60. 帝都アルバード
テリクスから北上し、デルハリアにてデルハルト王やトモナリ達と合流したゼノラウトの一行は、西へと進路を変え、アルカナ帝国の帝都アルバードを目指す。
デルハリアからアルバードまでは馬車で約10日の道のりだ。
ゼノラウト、デルハルト一行は、全員が騎馬か馬車に乗っている。徒歩では到底間に合わないからだ。
デルハルトから2日、峠を越えれば、そこはもうアルカナ帝国、大陸中央部を占める、広い草原に出る。
一行は、時に野営し、時に都市に寄って旅を楽しんだ、
そしてデルハリアを出発して12日後、アルバードに到着した。
「着いたのね! あれがアルバード!」
丘を越えたところで、遠く見える巨大な城塞都市を見て、テレシアが嬉しそうに言う。
高さは15mほどだろうか? 一番外側の城壁にある、門のところで、一行は守衛に止められていた。
「どちらからの方々でしょうか? 武装したまま、都市に入る事は出来ません!」
「いや、武装してないと戦えないだろ? 戦う為に来たんだから。」
「!! このアルバードで何をする気か?!」
「俺はゼノラウトのヤマナ、こっちはデルハルトのトモナリ、共に帝国闘技大会に出場する為に来た。」
「「「ト、トモナリ様!! ははぁー!!」」」
「……納得いかねぇ、、」
ヤマナがつぶやく、、
「テレシア様、トモナリ様! ここからはご案内させていただきます!
各国の王や戦士は、第四城壁の内側にある、貴賓館に案内するようにと言われております!」
一行は案内役の兵士に連れられ、大通りを帝都中心に向かって進む。
「あっ! 大きな剣にツノの肩当て! トモナリ様よ!」
「キャアア! トモナリ様ー!」
「あちらのゼノラウトの紋章の馬車に乗っている金色の髪の方は、、テレシア様ー!」
「キャアアー! テレシア様!!」
「いらない子は、もう帰るか、、、」
ヤマナは一人ぼやく。
ゴツイ男達がヤマナに気づく。
「おお! あの黒いサヤの刀に渋みのある男は、、 団長!!」
「ウォォオ! だんぢょー! だんぢょー!」
「男! 団長ー!!」
「もうやだ、、エリスたんのところに帰る、、、」
引きつった顔で男達に手を上げて愛想しながらさらにぼやく、
最後の4つ目の城壁をくぐると、皇太子の親衛隊が待っていてくれた。
「先生!」
「ケビン! 元気だったか?!」
「はい! 日本刀もだいぶ振れるようになりました!」
「そうか! じゃあ次は型だな! 今日は時間あるか?」
「いえ、先生すみません、闘技大会が終わるまで、警備が忙しく、時間が取れませんでして、、」
「何を謝る! 立派に仕事をすることがまず一番大事なことだ。
俺の先生も、働いて社会に貢献しながら稽古することの大事さを説いていた。
頑張れよ!」
「はい! 先生! あと、こちらは先生の宿の地図と紹介状になります。」
「おお、そうか!! 無理言ってすまんかったな、ありがとう!」
「いえ、私の遠縁にあたる者がやっている宿です。メシは美味いですよ!」
「そうか! ありがとう! じゃあ後はうちの陛下や王妃を任せるけど良いか?」
「はい! お任せください!」
「じゃあ陛下、王妃、そう言うことで。闘技場で会いましょう。」
「ん? 単独行動か? ハメを外しすぎん用にの。」
「は、陛下、では後日!」
「え? ヤマナさんは一緒じゃないの?」
「これ、テレシアよ、ヤマナもたまには遊びたいのじゃ、自由にさせてやれ。」
「では、しばしのお別れです! トモナリ、会場でな! 当たったら恨みっこ無しだぞ!」
「うん、おじちゃん! 今度は僕が勝つから!」
「ああ、じゃあな!」
そう言ってヤマナは一人、街の方へ戻って行った。
「いやー、自由っていいなー!」
帝都の街をぶらぶら歩くヤマナ。
目的はこの世界の街を知ること、だ。
「お、喫茶店、いいね、どれ、、
げ、たかっ、紅茶一杯銀貨1枚かよ、」
「おや、乾物屋か? そうか、ここは内陸だからな、」
やがてふらふら路地に入ると、デブとノッポとチビがあらわれ、、
「おうおう、にーちゃん、その鎧と刀、置いていきな!」
「え! カツアゲ? 俺、今カツアゲにあってる?!」
ヤマナが目をキラキラさせる。
「おい! 聞いてんのかよ!」
「帝都、新鮮! テンプレ万歳!」
「なめんなコラァ!」
ノッポがナイフを出して突く!
ひょいと避けて外側から左手で右の小手を取り、そのまま内へねじりながら、まっすぐ伸びた相手の肘を、左の肘とひざで挟み込む。
「あいだだだ!」
そして右手でナイフを取り上げる。
「なんだこいつ!」
デブがそばにあった樽を両手で担ぎ上げ、叩きつけようとする。
ヤマナはパッと手のひらをデブの顔の前に出し、手のひらはデブの顔の前からそのまま動かさず、体を動かして、デブの側面に入ってさらに背後を取る。
デブは手のひらが消えたら目の前にいたヤマナも消えていたことに驚いて固まる。
ヤマナが後ろからやさしーく背中を上から下へ撫でると、デブは一瞬で後ろにひっくり返った。
倒れた際にデブは頭を切って血が出た。
「ありゃ、すまん、やりすぎたか。」
ヤマナはヒールをかけてやる。すぐに傷は塞がった。
「あんた、何者だよ、、」
チビが聞く。
「ん、通りすがりの自由な旅人さ、」
「……大会の戦士か。どこの国だ?」
「うーん、名乗るわけには行かなくってね。」
「俺たちをどうするつもりだ??」
「ん、何もしないよ、俺の領地じゃないし。」
「そうか、ではありがたく引かせてもらう、」
「弱い人たちには手を出すなよ、」
「俺たちは金持ってそうで偉そうで強そうなやつしか襲わん。それにこれも路地裏のガキども食わせていくためだ。今のでわかったよ、じゃあな応援してるぜ、団長。」
「ああ、じゃあな。」
ヤマナはさらにぶらぶら歩き、一番外側の第1城壁と第2城壁の間にある街まで下りてきた。ここに、ケビンに教えてもらったヤマナの宿があるはずだ。
「ええと、ここか? 『らんぷ亭』」
3階建てのちょっと小洒落た宿だ、一階はレストランになっているようだ。
「こんにちはー」
「はいはい、お客さん、いらっしゃいませ。」
人当たりの良さそうな、ちょっと太ったおかみさんが出てきた。
「ケビンの紹介できたヤマナといいます。」
「あらあら、ケビンちゃんのお友達! 聞いてるわよ、帝都見物に来たのね。さあ、どうぞ。お部屋は2階になるわ。」
「ありがとうございます!」
ヤマナは闘技大会までの数日を、らんぷ亭を拠点にのんびり、ぶらぶら帝都を回って過ごした。
そして、帝国闘技大会の幕が切って落とされ、、、戦士達が血で血を洗いあう宴が始まった!!




