↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
すっぴん召喚のヤマナさん  作者: 座敷犬昼寝中
42/155

41. 皇太子殿下

 陛下と王妃の披露宴まで一ヶ月となった頃、デルハルト王から一通の手紙が届いた。

 披露宴に出るのでテリクス通過時によろしく、といった内容だったのだが、一つ重大なことが書いてあった。

 アルカナ帝国の皇太子も、披露宴に出席するために、デルハルト経由でゼノラウトに行くので一緒に来るとのことだ。


 アルカナ帝国はこのアルストア大陸の中央から北部に版図を持ち、領土も兵力も最大の国だ、それも他の国とは桁が違うほどに。

 皇太子の移動には軍勢を伴う可能性もあると書いてあった。


 状況については随時連絡をくれるとの事で非常に助かった、仲良くしておいてよかったよホント。

 お礼の手紙をテリクス産の「高級おつまみセット」と一緒に送っておいた。



 ヒューレからも手紙が届いた。

 リカード陛下がテリクス経由で披露宴に行きたい、との事だった。

 テリクスでは友として語り合う事を楽しみにしているとも書いてあった。

 こちらにも快諾の返事を送る。



 さて困った、VIPが集まりすぎるぞ、、

 王都ならともかく、こんな田舎の都市に、ホテルなんてないし、

 軍勢はテント持参だろうから、城壁の外か最悪テリクス湖畔の草原でいいだろうが、皇太子に王2人はそういうわけにはいかん、、


 領主の屋敷は皇太子に明け渡すとして、俺とリカード陛下は砦でいいか、デルハルト王は教会を借りよう。

 よし、これで行こう。



 それから3週間後、皇太子殿下とデルハルト王が到着した。

 テリクスで2日間滞在した後、ゼノラウト王都へ向かう予定だ。


 皇太子の兵は3千! それも面構えのいい、立派な体格の兵達だ、精鋭なんだろう。

 うちの部隊にはこんないい体格のやつは10人に1人もいない。


 皇太子殿下は30代ぐらい、結構がっしりした体に鋭い眼差し、侮れない感じだ。


「皇太子殿下、テリクスの領主、ヤマナと申します。

 ようこそゼノラウトにいらっしゃいました、

 テリクスでは私の屋敷をお使い下さい。」


「おお! 其方が戦士ヤマナか!!

 会いたかったぞ!

 アルカナ帝国のフリードだ!


 滅亡寸前のゼノラウトを救い、3名の強力な召喚戦士を次々に撃破!

 軍を率いても超一流と聞いておる!

『暁の軍勢』テレシア騎士団も、実質其方が率いておるのだろう。

 私は英雄が大好きなのだ!」


「いえいえ、私など他の召喚戦士に比べると、強力な技もありませんし、弱いものですよ。」


「そこだよ、気に入ったのは。

 ヤマナは他の召喚戦士と違い、見るからに普通の人、絶対無敵の技も持っていない。

 だが、素晴らしい剣技と深淵なる智謀、そして何より将として領主としての人望、これらによりテレシアを支えた名将は、今帝都で流行っている吟遊詩人の歌、

『救国の英雄、テレシア』

 の中で語られているのだぞ。


 まあ、クロトを討ち民の仇をとった

『涙戦士トモナリ』

 の歌がチャート1位なのだが、、、

 ここでも助っ人として出ているな。」


 なんと迷惑な、、、

 て言うかチャート1位ってなんだ?


「はは、、、

 恥ずかしくってむず痒くなります。

 では屋敷へと案内いたします、こちらへ。」




 ちなみにデルハルト王は5人ほどのお供とトモナリしか連れていなかった。

 皇太子を屋敷へ案内してから、デルハルト王を教会へと案内する。

 警備にはうちの兵をつける。


「皇太子殿下の軍と一緒なら一番安全じゃ、

 朕はトモナリ以上の兵も持っておらんしの、ほっほ。」


 なんと言うか、どんどん丸くなってくなこの人。


「だいたい朕など誰も襲わんよ。

 ヤマナ殿のおかげで誰も王とはよばんわい、

『テレシアのお父様』じゃからの今は。 ほっほ。」


「それはなんと言っていいか、、」


「ん、感謝しとるのじゃぞ、王とはいえ、随分気が楽になった。」


「こないだ、王様と一緒に畑を耕したんだよ!」

 トモナリが言う。


「え? 陛下が畑を?」


「市井を知ることから始めることにしたんじゃ。

 暇を見て村をまわっとる。

 作業も実際にさせてもらってのう。

 テレシアが救ってくれた国を大事にせねばならんでの、ほっほ。」


 いや、あの野望に燃えていたデルハルト王が、丸くなったもんだよ、、




 夕刻、ヒューレの王、リカード陛下が到着した。

 なんと馬廻り10騎しか連れていない。


「ヤマナ殿! 久しぶりだな!」


「リカード陛下! お元気ですか!

