56. 旅の準備
文中の『次元防御』については25話を参照ください。
帝都のケビンに手紙を書いた。
帝国闘技大会の期間中の宿について、だ。
迎賓館のようなところではなく、普通の宿をとって欲しいというお願いをする。
出来れば堅苦しい挨拶などして回ることはやりたくなく、リラックスして試合に臨みたいからだ。
夜、食事の後、暖炉の前のソファにエリスと並んで座って会話する。
「エリス、帝都には行けそうかい?」
「ごめんなさい、行けそうにないわ。学校の生徒も増えたし、孤児院の子達も増えて今テリクスを離れられないの。」
パトナからの子達が増えたからな、
「そうか、俺のせいだな、ごめん、よろしく頼む。」
「ううん、大丈夫よ、あなたこそ気をつけてね。」
「ああ、適当に闘ってサッと負けて帰ってくるさ。」
「本当に無理しないでね、、」
「ああ、わかってるよ」
そう言ってエリスをぎゅっと抱きしめる。
「もう、そうやっていつも誤魔化すんだから、、」
とか言いながら、エリスは身を預けてくる。
翌日、砦の執務室にて帝都への旅の前に片づけておく仕事をやっていると、デメトリオがやって来た。
「領主閣下、帝国闘技大会出場の壮行会についてですが、」
「いらん、何も言わず送り出せ。
それより、万が一俺が帰ってこなかった時は、陛下にテリクスをお返しすることになるが、行政については引き続きお前がテリクスを治めろ。
防備の要にはハルバルトを推しておく。」
「そんな、、」
「万が一、だ。相手はトモナリやクロトなどよりはるかに格上の連中だ。
エリスにはとても言えんが、俺が生きて帰ってくる保証は無い。
備えろ。」
「はっ、かしこまりました!」
「頼んだぞ」
「失礼します! 王都より手紙が届いております!」
兵士が入って来た。
手紙には陛下の封印が押してあった。
「ご苦労、王都からの伝令はまだ居るか?」
「はい、下で待たせてあります。」
「中に入って休憩してもらえ、返事を書かせてもらう。」
「はっ!」
「どれどれ、」
開封して中を読む、
手紙を読む手がプルプル震える、、
「どうなさいましたか?」
とデメトリオ、
「あ、あの馬鹿夫婦! 帝都でショッピングしたいから、出発を早めるとか言って来た!!」
「そ、それは、なんとも、、」
「はあ、しょうがない、陛下の護衛もあるから別で出発するわけにもいかんし、
まだまだ仕事残ってんのに!!
すまん、デメトリオ、お前に負担をかけることになりそうだ。」
「わ、私のことならお気遣いなく。」
「はあ、、 俺の決死の覚悟返せ、あの馬鹿夫婦。」
「まあまあ、リラックス出来たと言う事で」
「そうだな、ふう、
ん? トモナリとの決闘でも陛下は同じようなことやったぞ、本当にわざとなのか?
意外と鋭いところあるからな、陛下は、、」
「さ、さあ、私には見当もつきませんので、、」
いや、やっぱりこいつらそこまで考えてねぇ、高確率でガチだな、、
俺のスキル『高度情報処理』が言っている、ただのバカンスだと、、
階下に降りて行き、伝令に会う。
「お待たせした、この手紙を陛下にお渡しいただきたい。」
手紙には [ 委細承知いたしました、テリクスでお待ちしております。] とだけ書いてある。
「はっ、了解いたしました!」
そう言って伝令は駆けて行った。
さて、いろいろ予定を早めねばならんな。
夕方、学校が終わってレオルとルルが道場に来た。
「ちょうどいいところに来た、おまえたち俺の特訓に付き合え。」
「え?」
「安心しろ、おまえたちに技をかけるとかじゃない。
むしろ俺がやられる練習だ。」
「「 ?? 」」
そうして砦の会議室に行く。
会議室にはデメトリオを待たせていた。
「デメトリオ、今から秘密の特訓を行う。
ここで起きることは決して口外するな、レオル、ルルもだ。
俺の切り札になるかもしれない技だ。
あと、デメトリオ、もし俺が死んだり、消滅したりしても、この子たちに罪はないことを証明してやってくれ。」
「な、なにをやられるのですか?」
「それは秘密だ、レオル、木剣を振ってみろ。」
「こうか?」
ビュン!
荒削りだがまあまあだ。
「次はこの伸ばした俺の左腕を打て、ちゅうちょするなよ。」
「わかった!」
ビュン! 木剣が何の抵抗もなく腕をすり抜ける。
「え? すり抜けた?」
ぐおおおおぉぉぉ、いってぇぇぇええ!
あぶら汗があふれ出てくる、が、何とか平静を装う。
これが腕を斬られた痛みか、、
手をぐっぱしてみる、よし、動く、感覚もある。
「次は右手だ。」
「わかった!」
ビュン! また木剣が腕をすり抜ける。
「またすり抜けた!」
ぐはああああぁぁぁ!
はあはあ、、
よし動く!
「こんどはルル、この小石を投げてくれ、胴体や手足を狙ってな。」
「はい、わかりました、ししょー、えい!」
小石が5つ、俺の体を貫いた。
うがぁぁああ! 内臓に火箸を突っ込まれたみたいだ!
小石はなにもなかったかのように、壁や床に当たってパラパラと跳ねる。
「はぁはぁ、、ちょっとタンマ。」
さすがに椅子につかまってちょっと休憩する。
「よし、もっぺんこい!!!」
「えい!!」
な! 20個ほどいっぺんに投げたぞ!! 心臓にも来てる!
あ! そこはだめなとこ! 男の子の急所!!!
小石はすべて俺の体を貫通し、
「うぐあああぁぁぁああ!」
さすがにぶっ倒れる。
あかん、目の前がチカチカ☆してきた、、、
「ちょ、ちょっとタマ☆、、じゃなくってタンマ。」
「なあ、、師匠さっきからなにやってんだよ?」
「ししょーだいじょうぶ?」
「ああ、ちょっと休ませてくれ。。」
「ま、、まさかと思いますが、、『次元防御』ですか! 危険すぎます!」
「知っているのか、ライデ、、じゃなくてデメトリオ、、」
「だ、ダメですよ! 消滅ってそういうことですか!!」
「召喚戦士同士の戦いで、防御のできないような致死性の非常に高い攻撃を想定してのことだ。
高確率でそんな攻撃があると思ってな、多用するつもりはない。
感覚だけこっちの世界に残して、肉体は別の次元にもっていくこいつは、痛みはあるが一応無敵の防御技なんだ。
どっこいしょっと。」
「まだやられるので!」
「次で最後だ、レオル、俺の足を切り刻め!」
「ああ!」
ビュンビュンビュン! 何もない空を斬るかのように振られるレオルの木剣、
うぐ! 膝の皿が! ベンケイが! アキレスが!
足の弱点が切り刻まれる痛み!!
ぐうう! 終わってからすぐ飛びのく!
よし、痛いが動く!!!
感覚もある!
「よし、やられても動けることが確認できた、今日はここまでだ、、
悪い、俺はすぐ帰って休むことにする。
デメトリオ、この子たちの面倒を見てやってくれ。」
「かしこまりました!」
ふう、あいたたた、帰ってエリスになぐさめてもらおう、、
ダメージうけた男の子の部分もなぐさめてくれるかなぁ、、、




