59. デルハリア宮殿の中庭
ツェルペで一泊したゼノラウト王の一団は、デルハルト王国の王都、デルハリアに向けて進んでいた。
途中、街道沿いの村々を通過する時は熱狂的な歓迎を受けた。
「キャアアー、テレシア様ー!!」
「ゥオオ!団長ー!団長ー!」
「しっかし、俺のファンって男ばかりだな、、」
「男が惚れる男の中の男、と言うのが巷の評判らしいですよ。」
ヤマナがボヤき、テリクス兵がフォローする
「あんまり嬉しくない評判だなぁ、もっとこう、、、いや、まいっか、これも良いのか。」
こんなこともありながら、一団は街道を進んでいく。
一行はデルハリアに到着する。テレシア騎士団が再びデルハリアに来ると言う噂はとっくに知れ渡っていた。宮殿までの道は人々で埋め尽くされ、デルハルトの兵達は通路を確保するのに必死だった。ここでもヤマナは男達の、テレシアは女性達の熱狂的な歓迎を受けた。
宮殿の前では、デルハルト王と戦士トモナリが待っていた。
「おお、よくぞいらした! 我が友、ヤマナよ!」
ヤマナを友と呼び、馬から降りたヤマナの手を両手で取るデルハルト王に民衆が驚く。ヤマナも両手でデルハルト王の手を取り、
「陛下、お久しぶりです! お元気でしたか!」
と返す。
「孤児院の子供達は元気かの?」
「はい、みんなそろって元気ですよ! 昼は読み書き算数を学び、ご飯もしっかり食べております。いずれ、立派になって、デルハルトを支えるために帰って来るでしょう。」
「おお、そうか、そうか! 楽しみじゃのう、ホッホ。」
「あのー、お父様、」
「おお! テレシアにゼノラウト8世もよく来た!! 朕は嬉しいぞ!」
「まあ、お父様ったら! 私たちがまるでおまけみたいに。」
「まあ、確かに今回、わしらはおまけじゃ、主役は帝国闘技大会に出る、ヤマナとトモナリじゃからの。」
「さすがゼノラウト8世、分かっておるではないか!
ささ、中に入られよ! まずはお茶にでもしようではないか!」
一行はデルハルト王の案内で宮殿に入って行く。
一行は宮殿の中庭に案内される。そこには白い椅子と、白い丸いテーブルが置かれていた。
美しい庭だ、色とりどりの花が咲き乱れ、蝶が放たれていた。
ゼノラウト王、テレシア妃、デルハルト王、トモナリ、そしてヤマナの5人がテーブルを囲んで座る。
「朕の自慢の庭じゃよ、」
「王様が自分で手入れしてるんだよ。」
トモナリが言う。
「え? お父様が?」
「それは素晴らしい、花の育て方を教えて欲しいほどです。」
「テリクスから帰って来た時、荒らされたこの庭を見てたら、荒れ果てたこの国にかぶってのう、、
庭を一つ一つ手入れしながら、国も一つ一つ直していこうと誓いながら、仕事の合間を見て手入れを続けて来たのじゃ。
国のほうは、朕の力が及ばず、まだまだじゃがのう。」
「いや、陛下、そんな事は無いですよ。
ここに来るまで、この庭の花にも負けないくらいの沢山の人達の笑顔を見ました。
まだ経済的には苦しいかも知れませんが、人々は笑顔を取り戻しつつありますよ。」
「ありがとう、、ヤマナよ、、」
侍女がお茶の入ったポットとカップを持ってきた。それを眺めながら、テレシアはデルハリアを解放した日のことを思い出す。
「そういえば、ここでヤマナさんにお茶を入れてもらったわね。」
「はい、あれがテレシア様からの最初の命令でした。」
そういってヤマナが席を立つ。
「すまないが私にお茶を入れさせてくれないか?
この庭でテレシア様にお茶を出す役に任命されているのですよ。」
「あらあら、」
「ホッホ、ヤマナ殿の茶が飲めるのか。」
「これは、珍しいのじゃ。」
「ええ、これがテレシア騎士団団長の大事なお仕事ですから、はっは。」
ヤマナが5人分のお茶を入れる。
「ヤマナ殿に入れてもらったお茶は格別じゃのう、ホッホ。」
「ええ、本当に。」
「ワシもヤマナに何か出してもらったのは初めてじゃ。」
「おじちゃんありがとう。」
5人はゆっくりとお茶を飲みながら、何気ない会話を楽しんだ。
「おじちゃん、少し稽古をつけてよ。」
「お、そうか、わかった。デルハルト陛下、すこしトモナリをお借りします。」
「よろしく頼みますぞ、トモナリはヤマナ殿に稽古をつけてもらうのを楽しみにしておったでのう、ホッホ。」
「では、失礼いたします。よし、行こうか、トモナリ。」
「うん!」
宮殿から少し離れた練兵所に二人が立つ。デルハルトの兵たちが、取り囲むようにして見ている。
「どうする? もうあまり日がない。型を見るのもいいが、少し打ち合ってみるか?」
「うん!」
「木剣を貸してくれ。」
ヤマナは近くにいた兵士に訓練用の木剣を借りる。
「ぼくは、、」
「ん? ああ、おまえはその剣のままでいい。武器付きの召喚戦士は装備変更が難しいだろうから。」
「うん、わかった。 行くよ!」
「来い!」
トモナリが中段に構え、進みながら振りかぶって正面を打つ!
かつての力任せな大振りではない、かなり鋭くなっている!
ヤマナはそれをトモナリの右側へ一重身でかわす。
地面まで振り切らず、腰の高さで止まったトモナリの剣は、今度は素早く左肩の前に剣を立てる八相に構え、左から右へ斜めに振り下ろす。
トモナリに肉薄したヤマナは、振り下ろすトモナリの手首を下からシュッとこするように斬りながら、トモナリの剣をくぐって反対側へ抜ける。
トモナリの手首に赤いあざが残る。
「やっぱりすごいや、その腰の刀だったら、僕の手はなくなってたよ。」
「ちゃんと稽古してたんだな、トモナリ。前なら最初の大振りで内に入って面を打っていたが、かなり隙がなくなってきたぞ。よし、もう一本行こう!」
「うん!」
兵士たちが見守る中、二人は何十本と稽古を続けた。
「ふう、結構いい汗かいたな。」
「うん!」
二人は兵士から出された水を飲みながら会話する。
「おじちゃん、、僕、大丈夫かな? 今も一本も取れなかったし、、」
「ん、わからん、、俺も自分が生き残れるか分からんぐらいだからな。
まずは二人とも生きて帰って来よう。
名誉なんざ、くそくらえだ!
こんな見せ物で死ぬのは本当にばかばかしい。
やばかったら、さっさと降参するのがいいんだろうな。」
「そうか、そうだね。僕もまだまだ王様のそばにいたいし。」
「ああ、あと、必殺技を禁止していたけど、『岩砕突』だけは別だ。
やばい時は無敵技をバンバン使って逃げろ。先には使うなよ、技の後を狙われる。」
「うん、わかった!」
「あーはらへった! さあ、王さま達のところへ戻るかぁ! メシ出来てるといいな!」
「うん! 僕もお腹すいた!」
そういって二人は宮殿へと戻っていった。




