64. 帝国闘技大会準決勝 VS勇者
『勇者』
ファンタジー系では最強の存在だ。
ラノベでは引き立て役とかいじられる系の脇役が多いが。
準決勝の相手の勇者ユウキは、帝国の召喚戦士で勇者だ。
なんのゲームの勇者かは知らんが、剣と魔法を両方使う、王道勇者というのは分かってる。
帝国の勇者、ユウキの試合はやはり特別らしい。
ロイヤルボックスには皇帝とフリード皇太子殿下はじめ各国の王族が入っており、幾重の警備と防御魔法が張られている。
うちの王様と王妃様の席は、かわいそうに一番隅っこだ、テーブルもなく、ただの箱に座らされている。
そんな中、闘技場に入った時に、寝不足のせいか堪えきれずあくびをしてしまった。
う、めっちゃニラマれている。
ユウキからとんでもない闘気が吹き出した。
「ダーリン頑張って☆
合図したらいつでも援護射撃するからね☆」
ヒナコが指で、バキュン☆ のポーズをとる。
冗談でもやめれ、
ミサイル誤爆のフラグにしか思えん。
とりあえず、ヒナコとその隣のアユミに手を振る。
うわ、勇者の闘気がまた上がった。なんだこいつ?
イラチなのか?
観客のものすごい『ユウキ』コールの中、試合開始が告げられる。
「準決勝第一試合、ユウキ アル カトウ 対 フミオ ゼン ヤマナ はじめ!」
「雷竜召喚!」
いきなりかよ。
勇者が叫ぶと上空に雷雲が現れる!
真っ黒な雲に幾筋もの雷が走る!
「雷神剣!」
大上段で雲から極太の雷を受けて勇者の剣が青白く輝く!
「喰らえ! サンダァーア、スマーッシュ!」
あ、そこは横文字なんだ。
まっすぐ縦に切ってくる。
勇者の左、シールドがある側に『入り身』してかわす。
うお、すこし近づいただけで少しバチっときた。あちっ、
勢い余って地面を攻撃する勇者、大爆発が起きる。
威力、やべぇな、俺の『稲妻』より上かも。
あ、フィオナがバチバチ言っている。
いや、フィオさん?
こんなのに張り合おうとしなくていいからね。
「女連れのチャラ男が、よくぞ避けたな!」
なに?
こいつ、若者が40過ぎの地味なおっさんにチャラ男とな?
よし、乗ってやる。
「チャラくないですぅ~
緑髪で、額に宝石つけて、金銀装飾の入った剣と盾のチャラ勇者に言われたく無いですぅ~
あれぇ??
そのピアス、チャラチャラ音がするんですけどぉ?」
刀をヒラヒラ振りながら挑発する。
フィオさんもピカピカ光で挑発しとる、、
「うぐぐ、ぬが、がぁあ!」
勇者が歯ぎしりしながら向かってくる、
今度は相手してやるよ。
「スラッシュ!」
「スラッシュ!」
威力は大きいし振りは早いけど、単発じゃあねぇ、
単調だし技の間が隙だらけだし、当たらなければどうということもな、、
「飛燕剣!」
おっと、2連撃だ、ヒュンヒュンと振られる剣を右へ左へと受け流す。
「シールドチャージ!」
お、うまい、近づいて接近戦を試みたらハジかれた。
チャージの後、突っ込んで来たところをかわし、すれ違いざまに盾を腕に固定していたベルトを切る。
驚いて向きを変えようとする勇者に、こっちも2連撃だ!
ヒュヒュッ、と飛燕剣とやらより早く正確に刀を振り、右の肩当のベルトを切って飛ばす。
ずっと早く、正確な剣だということが分かったのか、勇者が目を見開く。
ベルトだけ切るなんて真似、ゲームキャラにはできんからね。
ババッと後ろに下がった勇者が盾を捨て、地面に手のひらをあてて叫ぶ!
「おおお!『炎狼召喚!地狼召喚!雷狼召喚!!!』」
勇者の前に岩の狼、右に炎の狼、左に雷の狼が現れる!
いずれも体長2mほど、大型で威圧感も半端ない。
「いけっ!!」
「「「ゴァァァアア!」」」
3匹の狼が襲ってくる!
雷狼がジグザグに突っ込んできた! 早い!!
ガシュッ!
何とかいなす。
「ブオォォォオオ!!」
炎狼が口から極太の炎を吐く!
「ぬぅ!!」
フィオナで薙ぎ払い、炎を消す!
