69. 帝都郊外
ヤマナ達はテリクスに帰るために、ヒナコ、アユミ、シェリー、ロイスの4人を連れて、帝都郊外でのゼノラウト王国、デルハルト王国の一団の集結地点に向った。 そこでは、アルカナ帝国の皇太子フリード殿下と、ガルスト王国のガルスト3世陛下がヤマナを待っていた。
フリード殿下はみずから兵を率いて、優勝賞品を乗せた馬車を持ってきてくれていた。
ガルスト王国は、アルストア大陸の西端にある大国である。
その先には海を渡った大きな島にエルフの島があった、というのはエルフの島はその先の魔大陸から来た魔族に滅ぼされてしまったからだ。
シェリーやロイスなどはその時島から逃げてきたエルフ達だ。
現在、ガルスト王国は海を渡って攻撃を仕掛けている魔族と交戦している状況だ。
アルストア大陸中の国家はほぼ全て、なんらかの形でガルスト王国 への支援を行なっている。
「ヤマナ殿、突然押しかける形になって申し訳ない。
折り入って頼みたいことがあり、皇太子殿下にお願いして訪ねた次第です。
戦士にとって、技というものは、秘匿すべきもの、生命線であることはわかっております。
そこを、曲げてお願いいたします。
私の配下の者に、貴方の退魔の剣をお教えいただけないでしょうか?」
ガルスト3世がヤマナに頭を下げる。
「へ、陛下、まずはお顔をお上げください。
申し訳有りませんが、いきなりのことで、私の方も理解が追い付けてませんでして。」
ヤマナがうろたえてガルスト王に応対する。
だが、続けてフリード皇太子殿下も続けてヤマナにお願いする。
「ヤマナよ、私からもお願いしよう。
私の親衛隊の中で魔法剣の素養のある数名も含め、退魔の剣を伝授して欲しいのだ。
この者たちは、いずれ魔族との戦いに命をかけて戦う者たちだ。
アルストア大陸の国々と、侵攻してくる魔族との戦いは、今非常に厳しい。
実は今回の闘技大会も、勇者ユウキに続く、魔族と戦える可能性のある人材を探すためであったのだ。
結果としては、戦える可能性どころか、一撃で強力なデーモン4体を倒す、我々の希望となるほどの人物が出て来たわけなのだが。
ヤマナは教えることにも長けている。それはケビンを見れば明らかだ。
この大陸の人々の為に、ヤマナの技を教えることを引き受けてはくれぬか?」
フリード皇太子殿下に、ここまで言われてはさすがにヤマナも察する。
魔族との戦いは相当苦しいのだろう。
そしてガルストが敗れれば、魔族の脅威は大陸中に波及するのだ。
「ガルスト陛下、フリード殿下、今まで察することのできなかった私の不明をお許しください。
わかりました、できうる限りのことをさせていただきます。
ガルスト王国とアルカナ帝国の勇士達をお預かりいたします。
他に出来ることがあればお申し付け下さい。」
「おお、ありがとう、ありがとうヤマナ殿!」
「助かるぞ、ヤマナ!」
こうしてヤマナはガルスト王国の精兵8名と、アルカナ帝国の親衛隊12名をテリクス領へ連れて帰り、稽古をつけることとなった。
親衛隊の中には、ケビンの姿もあった。
「また一緒に稽古が出来るな、ケビン。」
「はい! 先生、よろしくお願いします!」
「俺の一番弟子であるお前に、この20名の取りまとめをお願いしたい。よいか?」
「はい、よろしくお願いします! 先生。」
「ああ、みんな、よろしくな。」
いきなりヤマナに頭を下げられて戸惑う精兵達、それを見てケビンが号令をかける。
「全員整列! よろしくお願いします!」
「「「よろしくお願いします!!」」」
「ああ、普段は楽にしていてくれ、俺に言いにくいことがあれば、ケビンに言ってくれてもいい。すまんが、自己紹介は後にしてくれ。
ゼノラウト王とデルハルト王を待たせているのでな。」
「「「はい!」」」
「すみません、陛下、お待たせしました。」
「もうよいのか?」
「はい、ガルスト王国と帝国から大事な精兵をお預かりしました。ゼノラウトへ帰りましょう。」
「あら、その可愛い子達は? それにその女性は一回戦の、」
テレシアがヤマナの後ろにいたアユミ達に気がつく。
「みんな住むところの無い子達です。テリクスで引き取ることにしました。
ヒナコは属する国がないので、テリクスに来たいそうです。
すみません、戦力の偏りを考えると、フリード殿下に相談すべき案件でしたか?」
「いや、ヤマナのところであれば問題ない、私はヤマナを信頼しているからな。
だが私が要望した時には、ヤマナとヒナコが助力してくれる件は考えて置いてくれ。」
「はい、殿下の要請であれば、必ず馳せ参じますとも。ここで約束いたします。」
「うん、ダーリンと一緒なら飛んで行くよ☆!」
「おお、そうか! 二人ともありがとう!」
「殿下、お世話になりました! テリクスの芋が収穫できたら送りますね!」
「おお! あれはうまかった! 待っておるぞ!」
「はい! それでは出発いたします。
ゼノラウトに向けて、しゅっぱーつ!」
「「「「しゅっぱーつ ☆!!」」」」
子供達とヒナコが続いて叫ぶ。
さあ、帰ろう我が家へ!