 それにしても10騎で来られるとは驚きです。」


「友のところに行くのに、軍勢を引き連れることもないだろう。

 すまんが数日間世話になるよ。」


「はい、なんでも気軽に言って下さいね、

 リカード陛下は私と砦にお泊りください、飲みましょう!」


「いいのか? 砦の中なんて軍事機密では?」


「堅い友情より強い城壁なんてありませんよ。」


「そうか、そうだな、ありがとう!」




「夜風が気持ちいいな、」


「ええ、ここはテリクス湖からの風が気持ちいいんですよ。」


 俺とリカード陛下は街が一望できる砦のバルコニーで飲んでいた。

 テリクス湖の向こうの山に赤い夕陽が落ちていく。


「立派な街だなぁ、大きくはないが、活気がある、

 何より人々の顔が明るい!」

 砦前の広場、その周りに出ている屋台、そして楽しんでいるたくさんの人々を見ながらリカードが言う。


「はい、領土やお金より、この方がいいと思ってまして、

 日々、みんなの笑顔を守るためにどうするべきか、頑張っているつもりです。」


「そうか、色々、見習わねばなぁ、

 教えてくれ、民を笑顔にする方法を。」


「テリクスとヒューレで色々やりましょうよ!

 税も安くしたり、街道を整備して流通も良くしたり、、

 一緒にこの地域の人たちのために頑張りましょう!」


「そうだな、よろしく頼む、友よ!」



「エリス、下の屋台でつまみ買って来てくれないか?」


「はい、あなた、

 どれにします?」


「ええと、あの串焼きの屋台と、こっちの干物焼いてる屋台と、

 あれっ?! ええっ?!」


「どうしました?あなた?」


「間違いない!

 皇太子殿下だ!!

 ごつい護衛も5人付いている!」


「ええ?!

 フリード殿下が街の中にいるのか?!」


「しかもなんか揉めてる!

 ちょ、ちょっと行ってくる!!」




「お客さん、ゼノラウトの硬貨は無いのかい?」


「すまんな、帝国の硬貨しか無いんだが、、」


「うーん、帝国のお金は相場がわからんしなぁ、、困ったなぁ」


「は、払う! 俺が払うから!!

 ゼーゼー」


「領主! いきなり一体どうしたんですかい?」


「俺が! 全額! 払うから!

 言われたもの全部包んで!

 お願い!」


「は、はい! こちらになります!」




「フリード殿下、びっくりしましたよ、あのバルコニーから見たら殿下が買い物してましたので。

 お金はこちらをお使い下さい。」


 そう言ってゼノラウトの金、銀、銅貨の入った俺の財布を丸ごと渡す。


「おお、ありがたい!

