拾ってきたと思っているの。
それにアユミちゃんからはあの人と同じ空気を感じるわ、あの人がそばに置いておきたがったんじゃないの?」
「!! わかるのですか? 私は…」
「ううん、今は詳しく言わなくて良いわ、よろしくね、アユミちゃん」
そう言ってアユミの髪をなでる。
「私はシェリー、こっちは弟のロイス、エルフの島出身です。
アユミの友達で、、フミオさまの弟子になりたくって、、」
「そう、、エルフの島、、大変だったわね。。」
そう言ってエリスはシェリーとロイスを抱きしめる。
神官のエリスは知っている、エルフの島は魔族に滅ぼされたことを、、
「私は、わた、しは、、、ぁ、あ、うわぁぁぁああん!」
いつも気丈なシェリーがエリスに抱かれたまま号泣する。
「大丈夫よ、ここにいなさい、」
そう言ってシェリーとロイスを抱きしめて頭をなでた。
ヤマナは屋敷の玄関の石段にぼんやり座ってブツブツ言っていた。
「なぁ、フィオナ、もう一回、顕現して中の様子、見てきてくれよ。」
刀に帰ってきた精霊のフィオナと会話をする。
---大丈夫だよ、エリスは。きっとみんなを受け入れてくれるよ。
「いや、それより、俺を受け入れるように言ってくれよ……」
---あるじさま、、自分の心配かい、、、自分でなんとかせい。
「ええーー、そんなーー」
「アユミちゃん、そろそろドアを開けてあげて。」
「はい! エリスさん!」
キイー と開くドア、
「あのー、フミオさま、、」
「あ、、アユミ、、」
「エリスさんが入って来てって、、」
「怒ってない?」
「いえ、全然」
「ほんとに?」
「はい」
「本当の本当に?」
「……どんだけビビりなんですか? フミオさまは大陸最強の戦士でしょ?」
「だってさーーー」
「いいからさっさと入ってください!」
初めてアユミがヤマナに強く言う。
アユミの後ろから、ちっちゃくなってヤマナが入ってくる。
「フミオさん、聞いたわよ、この子たちを引き取ったんでしょ?」
「う、うん、いいかな?」
「もちろん良いわよ。ちゃんと私たち、話しあったし。」
「ありがとう! エリス!」
「頑張ったんでしょ、戦いも、この子たちを守るのも。」
「うん!」
エリスが両手を広げて、そこに吸い込まれるようにヤマナが抱きしめられる。
「あのね、、エリス、」
「なあに?」
「左手、出して、」
「 ?? 」
エリスが左手を出す。
ヤマナが左手でエリスの左手をとり、右手でポケットから指輪を出し、、
エリスの左手の薬指に指輪をはめる。
小ぶりだけど、上品な宝石の入った指輪だ。
この世界にはそんな風習は無いようだが、エリスは指輪に込められた特別な思いを感じ取ってハッとする。
「キャー! エンゲージリング☆!!」
「キャー! フミオさま!! 婚約指輪ですか! キャー!」
ヒナコとアユミが色めき立つ!
「あ、ありがとう、、」
エリスがぽろっと涙をこぼす
「う、うん、 ごめん婚約指輪が遅くなって。」
「ううん、うれしいの、ありがとう。」
ヤマナとエリスは抱きしめあって、周りでキャーキャー言う女子達をしり目にキスをした。




