27. 侵攻
※文中に残酷な表現が入っています、ご注意ください。
ヒューレとパトナによるデルハルト侵攻が始まってから7日後、デルハルトの王都、デルハリアの郊外にてヒューレとパトナの連合軍、約2万が合流していた。これから城塞都市、王都デルハリアを落とすためだ。
「よお、ケンタ、お前んとこにトモナリ出たって? どうだった?」
黒衣の剣士がケンタと呼ばれた白い服の男に問いかける。
白い服とは言っても、ボロボロで袖が取れた前合わせの分厚い服だ。腹にはこれまたボロボロの黒い帯を巻いており、武器は持っておらず、足も裸足だ。トモナリ以上の大柄で逆立った短髪に筋肉質の体で、腕を組んで立っている。
「全く問題ない。だが思ったよりしぶとく、2方面作戦と知られてからは退却された。お前のところはどうだった、クロト」
「はっはっはぁ、おかげでこっちは散々楽しませてもらったゼェ。村人ヤリまくってカルマたっぷりだゼェ。」
そう言ってクロトと呼ばれた男は真っ黒い、いや赤黒く湿って脈動する禍々しい剣を見せつける。
「トモナリは頼むゼェ、俺はヤマナにブッ放す為にカルマ積みまくるからヨォ。ひゃっひゃっ!」
「……外道だな。」
「おう、こんな世界、知ったこっちゃねぇからな、ケーサツもいねーし、異世界サイコーー!!」
「ケンタ様、伝令です!」
ヒューレ軍の兵士が駆け込んでくる。
「ヒューレ南方のゼノラウトとの国境にて紛争が発生、ヤマナ率いるゼノラウト軍がヒューレ侵攻を開始したとのことです! 国王より対応するようケンタ様に命令が出ております!」
「何だと! あの峠と国境は完全に封鎖したのではなかったのか?」
「そ、それが、我が国の部隊がゼノラウト領内に入り込み、そこに居合わせたヤマナに対して先に抜刀。抜刀した部隊は一瞬でヤマナに無力化させられたとの事、、
激怒したヤマナはゼノラウト軍を率い、ヒューレ侵攻を開始したとの事です!
進軍は全く止めることができず、もうすでに2つの砦を抜かれ、平野部への進入を許したとの事です!」
「なんとバカなことを、、まずいな、、デルハルトを落としてもヒューレが無くなっては、、」
「はぁっはっは、おもしれーわ、俺がヒューレに行ってヤマナをブッ殺して来てやろうかァ?」
……能力のために民間人を殺すこいつをヒューレに入れるわけにはいかんな、、
「いや、ヒューレの問題だ、俺が行こう。デルハルトの戦線を頼めるか? クロト。」
「いいけどデルハルトの分け前は7:3だァ、」
「……仕方あるまい、、任せたぞ」
ヒューレとパトナによるデルハルト侵攻の報せを聞いたヤマナは、ヒューレ側の戦線を即座に押し出した。自分の国が危機になれば、ヒューレは兵を引き上げざるを得ないだろう、という判断からだ。
後詰の兵も加わって、兵力は3千、小国の一方面軍としてはそれなりの数だ。ただしヒューレ全軍で集結し向かってこられるとうまくない。集結前に可能な限り各個撃破することにした。
ヒューレはゼノラウトにつながる山間部の街道に2つの砦を築いていたが、ゼノラウト北方軍はあわせて2日で攻略した。兵力も精鋭もデルハルトに差し向けた状態のヒューレ軍の守備隊はまともな抵抗も出来ずに、なすがままであった。
そしてゼノラウト北方軍は山間の道を抜けた平野部への侵攻を果たし、布陣する。ここからは複数のルートでヒューレ王都を狙える。
急行したヒューレの大部隊が現れる、千人程度の部隊だ。ヤマナはまず500名ほどの歩兵で迎え撃つ、ヒューレ兵は自分たちのほうが数が多いと思い、強気で押してくる。
押されて下がるゼノラウト軍、押してくるヒューレ軍。左右に丘のある窪地まで下がってきた時、、
いきなり左右の丘からそれぞれ千のゼノラウト兵が現れた!
丘の上から一斉に放たれる矢と投石に、ヒューレ軍は大混乱に陥る。
そしてゼノラウト兵は長槍兵を先頭に丘を駆け降りて挟み撃ちにした。
3方向から襲われ、大混乱するヒューレ軍、そこへヤマナ率いる騎馬隊100が、丘の裏から迂回し、敵の後方から急襲する!