 私の部下にもゼノラウトの硬貨を分けてやって良いか?」


「はい、もちろんです。

 後でみなさんにもう少しお渡しします。

 すみません、こちらの配慮が足らず。」


「バルコニーで夜風に吹かれながら飲んでたのか、、

 いいな、私も行っていいか?」


「どうぞ、どうぞ、」




 屋台街を歩いて砦に向かおうとすると、店主達が

「お、領主、これ持っていけ」

「ありがとう! 繁盛しているようで何よりだ!」


「領主! いつも世話になってるよ、持ってってくんな!」

「お! うまそうだな、ありがとう!」

 両手いっぱいにつまみが集まった。


「いい街だな」

「ええ! 自慢の住民達です!」



 殿下を連れて砦に戻り、副官のデメトリオに伝える、


「銀貨200枚用意して、屋敷の殿下の護衛の方達に『テリクスで使ってくれ』と言って渡してくれ。

 あと、希望されたら相場よりいい額で帝国貨幣と両替してやってくれ。」


 ゼノラウトでは銀貨1枚で串焼きが10本ほど買える、感覚的に千円ぐらいかな。

 銅貨10枚=大銅貨1枚、大銅貨10枚=銀貨1枚、銀貨10枚=小金貨1枚という感じだ。

 こっちの貨幣に慣れるまで俺は、銅貨を十円、大銅貨を百円、銀貨を千円、小金貨を一万円と頭の中で呼んでいた。

 そういや昔アメリカ行ったとき、一ドルを100円と考えて計算してたっけ。


「すまないな、ヤマナ」


「いえ、テリクスで使っていただければ民に還元されますので良いのですよ。

 遠慮なく使っていってください。」


「そうか、流石だな、やはりいい領主だ。」



 砦のバルコニーに到着した。

 

「殿下、こちらです。

 こちらはヒューレの王、リカード陛下です。」


「お初にお目にかかります、フリード殿下。ヒューレのリカードです、よろしくお願いします。」

 リカードが殿下に礼をする。


「アルカナ帝国のフリードだ、

 ほう、ヒューレの王は代替わりしたと聞いたが、若いな。」


「はい、今年で28になります。」


「そうか、会えてよかった、聡明そうな王で何よりだ。

 ではヒューレはまずはそのままにして置くことにしよう。」


「「  !!! 」」

 俺とリカードの背中を、冷たい汗が流れる、、


「ああ、パトナは潰すぞ。

 すでに2万の軍を編成中だ、勇者もいる。

 ヒューレも進軍先の候補に入っていたがやめよう。

 今日リカードに会えて良かったよ。」


 さらっと恐ろしいこと言うな、、この人。



「パトナは帝国のものにするので?」


「ああ、テレシアとトモナリの人気が凄すぎてな、憎まれ役のパトナを潰せと世論がすごいのだよ、、

 またパトナの国民は今回の出兵での大きな負担に苦しんでいるらしい。

 テレシアが占領してくれた方が良かったのだがな、ヤマナ殿は提案しなかったのか?」


「申し訳ございません、選択肢にはありましたが、これ以上の戦いを避ける方を選んでしまいました。」


「ヒューレの方はどうなのかな?

 召喚戦士も失い、軍事的にも弱体化が進み、敗戦国としてやって行くのは厳しいのではないのか?」


 ……厳しいことをいう、リカードを見極めるつもりか。


「確かに我が国も厳しい状況です、ですが国民と共に乗り切って行くつもりです。」


「がんばります、ではなんともならんぞ。」


「経済的にも苦しい今、国民を苦しめて軍備を整えるつもりはありません。

 いまは国民を楽にし、潤すための政策に注力します。


 デルハルトには頭を下げて詫びをして、戦争が起きないようにします。

 

 それでも他の国から攻められ危機に陥った場合は、

 頼ります、我が友に!


 そして帝国にも頼らせて下さい、

 受けた恩は必ずお返しします!」


「よく言った!

 我が友リカード!

 フリード殿下、リカードが王位に就く時、我らは命を賭して互いを助け合う友となりました。

 デルハルト同様、ヒューレの危機には私が駆けつけます。

 デルハルトとヒューレの溝は、私が仲介しリカードが誠意を見せることで埋めます。


 またテリクスはヒューレ、デルハルト、ゼノラウトの中間に位置しております。

 この三カ国でうまく経済を回し、民を潤す方法を考えます。

 もちろん、帝国の協力があればこれほど心強い事はありません。


 飲みながらですが、今も2人でこの町を見ながらその方法について話しておりました。

 この地域は我らで任せて貰えないでしょうか?」


「友よ、、 ありがとう、」


「ヒューレは、心配ないようだな。

 私が責任を持って進軍を止めよう。


 10騎で来たのも倹約であろうし。


 デルハルト王なんぞは、護衛どころかテントや食事も帝国に頼る気満々だったぞ、それぐらい図々しくするぐらいがいいのだ。

 併合してデルハルトを救えという論もあったが、倹約を旨とし、民と共に畑を耕す王から国を取り上げることは、私はできん。

 ヒューレの救済は帝国も乗ろう。


 では3人で飲もうではないか、その屋台の料理も気になっておったのだ。」


「はい、殿下! 熱いうちに食べましょう!」



 こうして3人で夜風に吹かれながら盃を交わした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
よろしければこちらもどうぞ。 え? 職業ですか? ガテン系ですけど、、
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。