72. 夢で逢えたら
旅は進み、一行は昼食のために休憩をとっていた。
明日には王都デルハリアへと到着する予定だ。
ヤマナは幌馬車の中で、愛刀のフィオナを抱えるように座って、うつらうつらしていた。
帝都からの旅が始まって数日、ヤマナは一度も熟睡していなかった。
いままで『空間把握』による索敵を一人で引き受けていたため、座って体を休めることはあっても、必ず片目は開け、完全に意識を手放すことはしていなかった。
だが、今はアユミがいるため、やっと安心して仮眠をとることができた。
「あるじさま、、、あるじさま、、、」
ヤマナは言葉をかけられ、声のする方へ顔を上げる。
「あるじさま、、やっと、やっと逢えた、、」
風で波打つ緑の草原に、白いワンピースの少女が立っている、装飾品は何もつけていない。
髪もまっしろ、くりりとした大きな目、白い肌、足ははだしだ。
白い少女は、ひまわりのような笑顔をうかべ、木陰で木を背に座っているヤマナの首に抱きついた。
「フィオナ、、」
ぼんやりした意識の中で、そう名前を呼んで一瞬ヤマナは戸惑う、
「そうか、、フィオナなんだな、やっぱりかわいいよ、、」
「あるじさま! うれしい!!」
「ああ、ああ、、、ごめん、ちょっとぼんやりしてて、、、」
「ここはあるじさまの夢の中だから、、あるじさまはぼんやりしていて当然だよ。」
「ああ、そうなんだ、、、」
「あるじさまのおかげで、一緒に戦ってたくさんレベルが上がって、あるじさまとのつながりも強くなって、こうして話せるようになったんだよ!」
「そうか、、よかった、、」
そういって、ヤマナは首に抱きついているフィオナの髪をゆっくりなでる。
「あるじさま! あるじさま!」
フィオナはヤマナにギュッと抱きつき、頬ずりする。
「旅の途中だから、、ヒゲ剃ってないんだ、、、嫌じゃないか? 」
「ううん!!
あるじさまが好き!
あるじさまのおひげが好き!
あるじさまの目が好き!
あるじさまの手が好き!
あるじさまが、あたしを振るってくれるのが好き!
あたしは、あるじさまの全部が好き!」
「ああ、ありがとう、フィオナ、、」
そうして、ヤマナは夢の中でフィオナを感じながら、自分の意識を手放していった。
2時間ほど仮眠の後、、
「ゆめ、、じゃないな、
そうだなフィオナ。」
ヤマナは座ったまま、フィオナに語りかける。
---はい、あるじさま
フィオナはヤマナの意識に返事を返す。
「そうか、ありがとうなフィオナ、
お前のおかげで俺は今日まで戦ってこれたんだ。これからもよろしくな。」
---はい!! あるじさま、あたしこそよろしくおねがいします!
「ダーリン☆、ゆっくりできた?」
ヒナコが幌馬車の中に温かい飲み物を持ってきた。
「ありがとう、助かる、
ああ、久しぶりによく寝たよ、もう大丈夫だ。」
「ほらー! やっぱり無理してたんじゃん☆」
「フミオさま、、あまり無理しないでください、、」
アユミも馬車の中に入ってきた。
「ああ、すまん、気を付けるよ、そろそろ出発か?」
「ダーリンがご飯食べたらね☆
それまでは力づくでも出発させないから!」
「そりゃこわい、じゃあメシにするか!
アユミ、俺のメシはあるか?」
「はい! ここに持ってきました!」
アユミがパンを一つと、大き目のマグカップに入ったスープを渡す。
「おお、シチューか、うまそうだな!
ん? おおきな肉が入っているじゃないか、干し肉じゃないな。
これはどうした?」
「シェリーちゃんがウサギとって来ました。
すごいんですよ、野営するなり、弓矢ですぐ5匹もとってきたんですよ!
『大きなもも肉、フミオさまに!』って。」
「そうか、後でごちそうさま言わなきゃな。」
守るつもりが、守られているんだなぁ、、
自分一人でなんでもやろうとしていたことを反省するヤマナだった。
「よし、じゃあ出発するか!」
「「「「しゅっぱーつ(☆)!!」」」」
子供達とヒナコが右手を晴天の空に突き上げて元気よく叫んだ。