慌てて後ろを向いて対応しようとするが、陣形も整えられず、ヒューレ兵たちは騎馬隊の槍に貫かれていく。
喉、胸を刺して倒した敵兵達の顔は、一瞬の表情だったが、ヤマナの脳裏に焼き付いていった……。
ひときわ立派な鎧とマントの騎士が、槍をまっすぐ突き出してヤマナに向かってくる!
ヤマナは前に出した左手を支点に、右手で槍を素早く、くるっと回した、
ヒュオッとしなった槍が相手の槍をはじきとばし、空いた胸を突く!
一瞬、槍に釣り上げられるように騎士の体が浮き、馬から落ちる!
「師団長!!!」
指揮官が討たれたことを知ったヒューレの兵士達はすぐに降伏した。
「よく来た! ギルファング!」
ヒューレ侵攻から4日目、ヤマナは野営の陣の中で、ゼノラウト南方の領主ガルファングの弟、獣人部隊の隊長ギルファングの参陣を迎えていた。
「お前たちにやってほしいことがある。ヒューレ軍に散々嫌がらせをしてほしい。
俺はこのまま軍をヒューレ王都に向けてゆっくり進める。お前たちは、森の中を行動し、それを迎え撃つ軍の輸送部隊を狙ってほしい。奪った物はお前たちのものだ。
武器や兵糧を持って来たら、俺が相場で金貨に代えてやる。どうだ? 受けてくれるか?」
灰色の狼獣人のギルファングは、口を耳まで裂けさせて笑う。
「こんな美味しい仕事、他にはねぇ、もちろんやらしてもらいまっさ!」
「よし、受けてくれるか! では軍資金の金貨50枚を渡す!
強い奴が出て来たら戦わんで良いぞ。目的はあくまで物資の枯渇による敵軍の弱体化だ。
民間人には手を出すなよ。」
「承知しました、総司令どの!」
そう行ってギルファング隊100名は森の中に消えて行った。
「おかしらぁ! 来ましたぜ! 荷車が10はある!」
「オラァ! 行くぞテメエらぁ! しっかり働け!」
ギルファングの部隊がヒューレ領内の森や山を縦横無尽に駆け巡り、街道を走る輸送部隊を襲って行く!
輸送部隊が来ると、木を編んで作った簡易のバリケードで街道をふさぎ、足が止まったところを高所から雪崩のように襲い掛かる。
守備隊を蹴散らし、食料や武器を奪って森の中に隠し、次の輸送部隊を狙う。
森の中に隠した物資は、ゼノラウト軍の本隊が進んで来た時に渡す算段だ。
ゼノラウト北方軍を抑えようと駆けつけたヒューレ軍は、命令により速度を第一としているため、後から送られる物資をアテにし、ろくに矢や兵糧を持っていない。この状態で輸送部隊を抑えられるとどうにもならない。
また、指揮命令系統にも乱れが生じているらしく、哀れにも小部隊のまま順次現場に送られ、対応することを命令されている。
また一つ、500名ほどの部隊がヤマナの正面に現れた。
ゼノラウト軍を視認したヒューレ軍の指揮官は、部隊を展開し陣形をとろうとする。
まだまだ距離があると思ったら、、いきなりゼノラウト軍より矢が飛んでくる!!
「ばかな!! この距離でなぜ矢が届く! こちらも応戦しろ!!」
ヒューレ軍は慌てて応戦するが敵との距離の半分も届かず、矢をすべて無駄に射ち果たした。
ヤマナは風のスキル『追い風』を使い、兵たちが射る矢を風に乗せ、敵陣に届かせていたのだ。
敵の矢がなくなったところで半包囲、騎兵により陣形をずたずたにした後、ヤマナが鍛えた歩兵達がヒューレ軍を撃破していく。
こうしてゼノラウト北方軍はたいした損害も出さず、敵部隊を各個に撃破し、進軍して行った。
ご丁寧にも、ギルファングの部隊が街道を走る状況報告の伝令もキレイに刈り取って行く。
ヒューレが落ちるのも時間の問題であった。
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この世界の小国は、日本の戦国時代の一国とおなじような規模と考えてもらえばよいかと。




