23. 謁見
王都にある官僚用の宿舎での朝、少し明るくなった頃、布団の中でまどろむ。
左を見るとエリスがいる、布団の中でエリスの方を向き、エリスの頭の下に右手の手のひらを反対側からそっと差し入れて持ち上げ、そこに左腕を入れて腕枕をする。
「んん、、」
むずがるような動きで目を閉じたままこっちを向くエリス、腕枕をしたまま、右手でキュッと抱きしめる。
エリス、柔らかいなぁ、あったかいなぁ、
ああ、幸せだ、、
一日中ずっとこうしていたいぐらいだ、、
「今日は陛下に謁見してくる。エリスは神殿に行くのかい?」
朝食をとりながらエリスと話す。
「はい、色々と調べたいこともありますので。夕方には帰ります。フミオさんは?」
「うーん、状況によっては遅くなるかもしれない。関係者と話もしなきゃならんからなぁ。
この宿舎で待ってておくれ。俺が遅いようなら、先に夕食はとって欲しい。」
「わかりました、お気をつけて。」
「ああ、エリスも気をつけてな。」
王宮へ行き、控室で待っていると、衛兵が呼びにきた。
「ヤマナ様、お入りください。」
「ああ、ありがとう。」
さて、一仕事だ。
謁見の間で膝をつき、礼をする。
左右には文官、武官や領主といった重臣達、正面には陛下と、その隣に愛人のテレシアがいる。
「陛下、お久しゅうございます。謁見の許可、並びに領主の招集、ありがとうございます。」
「おお! ヤマナよ! 面を上げよ! この1年あまりの間の活躍は聴いておるのじゃ! テリクスの復興に魔獣討伐! さらには道中、盗賊討伐もやったのであろう、10名もの兵士くずれの屈強な盗賊が、たった一人に蹂躙されたと報告があったのじゃ! はっはっは! 実に愉快じゃ!」
……もう知っているのか、侮れんな、この王様、
「陛下に献上したいものがございます、お持ちしてもよろしいでしょうか?」
「おお、なんじゃ?」
「これへ、」
待機していた領兵たちが、毛皮を持ち込み、広げる。
「テリクス北部で討伐した、魔獣の毛皮でございます。」
「おお! でかいの! こんなでかい毛皮は初めて見たのじゃ! これをたった一人で倒すとはさすがじゃの! 大変じゃったろう。」
「はい、死にかけました、はっは。」
「わっはっは! そうか、そうか!」
「そこで、本題に入りたいのですが、、」
俺は周りを見渡す。
「分かっておるのじゃ、官位の無いものは部屋を出ろ。衛兵もじゃ
テレシアは、、どうかの、ヤマナよ?」
「デルハルト出身のテレシア様には聴いていただいた方が良いでしょう。1番の関係者かもしれません。」
「?? あの、、」
「心配するな、テレシアよ、まだ悪いことが起きると決まったわけでは無いのじゃ、、」
宰相、各大臣、文官、武官、地方領主とテレシア、陛下のみとなって話を切り出す。
「北のヒューレ王国に不穏な動きがあります。」
「「「!!」」」
陛下以外は驚いて絶句している。
「やはりそうか、、根拠は? この後どう動くか、考えられるか?」
さすが陛下だ、知ってたか、この方、やはり普段は昼行灯のふりしているが賢王だ。というか、いくつかの情報の出所が分かっていなかったが、おそらくは陛下が流させていたのだろう。
そうして俺に言わせるとは、全く人使いの荒い王様だ。
「ここのところ気になる情報がいくつか入ってきたので先日、北方の国境をこの目で確認してまいりました。
ヒューレは、国境の稜線からヒューレ側へ入ったところ5kmほどの地点に、点々と物見やぐらを築いております。森の中にも兵が入っていました。
ただし進軍の準備には見えませんでした。今の所、この地域に大部隊や兵站を運ぶための道を切り開いたり、拠点構築などの動きは見受けられません。
たとえあの様な所から南下して進軍してきても、王都軍を相手にしている間に、テリクス方面軍や北東方面軍に背中を打たれます。
