52. ヴィエラ村の村長さん
披露宴の旅が終わり、フリード殿下、デルハルト陛下、リカード、トモナリ、ケビン、みんな国に帰って行った。
寂しくはあるが、さて、たまった領主としての仕事しなきゃな。
ペラッ、シャカシャカ、
ペラッ、シャカシャカ、
報告書に目を通し、サインをしまくる。
生前はハンコ貰いに上司、部長、役員と、スタンプラリーする立場だったのに、偉くなったもんだ、、、
ペラッ、
ん?
『ヴィエラ村、村長からの陳情』
以前、魔獣の出た村か、
彼らは魔獣に襲われた村を捨て、今はテリクスに住んでいると聞いていた。
そりゃなぁ、、あんなことがあった村には戻りたく無いだろう。
どれどれ、
『また村民たちで一緒に暮らしたいので、どこか土地と仕事をください。』
とある、、
うーん、彼ら何が出来るんだろう?
とりあえず村長を呼んでみて話は聞いてみるか。
「また村のみんなで暮らしたいから土地と仕事が欲しい、との事だが、なんの仕事がしたいのか、どんな所に暮らしたいか、要望はあるか?」
「いえ、ありません、、なんでもやります。村人が揃っていればどこでもいいです。」
「そんなこと言っても、適性というものがあるだろう、村人で意見はまとまっているのか?」
「なんでもやらせますので、大丈夫です!」
こいつ、、、
税金で食っている俺が言うのもなんだが、村長という名のパラサイトか? ひょっとして。
ちょっとムカッときた。
「どこでもいいなら、ヴィエラ村に帰れ!
テリクスには働かん奴を食わせる余裕はない!」
「そんな! あの恐ろしい魔獣が出た所に帰れと!」
「……ふぅ、村民の話を聞いてやるから、今夜全員砦に連れてこい。
確か30名ほどだったな。
晩飯は出してやるからと伝えとけ。」
「は、はい、ありがとうございます!」
さて、どうするかな、、、
普通ならハネるとこだが、リュカやリンの村だからな。
「りょーしゅさま、こんばんは!」
「おお! リュカちゃん、こんばんは! よくきたね。」
リュカちゃんは相変わらず元気だ。
「領主様、エリス様、こんばんは。」
「おお、リン、こんばんは。怪我の具合はどうだ? まだ痛むのか?」
まだぎこちない歩き方のリンに挨拶する。
「領主様、私を助けていただいた御恩は一生忘れません。
痛みはだいぶ引いてきました。3日ごとに教会でエリス様に診ていただいているおかげで、歩けるようになりました。
ありがとうございます、エリス様。」
ええ子や、、
「そうか、治りきるまでは大事にしろよ。」
「はい、ありがとうございます。」
「さあ、まずは夕食を食べようか。今日はシチューだ。」
晩御飯はパン、サラダ、それにエリス特性のシチューだ、よく煮込んであり、美味い。
村人たちも喜んで食べていた。
「さて、みんな食べ終わったようだな。では、話を聞かせてもらおうか。
村が欲しいと言ったな、私はタダで土地と仕事を与えるつもりはない。
仕事が欲しければ、テリクス湖畔の開拓事業がある。
あなたたちはなぜ、この集団で暮らしたいのか、村のどんな暮らしを考えているのか。
聞かせてくれないか?」
「…………」
大人達は黙っている、
やがて手を挙げたのはリンの父親だ。
「オラぁ、村の事はよくわがんね、オラは山でしか仕事はでぎね、今もテリクスがら山ぁ通ってる。でも、リンには安全なとご、住まわせでやりでぇ」
「そうだな、あんたら親子が一番ひどい目にあったからな、リンはどうだ。」
「私は、、」
チラッと父親を見る。
「お父さんが好き、ずっと一緒に居たい。
でも、私は神官になりたい!
神官になって、エリス様のように沢山の人を救いたい!
エリス様は私を救ってくれた。デルハルトの傷ついた人達を沢山救っている姿も見た。
エリス様、お願いします、私を弟子にして下さい!」
そう言って、エリスに深々と頭を下げる。
「いいわよ、神官の修行は厳しいから覚悟なさいね。」
「はい!」
「そうか、教会の近くにリンと親父さんの家を用意するかぁ。リン、家賃は出世払いな。立派な神官になれよ。」
「ありがとうございます!」
まあ、リンのうちは片づいたが、、
「他の人たちは何か希望はないのか?
畑やりたいとか」
ダメだこいつら、、なんも反応が無い、、
そーっ と挙がる小さな手
「はい! そこの君!」
ビシっとリュカちゃんを指差す。
「あのね、サトさんちは鶏を飼うのが上手なの、沢山、卵産むの。」
「ほう、」
「ミヤさんちのお野菜は甘くて美味しいの、他の畑のよりおっきくて甘いの!」
「うんうん、それから?」
「アッちゃんちのおばあちゃんは、パイを作るのが上手なの!
どこかのお家でお祝いごとある時にはお願いして作ってもらってるの!」
「おお、そうか! 私も食べて見たいな! それから、それから?」
「ナオちゃんちのお父さん、大工さんなの、玄関の戸がこわれたときでも、おもちゃがこわれたときでも、すぐ直してくれるの。」
「うん、すごいな」
「テオおじいちゃん、怖い顔だけど、ほんとはすごくやさしいの、山でまいごになったとき、探しにきてくれたの。」
「そうか、リュカちゃん、村の事は何でも知ってるんだな。」
「うん、、
ヴィエラ村にみんなで帰りたいの、」
大人達が涙ぐむ、、こんな子にここまで言わせて、この意気地なしどもめ。
てやんでぇ、おいらまで泣けてきそうだぜ。
「あー、もうわかった!
村の事が一番よく分かっているリュカちゃんをヴィエラ村の村長に任命する!
テリクスの北側に新しいヴィエラ村を作るから手伝え! 土地と建物、町の防壁を用意してやる!
仕事はリュカちゃんが今、言った事をやれ! わかんなかったら畑耕せ!
文句あるか?!」
「「い、いえ、ありません!」」
「リュカ村長さん、お願いがあるんだけどいいかな?」
「はい! どうぞ!」
「デルハルトからの避難民でテリクスに住む事を希望している人達を、新ヴィエラ村に受け入れてやってくれないかな?
もちろんお家はこちらで立てるから。」
「はい! いいですよ!」
「ありがとう! 沢山人が増えるから、村長さんのお仕事をお手伝いする人を用意するからね。」
「はい!」
こうしてテリクスの町のちょっと北側に、新しいヴィエラ村ができた。