「グルゥァァアアア!」
岩狼の突進!
スッと少し左へかわし、喉笛に左手を添えぶん投げる!
ゴ、ガガッ、ガガガン!!
岩狼がもんどりうって転がっていく。
「もらったぁ!!!」
……叫びながら斬るなよ、勇者、、
サラリとかわす。
勇者と3匹の狼が俺の周りを囲み、機会を伺う。
やれやれ、、
右足を少しだけ前に出し、楽に立つ、
両手をだらりと垂らし、右手だけでフィオナを持つ、
目は半眼、焦点はぼかし、、、
「『空間掌握』発動……」
弛緩して立つ俺に一瞬戸惑い……
狼どもが襲い掛かってくる……
雷狼か、ジグザグに動きフェイント入れまくりだな……
分かるぞ、右前方から入ってくるところを斬る……
フィオナの力で雷狼が消滅する……
岩狼が正面から突っ込む……
領域接触……
唐竹割で真っ二つになり消滅する……
左後方から炎狼か……
一段と体を燃やし、大きな炎の塊となって突っ込んでくる……
問題ない……
スウッと後ろを切り上げ、炎狼をかき消す……
分かってるよ……
炎狼の陰から斬りかかるの……
勇者が炎の中から斬りかかってくる……
そこは入って来ちゃいかんだろ?
剣線が見えんのか?
炎狼を斬って返す刀が勇者を襲う……
斬りかかった剣を引っ込め、とっさに首を守る勇者……
ガギィィイイン!!
後ろに飛びのきながら回避する勇者……
『空間掌握』を解除する。
観客には訳が分からなかっただろう。
ぼーーっと立っている男に、狼が次々に飛び掛かっては消滅していき、勇者もかかっていったがはじかれた、そんな感じだろう。
後ろに転がっていった勇者は、体勢を立て直して片膝をつき、剣を握りながら歯を食いしばって俺を見上げる。
が、冷静な表情になっていく、切り替えたようだ。
「お前、強いな、、」
勇者の気がスウッと収まり、穏やかに収束していく。
「頭冷えちゃったかい? 残念、」
「剣で勝負してくれないか?」
「それ、君の方が不利じゃない? さっきの雷撃や召喚は凄かったよ。」
「どうせ効かないんだろ?
剣の名手が目の前にいるなら、剣で勝負したいんだ。
こんな大会より俺は強くなりたい。」
「……約束はしないよ。」
と言いながら剣を中段に構える。
真っ直ぐな奴、嫌いじゃ無いから相手してやる。
「ありがたい、」
勇者が上段でジリジリと詰める。
俺も中段のまま詰めていく。
あれだけユウキコールしていた観客も、黙って見つめている。
一足一刀の間合いになる、
フッ、と打ち気を出した勇者に対し、、、
サービスだ、俺が一足を詰めてやるよ! 一歩出る!!
一瞬で互いを一刀で殺せる距離になる!
お互いもう斬るしか無い!
勇者と剣!、俺とフィオナ!
より一本となれたのは、
俺たちのほうだった。
上段から振り下ろす勇者の剣と、中段から振り上げた俺の刀が
頭上で交差する!
俺たちが中心をとった!
頭上で刀の『鎬』一枚分、角度をずらされた勇者の剣は、
下に降りてきた時には、俺の体をわずかに外して振り下ろされた。
俺の刀は真っ直ぐに降りて行き、
勇者の額当ての真ん中にある大きな宝石を砕き、、
額の上で止まった。
真っ向から打ってくるのを真っ向から打って勝つ剣術の極意
『合撃』
フィオナと一つになれた分、、、
俺たちが勝った!!
「参った、、」
ふう、いや強かったよ、この勇者、正統派で勤勉な奴だ。
伸びるだろうな。
互いに『残心』しながら納刀、
手をさし出したら、グッ、と強い握手が帰って来た。
「いや、実際は紙一重だったよ、ユウキ。」
「俺にはとてつもなく厚い一枚の紙に感じるよ、フミオさん。」
「勝者! フミオ ゼン ヤマナ!」
一瞬の攻防に呆気に取られていた観客が、ワーッ!と湧いた。
うちの王様もガッツポーズで喜んでいる、かわいい奴だ。
サービスだ、王様のところへ行き、腕をあげさせ、ガシッとクロスさせる。
王妃様には騎士の礼をとり、手の甲にキスをする。
俺が去った後、二人とも周りの他国の王や皇族にちやほやされていたようだ。
さて、明日は決勝か。




