43. 道場へどーじょー
朝食をとってから、砦のほうに向かう。
砦では日課の訓練をやっていたが、、
やりにくそうだ、、
そりゃそうだろ、フリード殿下やその近衛隊が見てるのだから、、
「フリード殿下! おはようございます!」
「おおヤマナ! おはよう! いい朝だな!」
「はい殿下、朝食はとられましたか?」
「おお、せっかくだから屋台でとらせてもらったぞ。
うまかった、テリクスのメシはうまいな!
私の兵たちも小遣いをもらって大喜びだった。礼を言うぞ!」
「町の外に出ている兵の方々にも、ぜひテリクスを楽しんでもらってください。
少ないですが、あとで一人銀貨2枚お渡しいたします。
この町で飲み食いしていってください。」
「いいのか? 3千の兵だぞ?」
「いいんですよ、私の町の住民に儲けさせてやってください。」
「そうか、テリクスの領主はとことん住民に優しいな、はっは。」
「うちの兵はまだまだでして、殿下の兵に比べ体格も大きく劣っておりますし、かといって技術もそれほど。」
兵たちの訓練を見ながら言う。
「いや、初歩的とはいえずいぶん合理的な教え方だなと思ってな。
やはりヤマナの指導なのか?」
「はい、恥ずかしながら、、」
「ひとつ頼みがあるのだが、」
「何でございましょう、殿下?」
「ちょっと、うちの配下の者に稽古をつけてもらえないか?
いや、試すとか、手の内をさらせというわけではなくてな、、
純粋に教えを請いたいといっているのだ。」
「わかりました。
ただ稽古である以上、厳しい分にはご勘弁を。」
砦の中の訓練場で、殿下の親衛隊の隊長と向き合う、
175cmぐらいの身長で、かなりいいガタイだ。
親衛隊長は、両刃の剣を模した木剣を持っている。
俺はいつもの木刀を持っている。
「いつでもどうぞ。」
「ふん!」
親衛隊長が切りかかる!
すっと一歩だけ下がって、振り下ろした剣を上から木刀でそっと抑える。
「うぐ、ぬっ」
力任せに上げようとしても上がらない。
うん、理合いで押さえてるからね、力じゃ無理だよ、
理合いが解けないと外れないよ? 知恵の輪と一緒さ。
「もう一本行こうか?」
そう言っていったんリリースしてやる。
「はい、お願いします。」
おや、素直な奴だ、今ので力量差が少しは分かったか。
ぶわっと頭の上に振りかぶった瞬間に、木剣の柄頭を木刀でコンと突く
後ろへすっ飛んでいく木剣、
振りかぶったまま無手になって呆然とする親衛隊長。
「もう一本お願いします!」
「いいよ」
振りかぶり打ち込んでくる、
ところを俺は木刀を捨て左足を出して低い体勢で懐に入り込み、左手で顔に軽く掌底打ち、
俺の肩の上に剣の柄が降りてきたところで、右手のひらで親衛隊長の木剣の柄頭を手前に引くように叩く。
ちょうど肩に抱えた、小鼓をたたくような感じだ。
木剣が俺の後ろにすっ飛んでいく。
『無刀取り』の一つだ。
「もう一本お願いします!」
「いいよ」
今度は右へ振りかぶり、袈裟懸けに切ってくる、ので
あわせて右へ転身、そのまま木剣を木刀で回転方向へ押し出し、
さらに一回転させて浮かし『入り身投げ』ですっ飛ばす。
「もう一本お願いします!」
「いいよ」
……タフな奴だ
また投げてやる
「剣技と体術、どっちが知りたい?」
「!!
こんなに素晴らしい技術の数々、両方学びたいですが、時間が限られているなら剣技をお願いします!」
「わかった。もう一本おいで。」
「はい!」
今度は突いてきた。
左足を出しながら、すうっと突きを右へ流して避け、木刀をぐるっと右肩の外で回しピタッと相手の額の上で止める。
「こんどはこっちから行くよ。」
「!! はいっ!」
中心線を練り上げ、細く細くして、、
すうっと上げ、相手の中心線上におろすだけ。
親衛隊長は動けない。
ピタッと額の上で止める。
「おや、動かなかった、
ということは何か分かったのかい?」
「いえ、何かが分かったというものでは、、
ただ、右にも左にも動けず、かといって体の真ん中を押さえられた様な感じで、、
動けませんでした、、」
「それが分かるだけでも相当な上級者だよ。
これぐらいにしておこうか。」
「ありがとうございました!
それで、あの、旅の間だけでもまた稽古をつけていただけないでしょうか?」
「いいよ。 隊長さん、名前は?」
「ケビンと申します!
ヤマナ様、よろしくお願いします!」
「ああ、こちらこそよろしく、ケビン!」
「すばらしいな、ケビンは剣技では帝国でも指折りの騎士なのだぞ。」
皇太子殿下が感心したように話す。
「ケビン殿はなかなかですよ。
剣が分かっている。
ちゃんと教える方がいれば、もっと伸びるでしょう。」
「ケビンに剣を教えることができるなんて、この大陸ではヤマナしかおらんだろう。
他の剣士は勇者ユウキも含め、力押しやスキルで優っているだけだからな。
私からも頼む、ケビンを見てやってくれないか?」
「はい、ケビン殿は人格も申し分ない。
つたない私の剣であれば、喜んでお教えしましょう。」
こうして王都を往復する短い期間だが、ケビンに剣を教えることになった。




