28. ケンタ
※文中に極めて残酷な表現が入っています、ご注意ください。
平野部に抜けてから、ゼノラウト北方軍はヒューレ王都の手前にある、大きめの城塞都市の前に3千の兵で布陣していた。
ここまで10日余りであった。包囲するつもりはない、反対側からは住民たちが続々と逃げ出している。兵ももう出てこない。
後方からの伝令では、デルハルト国内での惨状が伝わって来ていた。特にパトナ軍だ、召喚戦士のクロトが民間人を虐殺して回っているとの事だった。
ヤマナは、テリクスに残した副官のデメトリオや砦の指揮官ハルバルトに、デルハルトから逃げてくる人たちは国境を通し、テリクス郊外にキャンプ地を作って受け入れるよう伝令を出してあった。傷ついた人たちがいたら助けるよう、エリスとヘレンにも手紙を書いていた。
「総司令どの! 大部隊が近づいてくる! たぶん、待っていた奴だ!」
太陽が真上に来る頃、ギルファングが息を切らして俺のいる本陣に飛び込んで来た。
「来たか!」
俺が待っていたのは、ここで潰しておかなければいけない相手、ヒューレの召喚戦士、ケンタだ!
ケンタの部隊が来る、2~3千ぐらいか、兵力は互角と見た。
敵の伝令が来る、渡された封書の表には 『決闘状』 と墨で大きく書いてあった。
中には、
[ この決着をヤマナとケンタの決闘でつけよう、ヤマナが敗れても追撃はしない。ケンタが敗れればヒューレ軍は武装解除し、降伏する。 ケンタ ヒューレ ホソダ ]
といったゼノラウト側に有利な条件が書かれていた。是が非でも、決闘したいのであろう。
[ 決闘を受ける フミオ ゼン ヤマナ ]
と書いた書面を伝令に渡す。
ヒューレ軍はゼノラウト北方軍から1kmほど離れた場所に布陣、ケンタは小部隊を連れ、ゼノラウト北方軍の前までやってくる。
城塞都市前の草原で、両軍が見守る中、ヤマナとケンタが向かい合って立った。
俺の前にヒューレの召喚戦士、ケンタが腕を組み、足を肩幅ぐらいに開いて立つ。
デカイな、、トモナリと同じぐらいの身長2mほどだが、鍛え上げられた筋肉はその比ではない。
それにこのキャラ、俺でもよく知っているぞ。
分厚い、そでの取れた白い道着に黒帯、逆立った短髪、
一世を風靡した、格ゲーの主人公だ。
「ゼノラウトへ引け、ヤマナ、引けば決闘も必要ない。でなければここで潰す。」
「それがゼノラウト侵攻に対する回答かい?」
「あれは、ほとんど言いがかりであろう、ヒューレはゼノラウトとやりあう気はない。」
「……デルハルトからパトナとヒューレが撤退するなら良いぞ。民間人を虐殺して回っているお前たちのやり方に、ゼノラウト8世陛下はお怒りだ。
ヒューレ国民には危害を加えるつもりは無いが、『民間人を殺して回る外道の軍は、叩き潰せ!』との事だ。」
言われてケンタが苦しそうに顔を歪める。パトナ軍と一緒にされるのはやはり不本意なのだろう。
「では、引く気はないのだな、、」
「ああ、外道畜生の軍を相手に引く気はないね。」
「仕方あるまい、、、、では!!」
ケンタが腰をグッと落とし、左こぶしを突き出して構える!!
うぉ、すげー威圧感!
正直逃げてぇ、
「ああ、来な、」
自然体でふらりと立つ。まだ抜刀はしていない。
ドン、とケンタが突進し、正拳突きを放つ!
デケー拳!
当たったら顔がなくなりそうだ。
右半身で立っていた体勢から右足を大きく引き、一重身でかわしながら、抜刀! 伸ばされた右腕を落とす!
ガギン!
え? 落ちない?! 何だこの筋肉! 金属か?!
