26. 宣戦布告
ふう、王都から3日かけて、やっとテリクスに戻ってきた。もちろんエリスも一緒だ。
テリクスに帰ってきたエリスは日中は教会で働き、夜は領主の屋敷に帰ってくる。
デルハルトへの特使も、ここまで一緒だった。翌日、俺はデルハルト側の砦の先の国境まで特使を送った。
「十分気を付けてくれ、情勢が変わったら、任務を放棄してすぐ脱出を考えてくれ。」
「お任せ下さい、お気づかい、ありがとうございます。」
そう言って特使はデルハルトの王都へ向かった。
「砦はどこまで復旧している?」
俺はデルハルト側のレガト砦で防衛隊長のハルバルトと話をしていた。
「はっ、デルハルト侵攻前と同等のレベルまでには復旧しております!」
「この後、治すべき重要なところはあるか?」
「砦本体よりも、この周辺には隠された間道が多くあります。これらの整備と確認をする事を進言します。かなり古い記録ですが、これらを使い、奇襲を繰り返し、10倍の兵力差をはねのけた記録もあります。」
「よし、地図はあるか? あと確認に行きたい、案内できるか?」
「はい! あらかじめ確認しております。すぐに案内いたします。」
できるやつだ。
回ってみると、、なるほど、砦本体の規模は大きくなく、防御力もたかが知れているが、もともと山全体を使って防御する、ホーム戦が超有利になるような環境だった。ところどころ落ちている橋をかけ直せば、攻めるポイントも増え、自分達が通ったあと、切って落とすことにより敵の追撃を阻むとこも可能だ。
「デルハルトからの侵攻時はなぜこれらを使わなかったのだ?」
「ここ100年ほど、ここでの戦闘はなく、山道も整備されておりません。さらにまともな守備も置かれていなかったため、電撃的に抜けられてしまったのです、、」
「そうか、、よし、すぐに工兵隊を使い、間道の整備に当たってくれ。」
その日の夜、俺はハルバルトと地図を見ながら、
こう攻めてきたら? こうします。
ここを攻略されたら? こう動きます。
といったシミュレーションを重ねた。
ハルバルトは俺の満足のいく答えを出してくれた。
「ハルバルト、俺のいない間はレガト砦を頼む。」
こちら側の防衛のめどはたった。
次はヒューレ側のラトリオ砦だ。
こうして約1か月の間、2つの砦と、テリクスを周り、軍備を整えていた。
ある日、ラトリオ砦に行ったところ、ヒューレ王国軍が国境を封鎖しバリケードを築いていた! それも国境を越えてかなりの距離をゼノラウト側にまで入り込んで構築している!
すぐに、騎馬10騎、工兵20名とともにバリケードのところへ行き、撤去を命じた。
「お前ら何やってんだ! 触るんじゃない!」
ヒューレ側の隊長らしき兵士が出てきた。
「貴国は明らかに国境を越えてゼノラウト側に工作物を築いている。早急に撤去しろ!」
「何だと! こいつ! 抜刀! こいつらを蹴散らせ!」
ヒューレ側の隊員が20名ほど抜刀する!
あーあ、やっちゃったね。威嚇のつもりだろうが、悪手だよ、それも最悪の。
王様の許可の条件の『ゼノラウト北部への他国侵攻』に該当しちゃったね。
「ゼノラウト領内での工作活動並びに戦闘行動を確認! 我が国に対する侵攻および宣戦とみなす!
俺はフミオ ゼン ヤマナ! 大人しく投稿するならよし! しないのであれば、、
我が領内での狼藉の代償として切って捨てる!」
馬から飛び降り、
『稲妻ぁ!』
カッ!
ドゴオォオン!
威嚇としての稲妻を放つ。
バリケードがはじけ、吹き飛ぶ。
ヒューレ側の兵士はあっさり剣を捨て、投稿した。伏せてあった兵100を呼び捕縛させる。
即座に砦の部隊を呼び寄せ、国境である峠を越えてヒューレ側に入ったところで峠の横にある山の斜面に陣取る。こちらが高所をとった形だ。
いつでも坂を下り、攻め込める場所に陣を張り、ヒューレ側の工作物を再利用して防衛網を築く。ヒューレ側のどこからきても、高所から矢を浴びせられる形だ。
弓兵100を斜面に築いたバリケードの後方へ配置、そして各所に配置された歩兵100、山の頂上付近にも旗を何本も立ててあからさまにヒューレ側に見せつける。
「これは一体どういうことだ! ゼノラウト軍の指揮官は居られるか! 説明を求める!」
お、ヒューレ側の上官が出てきた、飛んで火にいるなんとやら。
「ゼノラウト王国 北方軍 総司令官、テリクス領主、フミオ ゼン ヤマナだ!
ヒューレ王国軍は、ゼノラウト領内に入り込み工作活動を行い、さらに領主ならびに軍の総司令である俺に剣を向けた! これを持ってヒューレはゼノラウトに宣戦布告とするのか、その意を問いたい!
いかに!」
ヒューレ側の上官が真っ青になる。
そりゃトモナリの敗北につけ込んで攻め込もうとしている奴らだ。トモナリを破った俺のことは知っていて当然だろう。それが出てくることを恐れて防備固めていたのに、まちがえて引っ張り出しちゃったよ、て感じだろう。
「お待ちください、ヤマナ様!
私はヒューレ王国軍南方軍所属、第2師団長、ディーエと申します。ヤマナ様に剣を向けたのは何かの間違い、どうかお収め下さい!」
ディーエ君、かわいそうだけど、容赦しないよ。ここぞとばかりに付けこませてもらうから。
「ディーエ師団長! この者はヒューレ王国軍の兵で相違ないな!」
抜刀の号令をかけた隊長を引きずり出させる。す巻きに近い状態で縛り上げられている。
「!! ……相違ありません、、」
「この者はゼノラウト国内でバリケードを築き、そのうえで隊長として号令をかけて20名の兵士に抜刀させ、俺に剣を向けさせた!
これを軍の戦闘行動と言わずして何と言うつもりだ! 到底個人の間違いとしては認められんぞ! ヒューレ王国軍はゼノラウト領内で工作活動と戦闘行動を行った!
これはゼノラウトに対する宣戦布告と判断されるがいかがか?
ヒューレ王国としての回答を要求する! 回答いかんによってはその代償は高くつくぞ!」
「じ、時間を、 ヤマナ様、回答までの時間をください!」
「ならん!
回答が返ってくるまでの時間稼ぎでヒューレ王国に軍備を整えさせるつもりは毛頭ない! 回答を待つ間にも、当方は最適な防衛行動をとらせていただく!
……ディーエ、ゆっくり回答してくれていいんだぞ。俺がヒューレ王国の王都まで進軍した頃に直接回答を受け取ってもな。」
「わ、私が王都に馬を飛ばして行ってまいります! 3日で行ってまいります!」
「状況の確認のために、一人だけ返してやる!」
そう言って一人返してやる。
「言っておくが兵士個人の首を刎ねて解決しようとしてみろ、国としての責任を放棄したとみなし、叩き潰してやるからな。」
ちょいとうちの兵達に負担がかかるが、いつでもヒューレ国内になだれ込める位置に陣を張らせてもらうか。
だが、、ヒューレへのうまい牽制になったかと思ったこの事件だったが、遅かった。
ちょうど同じ日に、デルハルト王国は、北のパトナ王国、東のヒューレ王国に宣戦布告され、両国より同時侵攻されたのだった。