考えられることはゼノラウト側から進軍されないかの監視、その後ろにあるのは、、
おそらく西への進軍、デルハルト攻略です。
情報によると国内の軍備も急激に進められているようです。準備は周到、自信も有るようで非常に危険な状態です。
デルハルトの次はゼノラウトでしょう。」
自分の母国が攻められるかもしれないと聞き、絶句してふらふらするテレシア、
「止められるか?」
「難しいです、明確な理由もなく、こちらからヒューレへ先制攻撃をするわけにもいきませんし。
本日は陛下よりの許可を、私、フミオ ゼン ヤマナへ頂きたいがために参上いたしました。」
「申せ。」
「はっ、デルハルトもしくはゼノラウト北部への他国侵攻が認められた場合、
1.ゼノラウト北方と国境付近における軍事に関する全ての指揮権。
2.必要が生じれば他国へ軍を入れる事。
これはすぐさま援軍を出すわけではありません、要人救助などが主な目的です。
が、戦況によっては大きく動かすこともあり得ます。
3.デルハルトからテリクスへの避難民と退却してくる軍があった場合、ゼノラウト領内への受け入れ。
以上3点を私の裁量で行う許可を頂きたく。」
「許可する!」
「「「 陛下!! お待ちを!」」」
さすが賢王、即決だよ。
大臣達は諌めようとする。
「なんじゃい、お前ら? 他にいい方法があるなら聞くぞ?」
「「「 …… 」」」
「ああ、陛下、陛下、、ありがとうございます、、」
膝をつき、王様の椅子にすがりつくテレシア。
「許せテレシア、同盟を結んだとはいえ、援軍を送るほどの力はゼノラウトにはないのじゃ。逃げるものを助けるだけで手一杯じゃ。」
「まだ起きると決まったわけではありません。あくまで可能性を考えての措置です。」
「いや、情報処理のスキルを持つヤマナが言うのじゃ、起きる可能性は極めて高い。
これよりフミオ ゼン ヤマナをゼノラウト王国 北方軍 総司令官とする。
北東方面軍は北方軍の傘下に入れ、よいな、我が甥シュルトよ。」
「はっ、陛下の仰せのままに!」
「期間は現在の脅威が去ったと判断されるまで、じゃ。みな、備えよ! 北方軍を支援せよ!」
「「ははっ!!」」
「陛下、まだお話したいことがあります。できれば宰相殿と3名で。
他の方は、すみませんが、会議室で待っていただけませんか?」
俺と宰相は、王宮の応接室で王様と向かい合っていた。
「陛下、テレシア様をいつ娶られるか確認させて下さい。」
「!! いやー、そのー、なかなか決心が、、」
「お妃様でないのに、いつまで玉座の横に立たせておくのですか? 可哀想ですよ、ねえ宰相殿」
「全くです! テレシア様も肩身が狭いでしょうに! 早くプロポーズしてあげて下さい!」
……まだプロポーズしてないんかい!
「じゃがの、その、、」
もじもじする陛下、、
「案があります。」
「なんじゃ?」
「宰相殿、デルハルトに書簡を送って下さい。テレシア様をデルハルト王の養女にしてくれと、その上でゼノラウト8世との結婚式を挙げると。」
「「!!」」
「……あいつ、ワシの親父になるんか、」
「知るか!
あ、これは失礼しました、
これによりゼノラウトとデルハルトの同盟はより強固になります。その上で私はテレシア様の騎士になります。私がデルハルトでゼノラウト軍を率いても、テレシア様の命令であれば、それはデルハルト王女テレシアの軍として行動出来ます。」
「そうか!」「なるほど!」
「ただし、事はできるだけ内密に、どんな妨害があるかわかりません。」
「わかりました! 直ぐにデルハルトへ使節を送りましょう!」
「戦地になりかけています、人選は難しいでしょうが、、お願いします。」
早くプロポーズしてやれよ、全く、、
おっと、俺のことは置いといてくれ。