「ほう、、切られたのは初めてだ。流石だな。」
皮膚が切れ、血が流れた腕を見ながらケンタが言う。
「お褒めにあずかり、、、そりゃ、どーーもっ!」
今度は全力の唐竹割りで俺から斬りかかる、が避けられた。
「それは食らうわけにいかんな。」
ケンタがジャブとローキックの連打をする、早い!
くっ、機関銃か?
迎撃が追いつかない!
刀で迎撃するが皮膚に引っ掻き傷程度は与えても、ダメージが全く通っていない!
ジリ貧のまま追い込まれ、防戦一方になる。
こちらが受け身になったところで、、、
『ライジングドラゴン!』
やべ! 有名な無敵技だ!
龍の闘気をまとい、右回転しながらのジャンピング左アッパー!
「ぐう!」
ガリガリ削られる!
回転を合わせて左回転でいなしながら、上昇中の足に斬りつける!
ガギン!
きったねー、やっぱり無敵継続中だよ、、
転がりながら離脱する。
『ナックル ウェーブ!』
げ、飛び道具か!
赤い波動が飛んでくる!
立膝のまま刀を振り、横一文字を飛ばして相殺する。
ナックルウエーブの後ろからケンタが突っ込んで来た!
ガッと右足を踏み込み、丸太のような左足で、サッカーのシュートのようなローキック!
「ぐふぅ!」
やべ、食らった!
ボールのように吹っ飛んで転がる俺、ブザマに這いつくばって、血反吐吐いたし、くっそ、これだからチートキャラ共は、、、
「ヒール!」
余裕をみせてゆっくり歩み寄るケンタの隙を見て、ヒールを一発かける。ダメージはまだまだあるが呼吸は楽になった。
立ち上がった俺に、またジャブとローキックの連打!
ギギン! ガガギン!
なんとか迎撃する!
ぐぐっ! 連打のくせにいちいち重いんだよ! この野郎!
……そろそろ来るか?
どうせ画面端に追い詰めてのハメパターンだろ? ゲームキャラならそれで完封だろうな、
『ライジングドラゴン!』
来た!
ガリガリ削られながら合わせて回転し、納刀しながら正座の体制をとる。着地のタイミングを狙う、ここなら無敵は解除されるはずだ!
「…………」
正座してわずかな時間でスゥ、と集中し気を集める。
ケンタの足が地面についた一瞬、
『真っ向!』
ズバン!!
正座からの抜刀による、電光石火の全力を込めた縦の一撃!
ケンタの左足の太ももに入った剣は膝を割り、スネからクルブシまで縦に切り裂く!
「ぬぅぐあ!」
ケンタが右足で飛び退く!
が、逃がさない!
『膝行』 いわゆる膝歩きで素早く追い、低い体勢で懐に入る!
「う、おおぉお!」
ケンタが丸太のような両腕を組んで振り下ろす!
膝行から立膝になり、
「おぉぉお!!『稲妻あ!!!』」
カッ!
バッァアアン!
立ち上がりながらの切り上げで、振り下ろされる腕の両手首を飛ばし、次の縦の一撃は胸骨から入り股下まで雷で焼きながら切り裂く!
「うぐ、あぁ、、、」
ケンタが仰向けに倒れる、、
「ぁ、あ、、負、け、た、、」
「首をもらうぞ、戦争を早く終わらせるためだ。」
「た、のむ、ヒューレ、の民、に、っぐ!」
「安心しろ、俺もゼノラウト王も、人々の悲しむ姿は大嫌いだ。ヒューレの民に酷いことはしないよ。約束する。」
「ああ、あぁ、、」
ケンタがかすかにうなずく。
「ク、ロトは、た、、お、せ、 あい、つ、は、、」
「安心しろ分かってる、必ずブチ殺す! あいつが居たら誰にとっても不幸だ、悪かったな、あいつと一緒にして。」
「ああ、、
あ、ぁ、
ぁ、
かい、
し、
ゃ、 く、、 」
ケンタがゆっくり息を吐いて力を抜き、目を閉じ涙を流す、
「わかった、もう休め。」
ザシュッ、
……安らかにな、ケンタ。




