48. 餞別
王都での披露宴は終わり、俺たちはテリクスに帰ってきていた。
皇太子殿下はテリクスに3日間滞在し、その後帝都に帰る予定だ。
いくつかの店や屋台と契約し、帝国兵たちが帝国貨幣でも買い物が出来るようにした。
店側が、あとでテリクスの行政府に持って来れば、両替する約束だ。
「先生、稽古をつけて下さい!」
ケビンだ、熱心なやつだ。
「いや、それより今日は鍛冶屋に行くぞ、武器を知るのも大事な事だ。」
「はい! 先生!」
「フィオガルド、打ち上がっている『ニホントウ』はあるか?」
「おお! 領主! 久しぶりだワイ!」
「ああ、しばらく王都に行っていた。陛下とテレシア妃の披露宴があってな。
これ、土産の酒だ、飲んでくれ。」
「こりゃすまんのう!
『ニホントウ』 じゃったら何本か打って見たが、全て鋼じゃぞ?」
「ああ、鋼で十分だ。
ケビンの身長なら、、2尺5寸から6寸ぐらいか、、
フィオナより指一本分くらい長いのはあるか?」
「これと、、これかの?」
「ちょっと振らせてもらうぞ、」
「ああ、構わんが、稲妻だけは勘弁だワイ。」
「はっはっは、流石にやらんよ。」
ヒュッ、
ヒュッ、
2振りの刀を試し振りしてみる。
両方いい出来だが、こっちかな?
いや、、やめた、ケビンに選ばせよう。
「ケビン、一本ずつ振ってみろ。」
「はい!」
ビュン!
ビュン!
「どっちがいい?」
「すみません、私には『ニホントウ』の良し悪しはわかりません、、、」
「どっちも悪くない刀だ、だったらケビンと相性の良い方を選ぶべきだ。
時間がかかっても良い、納得いくまで振ってみろ、お前がこれから命を預ける、文字通り『相棒』なんだから。」
「はい!先生!」
ケビンは一生懸命、2本の刀を振り比べる、
ビュン!ビュン!
ヒュン!ヒュン!
どちらの刀もどんどんケビンに馴染んできているようだ。
やがてケビンが、一度刀を置いて考え込む。
「どうした? ケビン、まだ迷っているのか?
どんどん振りが良くなってきているぞ。」
「困りました、先生、、私が未熟過ぎるがゆえに、、
どちらを振っても、刀に振り方を教えてもらっているような気がします、、
ブロードソードの時にはあり得ない事です、、」
「まあ、それが 『ニホントウ』 だからな、分かっただけでも大したもんだ。
『ニホントウ』 は刀と持ち主が、共に技を練りあい高めていくものなのだ。
どうしても迷ったら見かけで判断しても良いぞ。そんなものだ。」
「そうですか、、ではこちらの刀を。」
そう言って刃紋が穏やかに波打っている刀を選ぶ。
「なんだかこの刀を見ていると、心が穏やかになる気がします、、」
ちなみにもう一本の方は、荒々しく乱れた刃紋だが、これはこれで美しい。
「そうか、良いじゃないか。
フィオガルド、この刀を買うぞ。いくらだ?」
「そいつは金貨8枚だワイ。」
金貨1枚は、小金貨10枚もしくは銀貨100枚に相当する、だいたい10万円ぐらいか?
だから刀の値段は80万円ぐらい、元いた世界とおなじぐらいかな。
それでも一般的なブロードソードよりはずいぶん高価だ。
「困りました、私はあまり持ち合わせが、、」
「何言ってんだ、ケビン、俺が払うんだよ。
師匠から弟子への期待を込めた贈り物だ。」
「先生、そんな訳には、、」
「この数日、本当に嬉しかったんだ。
俺も自分の師匠に、先生、先生と言ってくっ付いて回っていたからな。
俺にも弟子が出来たと思ったら、嬉しくってな。
一番弟子への餞別だ、受け取ってくれよ。」
そう言って、目をつむり、在りし日の、道場での師匠の姿をまぶたに描く。
[ フミオ、 構えろ ]
[ はい、先生!! お願いします! ]
そうして何本も師匠の技を、教えを受けたあの日々を、、、、
「先生、ありがとうございます!」
ケビンは涙を流して刀を受け取ってくれた。
「精進しろよ、」
「はい、先生!」
……俺は精進できていたのだろうか、今精進できているのだろうか、、
師匠に会いたい、先に亡くなった師匠もこの世界に来ていれば、、、
そんな想いが心をよぎった、




